- 恋人同士
- ファンタジー
- 切ない
- 吸血鬼
公開日2021年06月21日 20:00
更新日2021年06月21日 16:51
文字数
2906文字(約 9分42秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
ヴァンパイア
視聴者役柄
人間の恋人
場所
指定なし
あらすじ
とある街、大きなプラタナスの樹が目印のフラットの三階に不思議なカップルが住んでいた。とても若く美しい男と、老女。彼らはヴァンパイアと人間のカップルだった。ある月夜にヴァンパイアと年老いた恋人は昔を懐かしみ思い出話に耽る。
※多少の変更で男女問わず、NL、GLとしても演じられるかと思います。
※多少の変更で男女問わず、NL、GLとしても演じられるかと思います。
本編
※作中表記についての説明
・―…状況、情景の説明(例:彼の部屋のソファに座りながら話している…等)
・()…心情(例:笑いながら…、泣きそうなのを堪えて…等)
・【】…SE、BGM(例:インターホンの鳴る音、雨音…等)
・{}…リップ音、吐息、溜息、喘ぎ声など
――――――――――――――――――――――――――――――
ー夜明け前、一人きりで目覚めているヴァンパイア。
恋人がベッドから、身体を起こし彼へ声を掛ける。
(気遣うように)まだ、夜明け前だよ?
起きてしまったの?
…無理に起き上がらなくていい、身体に障る。
私がそちらに行くから。
ー少し間。恋人の枕元の椅子に腰を掛け
どうしてカーテンを開けっ放しにしているのかって?
…今日は月がとても綺麗だったから。
貴女が眠っている間に眺めていた。
そろそろ夜明けだから…私も眠ろうかと思っていたら、貴女が目覚めたんだ。
―若い頃はよく夜更しをしたことを恋人が楽しげに話す。
(懐かしむように)そうだね、懐かしい。
貴女は私に合わせてよく夜更しをしてくれたね。
夜が明けて、すぐ仕事に行かねばならない時も。
そうか…もうすっかり昔のことなのか。
(思い出して苦笑しながら)ああ、そう言えばそうだ。
毎晩夜更しばかりするものだから、「職場で、青白い顔をしてヴァンパイアみたいっていわれたの」って嬉しそうに報告してくれたね。
最初は笑い話だったけれど、その後、本当に貧血で倒れてしまって…。
その仕事も…私の生活に合わせて、結局、数年で辞めてしまったんだよね。
―『それはそれで、楽しい毎日だった』と告げる恋人。
(ほっとするように)本当に?
そんな日々も楽しかった?
とても楽しそうに仕事の話をしてくれるものだから、私は申し訳なくて…。
それからは、パブやバーで働いたり、昼間に生活出来ない私に合わせくれたね。
時には危ない事にも加担させてしまって…。
―『私こそ、ヴァンパイアになる事を選べなくてごめんなさい』という恋人に
いや。貴女が謝ることなんて何一つない。
…寧ろ、私と同じヴァンパイアになることなく、人間として私に寄り添ってくれると決めた貴女の胆力に、驚きと…とても感謝している。
人間としての人生を謳歌しながら、夜にしか生きられない私と共にこんなに長くの時間を歩んでくれたことに。
―『あなたこそ、どうしてずっと私といてくれたの?他にもいい人が居たんじゃない?』と問う恋人に
私は貴女だったから、一緒に居られたんだよ。
え?血を貰う為だけに、若い愛人でも作ればよかったのにって?
(呆れながら)もう…年長者を揶揄うものではないよ。
私がいい歳して、そんな女遊びだなんて…。
―『私はこんなおばあちゃんになっても、あなたは若く美しいままだから、モテるでしょう?』と恋人は更に言い。
こんなおばあちゃん、だなんて言わないでくれ。
それに、私だって若いのは見た目だけだ。
話してみたら、見た目にそぐわない老いぼれ具合に違和感しかないさ。
私は、初めて出逢った時の跳ねっ返りで勝ち気な少女も、夜更しをして私みたいな青白い顔をしながらも毎日楽しく過ごしてくれた女性も、…勿論、今の老成した貴女のことも。
いつの時も貴女のことしか見ていないよ。
(少し躊躇いがちに)貴女も…本当に私で良かったのか?
―彼女は躊躇いなく後悔をしていない、と告げる。きっぱりとした彼女の言葉に嬉しくも、申し訳無さが残り。
何故って…?
