勇者の助けを魔王の城で待つ姫。でも実は……

あぁ……暇だ
かたっくるしい城から開放されて、のんびり勇者を待つために魔王に捕まってみたけど
……思った以上にやることがなくて暇だ
まぁ……四六時中猫被らなくてもいいのは楽だけど
……おーい、見張り兵
喉渇いたからお茶煎れてきて
えっ？
お茶の時間はまだ先だって？
ちっ……細かいな
ならさ……暇つぶしに芸の一つでもしてくれよ
はぁ？
それもダメなのかよ
しかたねぇな
なら暇つぶしの運動に付き合えよ
下っ端でも魔王軍の兵士だろ
多少は手応えあるよな？
……んっ？
レベル３０？
ちっ！
雑魚かよ
私の半分もないとか……魔王軍も人手不足か？
もういいや
寝る
メシの時間になったら起こしてくれ
……寝てる間にへんな事したら絞めるからな

（戦闘音）
……んっ？
…………うっせぇ！！！
んだよっ！！！
人が寝てるのに騒ぎやがって！！
おい！見張り！！
何がおきてやがる！！
あぁあ？
勇者が乗り込んできた！？
ふふふ
ようやくか
ホント……いつまで待たせるんだよ
おい、見張り
ここまで勇者を連れて来い
今すぐだっ！！
やっと……やっと……勇者に会える

おっ！
（深呼吸　ここから猫かぶり）
あっ、お、お待ちしておりました、勇者様
よく無事にここまで来てくださいましたね
私は貴方が来る日をまだかまだかと心待ちにしておりました
どうかお願いします
私をこの魔王の城から救い出してください
……んっ？
（猫かぶり終わり）
おい、見張り
こいつ本当に勇者か？
どこからどう見てもガキなんだが
……んっ？
称号は勇者か
レベルは……５！？
な、なんだよこれは！！
なんで魔王城にくる勇者がガキでレベルが一桁なんだよ
こんなの王都の周りがやっとだろ！！！
おい、勇者
どうなってるんだこれは？
説明しろよ
えっ？
勇者の血を引いてるのは本当なのか？
で、つい最近それが発覚してすぐに私がさらわれた？
あぁ～……それは私のせいだな
で、レベルは？
んっ？
王都から離れたらモンスターが一切襲ってこなくなった？
盗賊も山賊も海賊も一切見なかった?
……あっ！
そういえば……ここに来た初日に魔王を絞めて
魔王軍全軍に勇者に手出すなって言って
代わりに勇者の障害になりそうな盗賊たちを狩らせたんだったな
……これも私のせいか
はぁ～……勇者
お前もう帰って良いよ
とっとと帰って母ちゃんにでも甘えとけ
……って！？な、何急に泣き出してるんだよ！？
えっ？
帰る家なんか……ない？
親なんかも……いない？
どういうことだ？
魔王軍に家族もろとも村を滅ぼされた？
だから、帰る家も家族も……ない？
……なら……お前はこれからどうするんだ？
わから……ない？
……あぁ、もうっ！！
わかったから泣くな！
おい、勇者
私と一緒に来い
お前が本当に勇者の血を引いてるって言うなら私が鍛えてやる！
そして……一日も早く一人前の勇者になれ！
そしたら……なってやるよ
……家族くらい
私の弟としてうちに来い
ただし！！
私が認める勇者になってからだからな
それまでは……私が守ってやるから
わ、わかったな
よし
それじゃいくぞ
おい、見張り
世話になったな
魔王に伝えとけ
次は滅ぼしに来るって

・台本（ゆるボイ！）
男勝りな姫とショタ勇者　憧れの勇者は……
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
れん