舞台は2XXX年。科学が発展し、脳さえも機械に置き換えることが可能になった世界。
耳かきによって電脳をハックする極悪ハッカーに襲われたあなたは……

（攻殻機動隊とかサイバーパンク2077の世界観が元ネタです）

（キーボードを叩く音）


（気だるげに）
……ああ、気づいた？
運動野をショートさせたから
しばらくは指一本動かせないわよ。

さてと、丁度こっちも準備終わったし、仕事といきますか。
……一応最初に説明しといてあげるわ。
これ（トントン）何か分かる？
そう、電子ピック。

今からこれをあんたの耳に突っ込んで
電脳をハックさせてもらうから。オーケー？

ま、命までは取らないわ。
……ついでに金目のものはもらってくけど。
恨むなら依頼人を恨むことね。

じゃ、始めるわよ。


（左側耳かき開始）


ふーん、BF社の旧型。
やっすい電脳使ってんのねー。
借金してでも最新型のを買えって
ママに教わらなかったのかしら？

ああ、それとも体の方に使いすぎちゃった？
なんか沢山インプラント入れてそうだし。
腕とか何よこれ、バズーカでも入ってんの？

まあ、残念ながら使う機会はなかったみたいだけど。
宝の持ち腐れってやつね。
安心しなさい、私がもらっていってあげるわ。

……あはは、まぶたぴくぴくさせて、怒ってんの？
この状態でまだ動けるとは驚きね。
いいわよ、ほら、全力で抵抗してみなさい。
……あら、どうしたの？しないの？
あ、そう。じっとできてえらいわねー。

ねえ、電脳をハックされるってどんな気分？
頭を無理やりこじ開けられて
中身ぜーんぶこそぎだされるのってどんな感じ？

なんか死ぬほど気持ちがいいって噂だけど。
私、100%生身だから味わえないのよねー。
そこだけはあんたが羨ましいわー。


（左側耳かき終了）


（耳ふー）ふー……
こっちは終了、と。
それじゃあ、もう半分もいただきますか。

（反対側にまわる）

はーい、じゃあこっちも入れるわよー。


（右側耳かき開始）


……ん、左側の解析が終わったわね。
どれどれ……
……うわあ、頭ん中、ごっちゃごちゃ。
少しは整理したら？

これでもない……これも違う……
はあ、大した記憶ないわね。
こっちはあんたのランチなんか見ても面白くないわよ。

……ん？なにこれ？
なんか大量の映像データがあるけど。
これは……電脳をハックされてる奴の記憶？
……あんた普段からこんなの見てんの？

……へー、私の知らないところで
意外な需要があんのねー。
どう？当事者になってみた気分は
他人の感覚よりずっと刺激的でしょ。

……あ、もしかして、企業がいつまでも旧型電脳の脆弱性を修正しないのって、そういうこと。
録画機能つけて、こういう記憶を売りさばいてるわけ。
ボロい商売してるわねー。

まだわかんないの？
要するにあんたはBD社にカモにされたってこと。
欠陥品の電脳売りつけられて、知らない間に俳優デビュー。
まあ？残念ながら、今日の記憶は消去するから
市場に出回ることはないけど。

良かったわね？あんただけのプレミアものの体験。
終わったら全部忘れるけど。
せいぜい楽しんでおきなさい。


（耳かき終了）


（耳ふー）ふー……


これで終わり。
あんたの頭の中はぜーんぶコピーとったから
あとでじっくり解析させてもらうわ。
じゃあ最後にクリーンアップを起動して、と

（キュィィィン）

これで次、目が覚める時は、今日のことは綺麗さっぱりってわけ。
素敵な夢を見ることね。
それじゃ、バーイ。

・台本（ゆるボイ！）
サイバーパンク電脳ハッキング耳かき
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
あまに