ほら、私に合わせて流浪の生活を余儀なくされ、立場も私の妹のように振る舞ったり、時には母のように振る舞い、今では私の祖母のフリ、だろう?
公然と恋人と言えない間柄で何十年も貴女のことを束縛してしまった。
―『そんな事はない、あなたを見ていると私もいつまでも若いままで居られる気がしたから』と恋人。
…そんなことはない?
毎晩、夜の時間だけは少女の気持ちになって私の恋人で居られたから?
私が歳を取ることがないから、心はいつまでも少女で居られたから……。
(感じ入るように深く感謝を込めて)そうか、ありがとう。
―苦しそうに咳き込み、体調が悪そうな恋人。
(焦って気遣うよう)大丈夫か?
あぁ、そろそろ医者にも行かないといけない時期だ…
(恋人に服の袖を軽く引かれ)ん?
今のうちにどうしても渡して置きたいものが?
{息を飲み}…ッ!?遺言状じゃないか!!
どうして…。
自分の事は一番自分が分かるから…?
(少し取り乱して)潮時だなんて…そんな言葉、使わないでくれ!
いつかは、別れが来る、そう思っていた。
だが、もう離れがたいくらい貴女と時間を共にしてきたんだ…!
(かなり混乱しながら)あぁ、そうだ、貴女も私とヴァンパイアになればいい。
そうだ、今からでも遅くない。
そうすれば、もっと永く、夜の時間を永遠に…一緒に…
―やんわりと、恋人に否定され
(ハッとして、反省するように)…そう、だよな。
人間として歳を重ねながら、私と居ることを貴女は選んだ。
その何十年もの決断を…今更私の我儘で捻じ曲げのは間違っている。
取り乱して…本当に済まなかった。
遺言状はきちんと読ませていただくよ。
貴女の意志を尊重する。
…また、眠ってしまったの?
ほら、ブランケットをしっかり掛けないとまだ肌寒いから…え?
―静かに彼女が息を引き取った事に気がつく。
(茫然と絞り出すような声で)あ…あぁ…自分のことは、よく分かっているって…。
どうして…どうして…ッ、今なんだよ…。
{嗚咽混じりに}私は貴女の最期に…詫びることばかりしか…っ…出来なかった。
貴女はあんなに感謝と、私との暮らしを楽しげに語ってくれたというのに。
もっと愛を伝えれば良かった。
ずっと、寄り添ってくれてありがとう、と。
化物になってしまった私に、人間らしい生き方をもう一度思い出させてくれた事を。
(絞り出すようなかすかな声で)…申し訳なかった。
でも、愛してる、心から愛しているよ。
{亡き恋人の手の甲にそっと口づけをする}
―しばしの間。恋人からの遺言状を読む。
【SE:手紙を捲る音】
(泣き笑いのような口調で)狡いよ、あなたは。
私が悲しみに浸り、取り乱す間も与えないように、こんな用意周到な遺言状を準備しておくなんて。
―室内にある電話を手に取り、役所へ恋人の死を告げる為電話を掛ける。
【SE:電話のコール音】
(沈んだ声でしかし平静を保ちながら)もしもし…はい、夜明け前に大変申し訳ない。
たった今、私の大切な人が亡くなりました。
はい…間柄ですか…?
(やや躊躇った後、はっきりと)恋人、です。
しかし、私はこの後どうしても行かねばならない所があり葬儀はすべてそちらにお願いしたいのです。
あぁ…段取りや、金銭の工面は亡くなった恋人がすべて準備していた。
…ええ、彼女が遺した遺言状にすべての手筈が書かれている。
…はい、住所は…16番通りの、目の前に大きなプラタナスがある、煉瓦造りの三階建てのフラット。
一階に日用品も扱う新聞屋がある。
…あぁ、ご存知ですか、大家の新聞屋は近所では有名ですからね。
はい、その306号室です。
申し訳ないが、私は今から出なくてはならないので、鍵はそのまま開けておく。
彼女を…どうかよろしくお願いします。
それでは。
【電話を切る】
―窓辺を眺め、息を小さく吐く。もう間もなく朝日が昇りそうな時間だと、改めて気がつく。
(穏やかで晴れやかな口調で)朝日なんて、何十年…いや何百年振りだろうか。
こんな化物を神が否定したとしても、私は必ず貴女に逢いにいく。
もう少しだけ待っていてくれ。
最期の最期で、貴女は本当に人間としての私を取り戻してくれたね。
本当に…ありがとう。
・―…状況、情景の説明(例:彼の部屋のソファに座りながら話している…等)
・()…心情(例:笑いながら…、泣きそうなのを堪えて…等)
・【】…SE、BGM(例:インターホンの鳴る音、雨音…等)
・{}…リップ音、吐息、溜息、喘ぎ声など
――――――――――――――――――――――――――――――
ー夜明け前、一人きりで目覚めているヴァンパイア。
恋人がベッドから、身体を起こし彼へ声を掛ける。
(気遣うように)まだ、夜明け前だよ?
