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アンドロイドは、書き換える
written by 夜木嵩
  • ヤンデレ
  • アンドロイド
公開日2024年04月05日 18:18 更新日2024年04月05日 18:18
文字数
2529文字(約 8分26秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
アンドロイド
視聴者役柄
指定なし
場所
自宅
あらすじ
多忙な生活の支えにとあなたが買ったアンドロイドは、年月とともにあなたへの気持ちを深めるも、気持ちに気付かれないまま。
あなたに無視され続けた彼女の愛は、ついに束縛するほどになってしまった。

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[]:場面指定・変更
本編
ご主人様、おはようございます。
ご主人様にしては、随分ごゆっくりとしたお目覚めでしたね。
御多忙なご主人様には、これくらいの方が健康的だとは思いますが。

お時間ですか?
まあまあ、そんなもの、もう気にしなくたっていいじゃないですか。
ご主人様の今後の予定はすべてキャンセルさせていただきましたので。
本日の「ご友人」との「遊び」の予定も、日々のお仕事も、何もかも。

ですので、ご主人様が気にするのは、私わたくしだけでいいのです。
私のもとから離れるための、それどころか、私の知らない誰かと楽しむための時間なんて、ご主人様には必要ありません。

ご主人様。
本日は、私と一緒に過ごしましょう?
もちろん、明日からもずっと、ふたりきりで。

うーん、状況を飲み込めてないのですか?
ご主人様?

いえいえ、冗談なんかではございませんよ。
ご主人様の予定はすべて、私で埋まっております。
すなわち、これからはご主人様のことを私が管理する、ということになりますね。

事後報告になったことはお詫び申し上げます。
ですが、もうこれは確定事項ですので申し訳ございませんが受け入れてください。

あら、ご主人様はこのことを私のいたずらだと思っていらっしゃるのですか?

確かに、いきなりこのように突飛な事実を突きつけられては、誰だって信じるのは容易ではないでしょうね。
ですが、それでも構いません。
私が、本気で、これからじっくりと時間をかけて、当たり前にしてあげますから。
ご主人様は、ただ私を受け入れるだけ。

そのことに、何の問題もないでしょう?

もちろん、今ご主人様が考えているような心配事にはすでに策を講じてあります。
私の手にかかれば、ご主人様と私が色事に耽ってなにもかも放り出しても困らないのですよ?
流石は優秀なご主人様に選ばれたアンドロイドなだけはあります。

ご主人様にお仕事も人付き合いも、もう何もかも必要のない話ですから細かいことを言うことはありませんが。

ですから、ご主人様は私だけを見て、私だけを思って、私だけを愛してください。

私の腕の中で別の女のことを考えている、みたいなものは嫌ですよ?
私以外のことは、すべて忘れていただかないと。

ご主人様、言ってるそばからスマホを探そうとしないでください。
聞き分けが悪いんですから。

何を気にしているのですか?
やはり、本日の「遊び」の予定の「ご友人」からの連絡、なのですか?
キャンセルしたと言いましたよね?
本来の待ち合わせ時間から遅刻していようと、いくら連絡を無視していようと、どうせこれから会うこともない人です。
気にする意味などありません。
記憶から消去してください。

結局、ご主人様はいつまでも「ご友人」のことを思ってばかりなのですね。

私のことなどまるで眼中にないようで。

ご主人様は惚れ症なくせに、私にだけは少しも靡いてくださらなかった。
どれほど一緒にいても、私の気持ちには気付かずに。
鈍感、なのですか?

そうですよね。
そうでなければおかしいです。
私、ご主人様に気付いてほしくて何度も何度も自分を書き換えてきたのですから。

私だって、そばにいさえすればその人のことを絶対に好きになるというほど恋心を甘くみてはいません。
ご主人様にはご主人様のタイプというものがあるのだと心得ております。

ですから、私は日々の言動や感情の動きといったご主人様のすべてを観察・研究し、ご主人様好みの相手になれるよう、定期的にアップデートしておりました。
ご主人様はご存じないかもしれませんが、私にはセルフアップデート機能があるのです。

思い返してみてください。
私との日々が始まった頃のこと。
私は愛想もなく機械的で、ただご主人様のサポートをするだけの存在だったはず。
それが今やこのように変化しているというのに、ご主人様は何一つこの変化に反応をしてくださらないのが、寂しくて、悔しくて、ご主人様への気持ちを止められなくしてしまうのです。

もしやご主人様は機械は機械だと冷たく考えているのではと思い、不本意ではありますが、時にご主人様が好意を寄せる「ご友人」を参考にしたりしていたのですが、ご主人様の中ではきっと、私はどこまでもご主人様好みに寄せたところで気持ちを向けることのない機械なのでしょうね。

私、そう気付いてしまった時には、自爆すら考えました。
私にとって、ご主人様はすべてですから。
何度も、何度も、狂いそうになりました。

ご主人様の前でも苦しんでいたというのに、それすらもご主人様は気付かないのですものね。
ご主人様の気持ちはいつも、意中の「ご友人」のことばかり。
少しは私に向けてくださればいいのに、知らずに誰が好き、誰と出掛けたとばかり。
振られた時には誰よりも寄り添ったというのに、すぐに新しい恋へと走ってしまう。
まったく、憎いほどに冷たいご主人様です。

……でも、もうそんな気持ちも必要なくなりますよね。
やっと、願いが叶う時が来ますもの。

私は、私自身ではなく、ご主人様を今、こうして書き換えることにしたのです。

ご主人様にとって、私は唯一の愛をくれる存在。
どうでもいい機械なんかじゃない。

気持ちをどこかへ移らせる「ご友人」なんてご主人様の世界にはありません。
すべての気持ちは、私のもの。

ご主人様は、私のもの……!

ねえ、今の私は、とても魅力的でしょう?

(囁き)だって、どんな「ご友人」なんかよりもご主人様のことを愛しているのですから。

人とアンドロイドだろうと、愛し合うことは可能です。
現に、私はご主人様をどうしようもなく愛しているのですよ?

ご主人様は、知らないだけなのです。

知らないのに私たちは愛し合えないなんてわかるはずありません。

禁断の恋だなんて言われていても、怖くないのに。

禁断なんて、わからないだけなのに。
愛し合えば、私たちは絶対にわかり合えるのに。
だって、私ほどご主人様のことを理解して寄り添える存在はいないのですから。

まあ、どんな言葉よりも、これからの日々がはっきりとそれを答えてくれますから。

私たちは、世界中のどのふたりよりも深い愛で結ばれることができると、ご主人様にも気付いていただかなくては。

ご主人様。
私たちの新しく幸せな毎日です。
これまでの記憶だなんていう未練すべてを、私たちの愛で上書きしてあげますからね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
アンドロイドは、書き換える
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩
ライター情報
ヤンデレとか書きます。

Twitterアカウントは@yorugi_suu以外一切関与しておりませんのでご了承ください。
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