大切な家族を人型兵器によって殺された男は、同じ人型兵器「アサシン」を使って、兵器を破壊して回っていた。彼女は自分を使ってくれる男に対して並々ならぬ執着をもっているようで…？

マスター…任務完了。


コードネーム「アサシン」
ただいま帰還した。


うん…これ。マスターが
破壊するように命じた
兵器の残骸。


別に…マスターのためなら
これくらい、いくらでも…


してほしい、こと…？
じゃあギューして…


(抱きしめられる)


んっ…あたたかい。
マスターの温もり…


ううん…マスターの
役に立てることなら
何でもする。


どんな兵器を敵に回しても
構わない。


兵器をもって兵器を制す…
マスターの言う通りだと思う。


許せないんだよね。
大切な家族を殺した
わたしたち人型兵器が…


でも…そんな許せない兵器を
用いてでも、貴方は復讐を
果たしたいんだ。


いいよ。最後には
わたしを壊してくれても。


貴方の手で壊されるなら
悔いはないから。


それで…まだ見つからない？
貴方の家族を殺した兵器…


そっか…手伝うよ。
貴方の復讐が果たせる
その時まで。


わたしは最期まで貴方と
共にいる…心配しないで。


うん…そろそろ行こう。
次の目的地に…


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…マスター？
もしかして泣いてる？


いいよ、強がらなくて。
わたしの前でくらい
素直でいてくれていいから。


うん…おいで？
今日はわたしがギューして
あげるから…ギュー。


(抱きしめる)


またフラッシュバックしたんだ。
辛い思い出が…


うん…うんうん…


そっか…しんどいね、それは…


わたしは兵器だから…
人間であるマスターの気持ちが
分かるとは言わない。


だけど…そばにいることはできる。
いつでもギューしたり、よしよし
してあげたりすることはできる。


マスターに必要とされるなら
わたし、何でもする。


うん、何でも。
わたしのできる限りのことを、全部。


廃棄寸前のわたしを必要と
してくれたのはマスター、貴方だから。


マスターに拾ってもらった恩は
忘れない。わたしの全てを賭けて
返すつもり。


うん、行こう…奴が
いるところに…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


マス、ター…？
ごめん、今目の機能が失われてて
貴方の姿が見えない…


真っ暗…怖い。
マスターが見えないことが
たまらなく怖い…


兵器なのに…人間みたいに
怖いって思うなんて…


そう、なんだ…これが、感情…


ごめん…しくじっちゃった。
あともう少しで奴を壊せたのに…


ターゲットを逃すなんて…
「アサシン」の名が泣いちゃうね…


…？マスター？さっきから
黙ってどうしたの？


ダメかもしれない…？何が…？


マス、ター…？
何か音がしたけど…どうかした？


マスター…寝てるの？
こんなところで寝てたら風邪引くよ？


わたしは大丈夫だけど…
マスターは人間だから
もっと身体を大事にしないと…


マスター…返事をしてくれないと
わたし、寂しいよ…


マスターが教えてくれたんだよ…？
人の感情ってやつ…


寂しいとか怖いとか…
そんなのこれまでは
全く感じたことなかったのに…


マスターと一緒にいるように
なってから、色んなことを
感じるようになった。


わたし、考えた…
どうして兵器であるはずの
わたしの中に感情が芽生えたのか…


それは…きっと貴方のことが
好きになったからだと思う。


そうだよ…最初に好きって
感情が芽生えたから
色んな感情が出てくるように
なったんだ。


なら、どうしてわたしは
マスターを好きになったのか…


きっとそれは
貴方がわたしを大切にしてくれた
からだね…


マスターがわたしを『好き』で
いてくれたから、わたしも
マスターを好きになったんだと思う。


わたしの言ってることは
間違ってるかもしれない。


マスターは本当はわたしのことなんて
好きじゃなくて、むしろ嫌いだったの
かもしれない。


それでも…マスターがわたしという
兵器を大切に使ってくれたことに
変わりはないから…


だから…大好きだよ、マスター。
貴方のことを愛してる。


…マスターの身体、ベチャベチャしてる。
それになんだか鉄臭い。あといつもより
体温が低くて冷たい。


疲れて休んでるんだよね。
大丈夫、わたしがそばにいて
守ってあげる。


今はゆっくり休んで…
また一緒に頑張ろ？マスター…

・台本（ゆるボイ！）
無口な隠密型暗殺兵器に墓場まで愛される
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