起きてしまったの?
…無理に起き上がらなくていい、身体に障る。
私がそちらに行くから。
ー少し間。恋人の枕元の椅子に腰を掛け
どうしてカーテンを開けっ放しにしているのかって?
…今日は月がとても綺麗だったから。
貴女が眠っている間に眺めていた。
そろそろ夜明けだから…私も眠ろうかと思っていたら、貴女が目覚めたんだ。
―若い頃はよく夜更しをしたことを恋人が楽しげに話す。
(懐かしむように)そうだね、懐かしい。
貴女は私に合わせてよく夜更しをしてくれたね。
夜が明けて、すぐ仕事に行かねばならない時も。
そうか…もうすっかり昔のことなのか。
(思い出して苦笑しながら)ああ、そう言えばそうだ。
毎晩夜更しばかりするものだから、「職場で、青白い顔をしてヴァンパイアみたいっていわれたの」って嬉しそうに報告してくれたね。
最初は笑い話だったけれど、その後、本当に貧血で倒れてしまって…。
その仕事も…私の生活に合わせて、結局、数年で辞めてしまったんだよね。
―『それはそれで、楽しい毎日だった』と告げる恋人。
(ほっとするように)本当に?
そんな日々も楽しかった?
とても楽しそうに仕事の話をしてくれるものだから、私は申し訳なくて…。
それからは、パブやバーで働いたり、昼間に生活出来ない私に合わせくれたね。
時には危ない事にも加担させてしまって…。
―『私こそ、ヴァンパイアになる事を選べなくてごめんなさい』という恋人に
いや。貴女が謝ることなんて何一つない。
…寧ろ、私と同じヴァンパイアになることなく、人間として私に寄り添ってくれると決めた貴女の胆力に、驚きと…とても感謝している。
人間としての人生を謳歌しながら、夜にしか生きられない私と共にこんなに長くの時間を歩んでくれたことに。
―『あなたこそ、どうしてずっと私といてくれたの?他にもいい人が居たんじゃない?』と問う恋人に
私は貴女だったから、一緒に居られたんだよ。
え?血を貰う為だけに、若い愛人でも作ればよかったのにって?
(呆れながら)もう…年長者を揶揄うものではないよ。
私がいい歳して、そんな女遊びだなんて…。
―『私はこんなおばあちゃんになっても、あなたは若く美しいままだから、モテるでしょう?』と恋人は更に言い。
こんなおばあちゃん、だなんて言わないでくれ。
それに、私だって若いのは見た目だけだ。
話してみたら、見た目にそぐわない老いぼれ具合に違和感しかないさ。
私は、初めて出逢った時の跳ねっ返りで勝ち気な少女も、夜更しをして私みたいな青白い顔をしながらも毎日楽しく過ごしてくれた女性も、…勿論、今の老成した貴女のことも。
いつの時も貴女のことしか見ていないよ。
(少し躊躇いがちに)貴女も…本当に私で良かったのか?
―彼女は躊躇いなく後悔をしていない、と告げる。きっぱりとした彼女の言葉に嬉しくも、申し訳無さが残り。
何故って…?
ほら、私に合わせて流浪の生活を余儀なくされ、立場も私の妹のように振る舞ったり、時には母のように振る舞い、今では私の祖母のフリ、だろう?
公然と恋人と言えない間柄で何十年も貴女のことを束縛してしまった。
―『そんな事はない、あなたを見ていると私もいつまでも若いままで居られる気がしたから』と恋人。
…そんなことはない?
毎晩、夜の時間だけは少女の気持ちになって私の恋人で居られたから?
