数か月間実の弟に監禁されている貴方。これまで何度か脱出の試みたが、成功したことは一度もない。しかし貴方は諦めずに、日々大人しく過ごしながら脱出の機会をうかがっていた。
今日は弟が遠くへ出かける日。自由な時間が長く確保できる。これ以上の機会はないと、貴方は足枷の鎖を断ち切った。
縛る物はなくなった。あとは出来るだけ遠くに逃げて、家族に連絡するだけ。
だというのに、自由になった足はピクリとも動かない。
逃げる算段を立てていた脳が、もぬけの殻になった自宅で呆然とする弟の姿を想像する。
それはあまりにも鮮明で、ただの想像だと言って、無視することがどうしてもできない。
その時貴方は悟った。
自分がいないと生きていけない弟と同様に、自分もまた、弟がいないと生きていけなくなっていたということに。

ただいま、姉ちゃん。

……何隠してんだよ。足首の所。ああ、足枷がこすれて痛かったか？見せてみろよ。

【鎖が切れていた】

鎖、切ったのか。……そんな顔すんなよ。別に怒ったりしねーから。鎖が切れてようが、窓が割れてようが、今姉ちゃんがここにいるならどうだっていい。

まあ、一体どうやって切ったのかは気になるけどな。……まさか、誰か家に入ってきたりしてないよな。誰も入ってきてない？本当に？ならよかった。

鎖は後で直すとして、先に飯食おうぜ。今日は姉ちゃんの好きなもの買ってきたんだ。

【袋から弁当を出す】

コンビニであっためてもらってきたからもう食えるぞ。腹、減ってるだろ？

いらない？食欲ないのか？そっか。なら俺も後でいいや。食いたくなったら言えよ。あっためなおすから。

じゃあ、鎖直すから、一旦足枷取るぞ。

【足かせを取る】

……逃げないのかよ。今俺を押しのけさえすれば、簡単に外に出られるんだぞ？……いや、逃がしたいわけじゃないけど……

……本当は、わかってんだよ。自分がどうしようもないクズだって。彼氏と仲良くやってるところを無理やり引き離して、姉ちゃんから自由を奪ってさ。俺はずっと姉ちゃんを苦しめてるんだって、痛いほどわかってる。

けど……どうにもできないんだよ。姉ちゃんには幸せになってほしい。でも、俺から離れないでほしい。他の奴なんて見ずに、俺だけを見ていてほしい。

……ごめん。言いたいことが全然まとまんねー。けど、これだけは言わせてほしい。

俺、姉ちゃんのことが好き。兄弟としてじゃなくて、一人の女の人として、どうしようもないくらいに好きなんだ。

こんなことしておいて、今更何言ってんだって話だよな……ごめん。

【抱きしめられる】

！姉ちゃん、いきなり何して＿＿＿

……え、姉ちゃんも、俺のこと……好き？

いや……姉ちゃんのそれは、俺が弟だから……

違う？……ずっと一緒にいよう、って……本気で言ってんのか？ずっとって、一生ってことなんだぞ？

本気、なんだな……やった。俺、今人生で一番うれしい！これでやっと、姉ちゃんと両思いだ！

なあ、キスしてもいいか？もう両想いなんだからいいよな？

【キスをして、抱きしめ返す】

……好き。大好き。俺の、俺だけの姉ちゃん。

一生離さないから、姉ちゃんも俺のこと、一生離さないで。約束だからな。

・台本（ゆるボイ！）
約束～ヤンデレ弟に監禁されて～
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
鳩羽紫乃