母は私にだけ冷たかった。いつも優秀な弟と比べられ、貶され、当時の私は生理不順もあって限界だった。
だからあのとき弟の誘いに乗ってしまった。今にして思う。私は本当にあの言葉に救われても良かったのだろうかと。

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(ノック)

姉さん、ごめん遅くなった。入るよ。




ぁ…(様子を見て心配し二段ベッドに近寄る)


姉さん大丈夫？ごめんね、朝からだいぶ辛そうだったのに一人にしちゃって。


薬はちゃんと飲んだ？お腹ちゃんと温かくしてる？

何か僕にできることあったら何でもするから、遠慮なく言っていいよ。



…そう。じゃあ僕、上で寝てるから何かあったらいつでも起こし……いや、違うな…


姉さん、ちょっとごめん。場所空けて。


(下段の姉のベッドに入る)

よいしょっと…
うん、今夜は一緒に寝るよ。このほうが暖かいし。

それに今日の姉さんは…なんだか一人にしちゃダメな気がする。


大丈夫、臭くなんてないよ。

血も汗も涙も、全部姉さんの匂いだよ。

僕のことはいいから、姉さんは姉さんのしたいようにして。



ほら、ちゃんと肩まで毛布掛けて。
姉さんはとにかく体が冷えやすいんだから。




…姉さん、もしかしてまた母さんに何か言われた？


ううん、なんとなく。やっぱりそうなんだ。

ほんと、なんであの人はただでさえ体調悪い姉さんに色々ぶつけられるんだろうね。


僕の前では良い母親ヅラしてそういうとこ全く見せないくせに、姉さんにだけ強くあたるなんて。



まさか。姉さんが悪い訳ないよ。

僕と比較して色々言うんだろうけど、そもそも僕は勉強もバイトも好きでやってるだけだし。
姉さんは僕とは違う。

僕ができることを全部できなきゃいけないなんてことは無いよ。

そんなこと言ったら僕なんて姉さんみたいにできない事ばっかりだ。


そんな簡単なこともあの人にはわかってないんだろうね。

きっと生理のことも自分の経験だけで姉さんのも決めつけてるんだよ。

我慢できない姉さんが悪い、みたいな…


あぁ…まさにそれを言われたのか…


……ダメだな。ちょっと冷静になれそうにない。


なんで、そんなことが言えるんだ。ふざけてる…


気にしなくていいからね。

言わせておけば良いんだ。どうせそのうち縁を切るんだから。


どういうことって？


う〜ん、そうだね…さすがにもう話してもいいかな。


ずっと黙っていたけど僕、大学には行かないんだ。

このまま高校を卒業して、就職する。



もちろん母さん達は知らない。

バレないようにちゃんと勉強もして模試の成績も見せてるしね。
これでちゃんと合格して後は入学の手続きさえしなければいい。


バイトも遅くまでして引っ越しと当座の資金も用意した。

合間に就活もして雇ってくれるところも確保した。



だから、一緒に逃げよう。姉さん。


僕とこの家を出て、二人で一緒に暮らすんだ。
僕が姉さんを絶対に幸せにしてみせる。


そうだよ、全部姉さんのために準備したんだ。

あの人から…この家から姉さんを連れ出して、幸せになってもらうために。


そのためなら僕はどうなったって構わない。

これが僕の最初で最後の反抗期だ。


どうしてそこまでって…本当にわからないの？


好きなんだよ、姉さんのことが。

姉弟とかそういうのじゃなくても、僕は姉さんのことが好きだ。


好きな人がこれ以上苦しむのは嫌だ。

一緒に暮らしたい。ずっと笑顔でいてもらいたい。

ただそれだけだよ。



(以下それまでより少しゆっくりと話しかける)


………ごめん、色々急すぎたよね。

ただでさえ頭痛いのにこんな話して。



とにかく今は身体を休めることに集中しよう。

考えるのは全部後でいいよ。

ただ一つだけ、もうあの人に何を言われても姉さんには関係ないから、そこだけは安心して。



さぁ、眠ろう。色々ありすぎて眠れないだろうけど、眠れるまで僕がずっと一緒にいてあげる。



(優しく身体を手でさする)


大丈夫……大丈夫……きっとうまくいく。

僕たち二人で、幸せになろう。


お休み…愛してるよ、姉さん。

・台本（ゆるボイ！）
一緒に逃げよう、姉さん。あの人から…この家から。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ろべ