とある店舗で売られている一機のアンドロイドが売れ残ってしまった。そんな彼女は店長である男に自身を廃棄処分することを勧めるが、彼は逆に彼女を購入しようとして…？

あ、店長…今月の在庫処分セールは終わりました…？


そうですか…お疲れ様です。でも、全部売れなくて残念でしたね…あたしだけ売れ残りましたし…


はは…まぁ、仕方ないでしょうね。こんなひねくれてジメジメした性格のアンドロイドを買う物好きなんていないでしょうし…低性能で、身体つきも貧弱の一言に尽きますし…


おまけに身体部品の取り換えもできなくて、拡張性も皆無。全体的にスペック低めのクソ雑魚アンドロイドですから、買い手が全くつかなくても不思議じゃありませんよね…


せっかく入荷してくれたのに、売り上げに貢献できなくてすみませんでした…ホント、なんで作られたんでしょうね、あたし…こんなの、最初から作らなきゃよかったのに…


やっぱあれですかね、他の商品を売れやすくするための当て馬みたいな感じだったんですかね？もしかして…


あ～…最後までつまらないこと、うだうだ言ってすみませんでした。


というわけで、廃棄処分のための手続きを開始しますね。店長は承認ボタンさえ押してくれればそれでいいので…


…？店長？あの、人の話聞いてます？さっきから返事もせずに、パソコンと睨めっこしてますけど…


え？あぁ、はい…なんかファイル送られてきましたね…確認します…


…へ？あの、これ…購入希望って、どういう…？


店長があたしを…？いや、いきなりなんで…？


あ、そっか…本社からの指示で、売れ残りを廃棄処分する金ももったいないから、自腹で買えって圧力かけられたんですよね？なんだ、そういうことなら早く言ってくださいよ…


いや、あの…そんな分かりやすい嘘つかなくていいですから…


無理して買わなくても、本社の担当者にはあたしも一緒に頭を下げますから…だから…


う…その、いきなり好みだとか、脈ありなこと言われても困ります…あたしを憐れんでも、店長に何もメリットありませんよ…？


うぅ…わかりました。そこまで言うなら、購入を承認します…


…購入が完了しました。それからマスター登録も自動的に完了しましたので、どうぞあたしのことは煮るなり焼くなりお好きになさってください…マスター。


(抱きしめられる)


えっ…？いや、あの、その…店ちょ、じゃなくて、マスター…？い、いきなり抱きしめて何のつもりですか…？


あ、ん、あ～…そろそろその辺にしていただけます？心臓がオーバーヒートして壊れそうなんですけど…


うぇぇ～…なんなんですか、貴方は…？こんな奴を本気で好きだなんて、趣味悪いにもほどがありますよ？


他の店舗で、もっと高性能な可愛い個体を買った方がいいと思いますが…


うっ…それはまぁ、嬉しくなくはないような…でもやっぱこんな不良品を買うなんて、どう考えても損としか……ッ⁉


(無理やり唇を奪われる)


マ、マスター…そんな、キ、キスは流石にやりすぎ…ンッ…！


(怒涛の連続キスをかまされる)


なん、で…？マスターはあたしのこと、こんなに…


…ッ、バカ…本当に女の趣味が悪いですよ、マスターは…


あたしの欠点すら全部愛せるって…そんなの綺麗事です、不可能です…


いくらあたしが哀れでみじめな存在だからって、そこまで情けをかける必要はありませんから…そういうの、ほ、本気で迷惑ですから…


め、迷惑ですよ…あたしは廃棄処分されるべきで、マスターから愛されるような個体じゃ…


…！そんなことまで、覚えてくれてたんですか…？


あ、あれは単なる気まぐれというか…何かしらのバグが発生したからです。あの行動がマスターのお役に立ってたなんてとても…


…あたし、ひねくれ者ですよ？これから先、役に立つなんて思わないほうがいいですよ？何なら今この瞬間、買ったことを後悔するかも…


(クソデカため息)


わかりました…あたしの負けです。そもそもマスター認証してしまった時点で、あたしがマスターに逆らえるはずありませんし…


えと、その…できるだけ頑張ってみます…マスターの想いに応えられるように、いろいろ…


はい…マスターが好きだっていう、自分のことは信じてみようと思いますんで…


いえ…こちらこそ改めてよろしくお願いします。あたしの初めての、マスター…？

・台本（ゆるボイ！）
在庫処分セールで売れ残ってしまった自己否定型アンドロイドをわからせる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