彼氏の家にお邪魔したら彼氏が2人いたパラレルラブコメ的な何かです。一応ツンデレの「デレ」が堪えきれずに出てきてしまったという設定です。

　

(インターホンの音・ドア開ける)

（同時に）
◆よお。
◇やぁ。

（彼氏の家に彼氏が2人いてよろめく彼女）


◇わっ大丈夫！？　急によろめいちゃって、もーもー相変わらずおっちょこちょいで危なっかしいんだからっ☆ボクのマイハニーちゃんっ☆


◆……いや、そうだよな、ビビるよな。
俺も、わけわかんねんだよ……

数分前、職場の先輩から差し入れで貰ったシュークリームをなんとなしに食ってみたら……激クソ甘くて、思わず吐いたんだよ……

そしたら、コイツが……出てきた……

◇そーそーそーだよっ☆
ボクがシュークリームの妖精君だよマイハニーちゃんッ☆
なーんちゃって☆てへっ☆


◆……だから、俺だってわけわかんねんだって……
なぁマジでコイツ早いとこ抹消したいんだけどどうすればいい？

◇えーっ抹消だなんてヒドイなぁキミ！
ちょっとちょっとほら！　よーく見てよっ。
「ボク」はー、どっからどー見ても、「キミ」でしょ？　
姿カタチから今日のファッションまで、このよーにまーるで同一人物じゃないかぁプンプン！

◆ざけんな。まるで一緒ではねーよ……まずそのキモイ声とキモイ喋り方はなんなんだよ汚物野郎……

◇えーっひっどーい！
もーもーキミという人は全くわかってないんだからっ！
ボクはね、ただ吐いて出てきた汚物なんかじゃないよっ？
しょーがないっ。説明してあげようっ。

あのねっ、キミはねっ、普通の人間よりもー、彼女に対する「ツン」と「デレ」の比率が異常だったんだよ。

あっそうだマイハニーちゃん！　
この彼氏くんの、ハニーちゃんに対する「ツンデレ」の比率ってどのくらいだったと思う？？

◆おい……勝手に意味わからん話を進行させんのやめろ……あとそのハニーとかいうクソキモイ呼び方もまじでやめろ……

◇えっ？
「ツン」が9で、「デレ」が1？

◆おいお前……勝手にコイツと会話を進行させんなよ……

◇うふふふふ。ブッブー☆
正解はーなんとっ！
「ツン」が0.1、「デレ」が9.9でしたっ！！

意外だった？　ふふっ。
この彼氏君の心の中はねー、実は9.9がデレデレのこのボクでいっぱいだったというのに、キミの前だと、何故かカッコつけたくなっちゃうみたいでね？　
それで必死に取り繕って、0.1しかない「ツン」要素を今まで無理矢理に引っ張り出してきたものだから、ついについに身体に限界がきて、それで、シュークリームの反動で、ボクがぴょんっと分離して出現しちゃったっていうわけっ！
いやぁーびっくりだねっ☆

◆おい……意味わからんことをそれ以上喋るな……なんでシュークリーム如きで人間が分離すんだよふざけんなよ早く消えろよ頼むから……

◇えっ？　ハニーちゃん、まだ信じられないの？
う〜ん……あっそれならいーこと思いついたっ☆
ねぇハニーちゃん、試しにこの彼に、何か今日あったこととか、適当に話しかけてみてよっ。
そしたらボクがさっ、彼が隠してる本当の気持ちをすぐさま代弁してみせるからさっ！

◆おい……無視しろよ？
こんな得体の知れない奴の話なんかに耳を傾ける必要は一切ないかんな……？

……は？
今日？
あー、お前、あの資格の試験、合格したんだ。
ふーん……でもま、お前頑張ってきたみたいだし、当然の結果なんじゃね……

◇（遮るように）えーっ！　すっごーいおめでとう！！！
やっぱりボクの彼女って大天才じゃない！？
あの試験ってー、この前先輩にちょっと聞いたけど、めっちゃくちゃ難関なヤツだとか言ってたし！
それにハニーちゃん、毎日寝る前の1、2時間、コツコツ勉強してるってこないだ言ってたけど、毎日不規則でズボラなボクにはそんなこと到底できないしっ、それだけでも偉いし凄いのにっ！
こんなに立派な努力家でー、おまけに超ストライクな見た目してるこんな可愛すぎる女の子、ボク一生推せるよぉー！　超永久保存版っ☆


