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間男の元妻に告白される話
  • 純愛
  • シリアス
  • 告白
公開日2022年05月22日 23:36 更新日2022年09月29日 22:31
文字数
3063文字(約 10分13秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
あなたの元妻と不倫した男の元妻
視聴者役柄
指定なし
場所
オシャレなバー
あらすじ
妻との結婚生活は妻の不倫をきっかけに離婚という形で幕が下りました。

それからしばらくして、あなたのもとに一つの連絡があります。

『お久しぶりです。お元気にしていらっしゃいますでしょうか』

それは、あなたの妻が不倫した、その相手の元妻からだった。

彼女もあなたと同じく今回の不倫を期に、離婚になっている。

『お互い少し落ち着いたことなので、少しお話をしませんか?』

あなたは、彼女に誘われ、指定されたバーに足を運ぶのだった。
本編
(オシャレなBGMがあれば)

こんばんは

お久しぶり、ですね

少し、お顔に生気が戻りましたね

いえ……そもそも、あなたの生気のある顔を見るのは

初めてなのですが

……喜ばしいことです

ええと、弁護士さんを入れずにお話するのは

初めて、になるんでしたっけ?

はい、こちらの方も、少し前に全て片付きました

あの人とは、ようやく他人になった形です

……少し、飲みましょうか

なにが良いですか?

……それですね

(バーテンダーを呼び止めて)

あ、すみません、ギムレットハイボールと……

× × ×

すみません、突然呼び出してしまって

もしかしたら、いえ、というより、確実に

ご迷惑だ……とは思ったのですが

どうしても、ご健在でいらっしゃるのか気になってしまって

それから、もう一つ

どうしても伝えたいことがあって

まずは……ありがとうございます

こんなおかしなお誘いを、嫌な顔せずに受けてくださって

それから、ごめんなさい

……確かに、あの人とはもう他人です

ですが……そうではなく……

(カクテルが運ばれてくる)

(少し狼狽えて)

あ、……

ありがとうございます

はい、それは私ですね

(グラスが置かれる音)

はい、どうも……

……いえ、何でもありません

(咳払い)

ええと、とりあえず……乾杯としましょう

お互いの、新しい生活の門出を祝って

乾杯

(グラスの触れ合う音)

(一口飲んで)

はあ……

ちょっと……、私には強かったみたい、です

少し、ペースを下げて飲まないと、ですね

(間)

……出会いは、……最悪でしたね

ええ、およそ出会いと呼べるものの中では最悪でした

……あなたからのお電話を受けたとき

あの時、私は正直に言えば、あなたのことを恨みました

『お宅のご主人と、私の妻が不倫をしているので、ご報告をさせてもらう』

……突然知らない番号から電話がかかってきて、そう言われたんですから

……いえ、違います違います! 別に今はそうは思っていないんです!

むしろ……

いえ、その……

(咳払い)

ただ、ですね

そのとき、その瞬間だけは、あなたを恨みました

あまり言っていなかったのですけど

私、気付いていたんです

自分の夫が浮気をしていることに

……女の勘っていうやつなんですかね

立ち振る舞いとか、匂いとか

そんな、意識に登るか登らないかの些細な違和感です

けれど、雰囲気で分かってしまったんです

(一口飲む)

元夫とは、それまでとっても上手くいっていたんです

今となっては、上手くいっていたつもり、というのが正しいのでしょうね

ふふっ

私は、あの家を、楽園だと思っていました

でも、その日から、染みがひとつ

取れない染みができた

だけど、私はそのことに蓋をしました

そうすれば

誰も傷つかなくて済む

あの人の両親の笑顔が曇ることもない

私さえ、それに気が付かなければ

……ありていに言えば、そんな風に思っていました

(一口飲む)

あの後も、あの人は優しくて、普段となにも変わらなくて

だから私は……楽園を守ろうと

なにも見なかったことにしたんです

それから、ずっと、そのことに気が付かないふりをしていて

だんだん、あの人の私に対する態度が冷たくなって

一緒に住んでいるこの人は一体何なんだろうって

そんな風に思いながら、それでも……

それでも、守らないとって、耐えていたんです

そんな時に、そちらからの電話、でしょう?

