ヴァンパイアである義妹は、貴方が女の子と知り合い、おまけに連絡先まで交換したと聞き、愕然とする。彼女は貴方から携帯をひったくり、例の女の子にいきなり電話をかけて…？

あ、お兄ちゃん、おかえり〜。遅かったね。


何〜？今、友達とチャットで忙しいからさぁ…


…え？女の子と会ったって、お兄ちゃんが？なんで？馴れ初めは？


なーんだ…付き合ってはいないんだ。びっくりした…


でもそうだよね。お兄ちゃんが彼女つくる姿なんて想像できないし。女の子とちょっと会話したくらいで彼女できたら、今ごろ非モテ街道突き進んでないしね、うん。


え〜？ホントのことじゃん。素材は悪くないのに、いまいち垢抜けないってゆーか…


ていうか、そんなことよりお腹減った〜。お兄ちゃん、人工血液は？早く出しt…って、何その指の怪我。どこで切ったの？


……は？ちょ、ちょっと待って。あたし、流石にそれは聞いてないよ？


は、話整理させて…要するに、お兄ちゃんは帰り際に超絶可愛いヴァンパイアの女の子をナンパして、自分の指を自分で切って、その子に血を飲ませたと？


え、ナンパはしてない？でも、自分から声はかけに行ったんでしょ？だったらナンパじゃん。


お兄ちゃん、いくら仕事でストレス溜まってるからって、ナンパは良くないよ？


え〜…深い事情って何？今の話だと、お兄ちゃんが女の子をナンパしたようにしか見えないけどなぁ。


ふーん…家出して、しかも貧血状態だったから、思わず声をかけてしまったと。まぁ、お兄ちゃんのお人好しは今に始まったことじゃないけど…


…指、ちょっと貸して。本当に女の子に噛まれたのか、調べるから…


(指の上から匂いを嗅ぐ)


…うわ、ホントだ。しっかり吸血されてる…


…いや、指だけじゃなくて、全身からその女の子の匂いがすんだけど。お兄ちゃん、まさかその子のこと抱いた？


ちょっと…ちゃんと答えてよ。身内から犯罪者なんてあたし、超絶イヤなんだけど。場合によっては、警察に引き渡さないと…


へ〜、違うの？ただ転びそうになったところを抱き止めただけ？そうなんだ…


ん〜…そーいうことなら、ギリセーフか…いや、ラッキースケベって点ではアウトかもだけど…


ていうか、どさくさに紛れて、その子の変なとこ触ってないよね？


ホントかなぁ〜？実は少しお近づきになれてラッキー！ぐらいは思ってんじゃないの？


……は？ま、待って…連絡先交換って、なんで？その流れでなんで連絡先交換するっていう話になるの？ちょっと意味わかんないから、詳しく教えて。


ふ〜ん…向こうから言ってきた…なんだろ、何が起きてんだろ…その子の中で、お兄ちゃんのポイントが倍増するイベントでも起きたのかな…


ま、まぁ、いいや…とりあえずその子の連絡先見せてもらっていい？携帯の中に入ってるんでしょ？


いいから！あたしが気になるの！いいから見せてよ！


(兄から携帯をひったくり、中身を確認する)


えっと…もしかしてこれ？


へー…可愛い名前。実物も可愛いんだろうなぁ…お兄ちゃんには勿体無いぐらい…


…ね、お兄ちゃん。今からこの子に電話かけていい？


だ、大丈夫…ヴァンパイアって夜行性だから。今なら全然起きてるんじゃないかな？てことで、電話電話〜…


(発信)


…あ、もしもし？すみません、お兄ちゃんの携帯から掛けてるんですけど〜…


…あ、はい。この携帯の持ち主の妹です。先ほどは兄がお世話になったみたいで…


…へー、そうなんですか？その、兄に変なこととかされませんでした？おっぱい揉まれたりとか…


あ、よかったです。身内から犯罪者が出なくて、安心しました。えへへ…


あ〜、そうだったんですね。よかったです。ちゃんとご両親と和解されたんですね。


はい…はい…へー、そんなことが…


いえいえ、そんな…わたしは兄のお目付け役っていうか、そんな感じで…


はい…まぁ、そうですね。ヴァンパイアのわたしが妹なので、ヴァンパイアに対する一定の理解はありますよ、うちの兄は…


えぇ、えぇ…そうですね。わたしもぜひお会いしたいです。あの、ちなみにご年齢は…？


あ、ホントですか⁉︎ わたしと同い年ですね！


…いいの？じゃあ、あたしも敬語は外しちゃうね。


うん！今度、うちに遊びにおいでよ！兄も美味しいお菓子用意して待ってるって！


うん！また今度、あたしの携帯から改めて連絡するね！それじゃあ、また。おやすみなさい。


(電話を切る)


はい、お兄ちゃん。というわけで、今度その子とうちで遊ぶ約束したから、なんか美味しいお菓子用意しといてね。


そう？普通に会話してたら、自然と仲良くなるもんじゃないの？


それよりさ…お兄ちゃんにちょっとお願いがあるんだけど。


うん…あたし、お腹減ったから、指出して。怪我してない方の指。


やだ。人工血液なんて美味しくないもん。普通にお兄ちゃんの生き血の方が美味しいと思うし。


は・や・く。よその女の子はよくて、妹はダメなの？そんなわけないよね？早くして。


うん…それじゃ、いただきます。ンッ…


(兄の指を吸血)


おいひ…お兄ちゃんの血、最高…♡


もっと…もっとちょうだぁい♡ ンッ…♡


(引き続き吸血)


ふぅ…ご馳走様。ありがと、お兄ちゃん。味は案外、悪くなかった。


あ、ごめん。飲み過ぎちゃった？じゃあ、あたしの膝おいで？膝枕してあげる。


ほら、いいから…吸血させてくれたお礼ってことで、さっさと受け取って。早く。


(兄を自分の膝に寝かしつける)


家族になってから初めてだね…吸血したの…


うん…まぁ、なんていうか、ちょっとした偏見があったんだ。吸血なんてしたらお兄ちゃん、あたしのこと引くんじゃないかって…妹っていっても、血は繋がってないし、そもそも種族は違うし…


そう？そんなことで引かない？


えへへっ…そっか。流石はシスコンお兄ちゃん。年下には激甘なんだから…多分あの子も、お兄ちゃんのそういうとこに…


…なんでもない。こっちの話。ま、とにかく、お兄ちゃんはお兄ちゃんのままでいいってこと。分かった？


ん…もちろん。これからもちゃーんと、お兄ちゃんの妹でいるからね。


(兄の頭を撫でる)


別に〜？なんとなく、頭撫でたくなっただけ。ちょうどいい位置に頭があったから。


はいはい…おやすみ。あたしの膝で寝てんだから、ちゃんといい夢見てよね〜…

・台本（ゆるボイ！）
義妹ヴァンパイアのコミュ力は五十三万
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