（数秒の間のあと◆に叩かれる）
……イタッ！
ちょっとちょっとキミ、急にブたないでよねー？
ボクは一字一句しっかり代弁してあげただけなんだから、むしろ感謝してよねー？

◆コイツ……マジで何……そんな、わけねーだろ……はよ……消えろ……


◇……ん？　どーいたしましてっ♡

◆おい、お前、何顔赤らめてコイツにお礼言ってんの？　ね、ヤメろ？　ヤメて？？

……何だよ……

ご飯……？　あー、俺はまだ腹減ってないけど……

◇えーっ！　もしかして久々にマイハニーちゃんの手料理が食べれるのーっ！？！？
うっわー嬉しさ大爆発マンだ！
何リクエストしよ？？　付き合いたての頃初めて作ってくれた、卵フワッフワのオムライスもすてがたいねー♡♡
あっ、でもボク、何気に先月作ってもらえたチンジャオロース丼も食べたいかも？？


◆……いや、そんなことは思ってねぇ……

あ？　あー、そうだよ、俺はピーマンがそんなに好きじゃねんだよ……

◇ピーマン元々苦手だったから、今まで極力避けてきたんだけどぉー、大好きな彼女が作ってくれた手料理だし、そんなの、食べないわけがなかったじゃん？？？　
で、すごーく久々に、恐る恐る食べてみたら……まー5分で完食したよねっ☆
あの時、苦手だから一気に口の中かき込んだなんて言ってたけど、あれ嘘でーすっ☆
ただ単に美味しくて止まらなかっただけでーっす☆

ほんと、天使が作る料理ってのは無敵すぎるんだね！？　あーもーボク、マイハニーちゃんが作るものならなんでも食べれる気がするよ！！
楽しみ過ぎて急激にお腹が減ってきた！！


（しばらくの間）

◆……おい、お前……さっきから何ニヤニヤしてんだよ……俯いててもバレてんぞ……

◇早くその可愛い顔を上げてほしいなぁわくわくっ……ってイタッ！
だから急に無言でブたないでよーもーっ
このっ恥ずかしがり男めっ☆……ツンっ☆


◆……おい、お前……
今、絶対吹き出したよな……？
言っとくけど、マジでこんな奴……俺の中に存在してねぇかんな？？

……あ？

◇えーっ！　オムライスとチンジャオロース、どっちも作ってくれちゃうの！？
うっわっ最高！！　この子はなんて優しくて可愛くて美しくて宇宙一素晴らしい女の子なんだろう！！！
いつもは恥ずかしくて、聞かれても、なかなか答えられなかったんだけどー……今のボクならちゃんと言えるねっ！！

◆……は？　んなっ、おいおまっ……！

（彼女に飛びついて耳元で）
◇ギュッ♡
大好きだよっ♡
一生愛すからっ、これからもずーっとずーっと、よろしくね♡♡

（シュッと消える）


◆……なっ……
……グッ……

なんで、そのタイミングで消えやがんだよ……くっそ……おま……マジでなんだったんだ……

（お腹が鳴る）

……ん？　
あー、なんか、どうやらどっと疲れて腹が鳴ったらしい……

は？
ご飯作る代わりに、もう一回抱きしめてほしいだと……？

あのな……「俺」はお前を抱きしめてなんかいねーぞ？

（舌打ち）
つーかそれ……よくよく考えたらムカつくな……

わかった。抱きしめるから。
抱きしめたら、さっきまでのわけがわからなさ過ぎる出来事、一切全部、綺麗さっぱり、忘れろよな……？


（ため息）
しょーがねぇ奴。
じゃ、ハイ。
（抱きしめる）


（耳元で同時に。もしくは◇で）
◆◇……一生愛してる。これからも俺から離れんなよ。









おわり

・台本（ゆるボイ！）
[掛け合い]ツンとデレに分離した2体の彼氏に出迎えられる［1人2役］
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
蚊ネコ