自分がせっかく、この場所を守るために今まで耐えてきたのに

そんな電話を受けてしまったら、もう無視なんてできなくなる

そう思ったんです

ふふっ、笑えますよね

本当に、今思えば自分でも

なにを考えてるんだろうって、呆れます

(一口飲む)

私は勘違いしていた

私が感じたあれは、楽園に落ちた染みなんかじゃない

もともと最悪な汚泥の大地に

楽園色の敷き物を敷いていただけ

あれは地面の下から染み出したもの

私が幻視した楽園なんて、初めから無かったんです

だから、今は……

今は、感謝しています

あのきっかけが無かったら

私はあの見かけだけ綺麗な汚泥の中で

緩やかに死んでいったのでしょう

(一口飲む)

……え? 飲みすぎ、ですか?

いえ、私、それなりに強い方なので大丈夫ですよ

それで、ですね

初めて弁護士の方を交えてお会いしたとき

あなたの憔悴しょうすいしたお姿をみて

私、自分がひどいことをしたと思ったんです

私があの時にその「染み」について問いただしていれば

あなたがあそこまで傷つくことは無かったかもしれない

愛した人が、どんどん自分から離れて行って

世界が冷え切っていく

自分のことを愛してくれない

何者なのかわからないような

そんな悲惨な体験をさせることは、無かったかもしれない……

だから、私が、初めに謝ったのはそのことです

この、双方が離婚という結果は、もしかしたら同じだったかもしれない

けれど、それまでの道のりは、違ったかもしれない

もしかしたら、その時はまだ不倫と呼べる段階ではなくて

私たちの隣には、別の人が居たかもしれない

……すみません

こんなことを話したって……

(一口飲む)

話したって、仕方がないことくらい、分かっているのに

(間)

……あのですね

あの時に、あなたのお姿を見たときに

私は申し訳ないっていう気持ちと同時に

なんてすごい人なんだろうって思ったんです

見るからに疲れているように見えて、

愛する人を奪われて

こんなに傷ついているっていうのに

戦う意思に全く揺らぎが無いなんてって

その時に感じたことをうまく言葉にするのは難しいのですが

あなたの姿が私に戦いの意味を思い出させてくれたんです

……私が、あの人との偽りの時間に

ちゃんと自分の手で幕を下ろせたのは

きっとあなたのおかげだったんです

だからずっと……

ずっと、お礼が言いたかったんです

(間)

……ようやく、言うことができました

それで……ですね

(一口飲む)

……あの、過去の話じゃなくて

み、未来の話をしたいんですけど、良いですか?

(間)

急なことで、驚くかもしれないですが……

ありていに言えば

……あなたに、好意を抱いているのです

(深く呼吸をして)

あの時からずっと

気付けばあなたのことを考えてしまっています

もちろん、初めは好意なんか、ひとつもありませんでした

けれど、お互いの離婚のことや、慰謝料とかの事後処理の話をしているうちに

あなたの、人となり……と言いますか

いろんなものに、深い愛を向けていることとか……

そういうものを感じて

こんな素敵な人が傷つかなくてはいけないなんて

なんて理不尽なんだろうと、そんなことを思っていました

離婚のためのゴタゴタが片付いていくにつれて

あなたが、元気だろうかとか

体調を崩していないだろうかとか

精神的に参ってしまっていないだろうか、……とか

放っておけない……とか

気が付けばあなたのことを考えるようになっていました

初めは、この感情を……あなたに感謝していて

勝手に恩人のように思っているから気になるのだと

そう思っていました

ですが、……この感情

長らく忘れていたこの感情……

……愛しい、という名前でした

あはっ、す、すいません……

うん、…………ええ、そうですね

これは気の迷い、勘違い

きっと、大切な人を失って……それで、心が弱っている

私も、そうではないかとも思っています

けれど、今抱いている気持ちは、本当のもので……

あのですね……

うん、やっぱり

私は……あなたのことが好きみたいです

(一口飲む)

……今日は答えを聴きません

だって、お互いのこと、詳しく知っているわけではありませんし

お互いに、勘違いをしているかもしれませんしね……ふふ

……あの、ですね

時々、でいいのですが、またこうして……会ってくれませんか?

(少しシリアスな声で)

同じ傷を負った者として

あなたとは何かの縁で繋がりを持ちたいと思っているのも事実ですし

(少し柔らかい声で)

あなたとの奇妙な縁を……大事にしたい思っているのも事実で……

(間)

…ありがとうございます

そしたら、ここからは、もう少し楽しい話をしましょうか

あなたのこと、もっとよく知りたいですから

ええ、今日は遅くまで、語りましょう
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
間男の元妻に告白される話
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
剣城・アイスドーラ・凍子
ライター情報
つるぎ あいすどーら とうこ
剣城・アイスドーラ・凍子です。

駆け出しの台本師

Twitter:@Ice_dola

いろんな設定のシチュエーションを書いていきます。
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