私が歳を取ることがないから、心はいつまでも少女で居られたから……。
(感じ入るように深く感謝を込めて)そうか、ありがとう。
―苦しそうに咳き込み、体調が悪そうな恋人。
(焦って気遣うよう)大丈夫か?
あぁ、そろそろ医者にも行かないといけない時期だ…
(恋人に服の袖を軽く引かれ)ん?
今のうちにどうしても渡して置きたいものが?
{息を飲み}…ッ!?遺言状じゃないか!!
どうして…。
自分の事は一番自分が分かるから…?
(少し取り乱して)潮時だなんて…そんな言葉、使わないでくれ!
いつかは、別れが来る、そう思っていた。
だが、もう離れがたいくらい貴女と時間を共にしてきたんだ…!
(かなり混乱しながら)あぁ、そうだ、貴女も私とヴァンパイアになればいい。
そうだ、今からでも遅くない。
そうすれば、もっと永く、夜の時間を永遠に…一緒に…
―やんわりと、恋人に否定され
(ハッとして、反省するように)…そう、だよな。
人間として歳を重ねながら、私と居ることを貴女は選んだ。
その何十年もの決断を…今更私の我儘で捻じ曲げのは間違っている。
取り乱して…本当に済まなかった。
遺言状はきちんと読ませていただくよ。
貴女の意志を尊重する。
…また、眠ってしまったの?
ほら、ブランケットをしっかり掛けないとまだ肌寒いから…え?
―静かに彼女が息を引き取った事に気がつく。
(茫然と絞り出すような声で)あ…あぁ…自分のことは、よく分かっているって…。
どうして…どうして…ッ、今なんだよ…。
{嗚咽混じりに}私は貴女の最期に…詫びることばかりしか…っ…出来なかった。
貴女はあんなに感謝と、私との暮らしを楽しげに語ってくれたというのに。
もっと愛を伝えれば良かった。
ずっと、寄り添ってくれてありがとう、と。
化物になってしまった私に、人間らしい生き方をもう一度思い出させてくれた事を。
(絞り出すようなかすかな声で)…申し訳なかった。
でも、愛してる、心から愛しているよ。
{亡き恋人の手の甲にそっと口づけをする}
―しばしの間。恋人からの遺言状を読む。
【SE:手紙を捲る音】
(泣き笑いのような口調で)狡いよ、あなたは。
私が悲しみに浸り、取り乱す間も与えないように、こんな用意周到な遺言状を準備しておくなんて。
―室内にある電話を手に取り、役所へ恋人の死を告げる為電話を掛ける。
【SE:電話のコール音】
(沈んだ声でしかし平静を保ちながら)もしもし…はい、夜明け前に大変申し訳ない。
たった今、私の大切な人が亡くなりました。
はい…間柄ですか…?
(やや躊躇った後、はっきりと)恋人、です。
しかし、私はこの後どうしても行かねばならない所があり葬儀はすべてそちらにお願いしたいのです。
あぁ…段取りや、金銭の工面は亡くなった恋人がすべて準備していた。
…ええ、彼女が遺した遺言状にすべての手筈が書かれている。
…はい、住所は…16番通りの、目の前に大きなプラタナスがある、煉瓦造りの三階建てのフラット。
一階に日用品も扱う新聞屋がある。
…あぁ、ご存知ですか、大家の新聞屋は近所では有名ですからね。
はい、その306号室です。
申し訳ないが、私は今から出なくてはならないので、鍵はそのまま開けておく。
彼女を…どうかよろしくお願いします。
それでは。
【電話を切る】
―窓辺を眺め、息を小さく吐く。もう間もなく朝日が昇りそうな時間だと、改めて気がつく。
(穏やかで晴れやかな口調で)朝日なんて、何十年…いや何百年振りだろうか。
こんな化物を神が否定したとしても、私は必ず貴女に逢いにいく。
もう少しだけ待っていてくれ。
最期の最期で、貴女は本当に人間としての私を取り戻してくれたね。
本当に…ありがとう。
クレジット
ライター情報
色々なシチュエーションを書きます。
男性演者向けのものが多いですが、一人称や部分的な変更で女性も演じられるかと思います。
R18シナリオでお探しの場合はpixivで公開しています。
ドーナツがすきです。
よく作中にも出てきます。
男性演者向けのものが多いですが、一人称や部分的な変更で女性も演じられるかと思います。
R18シナリオでお探しの場合はpixivで公開しています。
ドーナツがすきです。
よく作中にも出てきます。
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