貴女の上司は生真面目な社畜であった。そんな彼に片想いしている貴女は、いつも夜遅くまで真面目に働く彼を心配していて…？

…ん？あぁ、悪い。ぼーっとしてた。今度のプロジェクトの進め方について考えていたところで…


(コーヒーを机に置かれる)


…ありがとう。相変わらず気が利くな、君は。君のような女性が俺の伴侶になってくれたら、どれだけ嬉しいことか…


ははは…冗談だ。ハラスメントで訴えるのだけはやめてくれよ？本当にただの冗談だから。


…？その何ともいえない顔は何だ？やはり、今の発言は何かしらのハラスメントに該当するのか？


そうか…ならいい。とにかく、今日も終電ギリギリまで残って、詰めるところを詰めないとな…


あぁ、君はもう帰っていいぞ。俺が勝手に居残りしているだけだ、君が無理に付き合う必要はない。


…何？俺も一緒に？だが、しかし…


む…まぁ、たしかに今やっている仕事は、喫緊の課題というわけではない…


(ため息)


わかった。そこまで言うなら、今日は君のアドバイスに従おう。帰り支度をするから、少しだけ待っていてくれ。


(帰り支度を済ませ、彼女の元へ)


待たせたな。では、消灯・施錠をして帰るとしようか。


(会社を出て、駅まで歩く)


しかし、君も物好きだな…なぜ、俺に付き合って、わざわざ遅くまで残っている？君は自分の分の仕事はとっくに終わらせただろう？


む、そうか…そこまで心配をかけていたとは…それはすまなかった。


あぁ。終電ギリギリまで勝手に残るのは自重するとするよ。俺が残っていたせいで、君が帰れないとなれば、それは許されないことだからな。


そりゃあな…君の指導係を務めてきたわけだし、実質、俺が君の上司ということで問題なかろう？


あぁ。困ったことがあったら、いつでも言いに来い。できる限り、力になってやる。


…？あ、あぁ、勿論だ。あまり人のプライベートには踏み込まない主義だが…どうしても困っているというのであれば…


…何？それは恋愛相談、というやつか？


いや、しかし…それだともっと経験豊富な人を選んだ方がいいぞ。俺は今まで勉学・仕事一筋で生きてきた男だ。恋愛のれも知らない、にわか者だぞ？


むぅ…そう言われてもな。恋愛経験皆無の俺が、君の力になれるとは思えんが…


……そう、か。君は本当に彼のことが好きなんだな。


真面目で融通が効かない男…まるで、俺みたいな男だな。


実際に会ったら、ガツンと言ってやりたいものだ。「彼女のような素敵な女性に心配をかけるな」と…


む…なんだ、その呆れ顔は？俺はその男への感想を述べたまでだぞ？


そうか…やはり難しいな、乙女心というのは。社会人経験はそれなりに積んできたつもりだが、まだまだ勉強不足の分野はあったということだな。精進せねば…


(咳払い)


ま、まぁ、とにかくだ…君の面倒はこれからも見るつもりだし、その…俺にも至らぬ点があれば、遠慮なく指摘して欲しい。君のその実直さは信頼しているからな。


む…いきなりダメ出しか。手厳しい…


な、なぜ俺が休日にも仕事をしていると…⁉︎ 証拠はあるのか、証拠は⁉︎


ぐっ…！君は本当に鋭いな…！言っていることが一つも間違っていないのがまた…！


わ、わかった…休日はちゃんと家にいる。こっそり会社に出勤したりなどしない。約束する。


あ、あぁ…俺は構わんが、君はいいのか？せっかくの休日を上司と過ごすなど、心が休まらないのではないか？


あぁ、そういうことか…なるほど、それはたしかに一理ある。


うん…君の好きな相手が俺と似ているならば、俺がその練習相手をするのは、理にかなっている。君はやはり賢い女性だな。


さ、察しろとは何がだ？すまんが、俺は恋愛経験のれも無くてだな…


そう、か…ならご指導ご鞭撻、よろしく頼む。


当然だ。君の貴重な休日をいただくわけだからな…全力で学ばせてもらうぞ。


あぁ。君の都合のいい時間帯を指定してくれ。俺の方が君に合わせるから。


(駅に到着)


…よし、何とか最終電車に間に合ったな。タクシーを拾わずに済みそうだ…


…どうした？まだ何か言い足りないことが？


分かった…それは言いたくなった時でいい。君を無理させるのは、俺の本意ではないしな。


うん。なんせ君は、俺が人生で会ってきた中で最も好ましい女性だからな。


おっと、そろそろ電車が来そうだ。ここまで来て、乗り遅れたらシャレにならん。急ぐぞ。

・台本（ゆるボイ！）
【鈍感】同じ部署の堅物上司は恋愛未経験
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