寂れた店で薬屋を営んでいる貴女は、いつも妹の薬を買いに来る常連客の男を憎からず思っていた。ある日、いつものように薬を買いに来た彼に、薬の調合に使う薬草を取りに行きたいからと、妖の山への護衛を頼んでみて…？

(店に入って女店主に声をかける)


…薬屋さん、どうした？さっきから一人でブツブツと…


あ、あぁ…今日もいつもの、頼む。妹の風邪薬を…


(薬を手渡され、代金を払う)


…ありがとう。いつも世話になってる。


あぁ、最近は体調も良いみたいでな。ここの薬がいいからなのかもな。


ホントのことだよ。アンタのとこの薬に切り替えてからは、体調悪い日の方が少ないくらいだし。いつもありがとう。


…ん？頼み事？別にいいけど…珍しいな、薬屋さんから俺に頼み事なんて…


…妖(あやかし)の山？あぁ、あるけど…まさかあそこに…？


なるほどな…あそこにしかない薬草を取りに行きたいと。そのために俺に護衛をして欲しい、というわけだな？


心得た。アンタにはいつも世話になってるからな。それくらいはお安い御用だ。


でもいいのか？店は開けっぱなしにして…


…それもそうか。たしかに俺以外の客も見たことないしな。アンタがそう言うなら…


あぁ。なら、さっそく行こうか。日が暮れると危険だからな。山での用事は、明るい今のうちに済ましてしまった方がいいだろう。


(山を登る)


相変わらず、薄気味悪い山だな…妖が出るって話も、あながち嘘じゃないかもな。アンタ、いつもこんなとこに一人で入ってんのか？


そうか…女一人でこんなところにな。豪胆というか命知らずというか…流石だな。


…ん？あぁ、それが目当ての薬草か？俺にはただの草に見えるけど…そもそも薬草の見分けなんてつかねえし。


ふーん…そんなもんか。じゃあ、俺でも毎日薬草摘みに出かけたら、自然と覚えられるようになる？


ははっ、そっか。なら、気が向いたときは教えてくれよ？薬草先生……ッ！


(彼女を連れて木の陰に隠れる)


しっ…静かにしてろ。百鬼夜行だ…なんでこんな時間に…


あぁ…要するに、妖の行列だ。流石にあの数相手じゃ、俺でもどうにもならねえ…見つかったら、囲まれて終わりだ。


ん…そのままでな。息はできるだけ殺していてくれ…


(百鬼夜行をやり過ごす)


はぁ…行ったか。こんな明るい時間でも出るなんて、油断ならねえな。見つからなくてよかった…


…ん？あぁ、悪い。ずっと密着しててすまん。すぐ離れる…


(彼女に服の裾を掴まれ、動けなくなる)


…ッ！この力、まさかアンタも…？


そう、か…以前からただ者じゃないとは思っていたが…アンタも妖だったなんてな。どうりで、こんな山の中を堂々と…


いや、いい。そんなに謝るな。俺は何も気にしていない。妖なら、人前で正体を隠すのも当たり前だろうしな。


あぁ。何者であったとしても、アンタが妹のために風邪薬を売ってくれたのは紛れもない事実だ。俺はそんなアンタに感謝してる。いつも本当にありがとう。


ん、お安い御用だ。俺でよければ、いつでも抱きしめてやる…


(ハグ)


うん…うん…そっか。アンタ、人と妖の混血児だったんだな。なら、さっきの百鬼夜行には見つからなくて正解だった。人の血の方が濃いと、人間判定されて襲われてたかもしれないからな。


そういうもんだよ。奴ら、血の匂いで人か妖か、判別するからな…軽く出血でもしてたら、速攻見つかってたかもな。距離もそれなりに離れてたのが幸いしたな…


…そろそろ帰るか。雲行きも少し怪しくなってきたし…また妖が出てこないとも限らねえからな。ちなみに、薬草の数はそれで十分？


わかった。なら、山を下りよう。アンタのことは、責任もって送り届けてやるから。


どういたしまして。こちらこそ、これからも世話になる。よろしく頼むよ。

・台本（ゆるボイ！）
【護衛】クールでカッコイイ侍のお兄さんは非常時でも冷静沈着
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