キミの家に遊びに来た彼女。
興味本位で、キミは彼女に催眠術をかけようとします。

なに、どうしたの？
催眠術？　うん、勿論知ってるけど…。
私？　うーん、どうだろう。
体験したことないから、かかりやすいとか、かかりにくいとかは分からないかなぁ。

えっ、キミがやってみてくれるの？
うん、私も興味はあるんだ。　早速やってみて？
ちなみに、どんな催眠術なの？

「素直になる催眠術」？
私がかかると、何でも素直に話しちゃうの？
えへへ、ちょっと恥ずかしいな。

うん、…うん。
最初の質問？　うん。
昨日？　昨日の晩ご飯は、カレーを作ったよ。
うーん、実はルーから作るのは面倒だったから、レトルトのやつにしたんだ。

次の質問？　うん。
キミのこと？　どう思ってるか？
それは勿論…

（耳元で）だーいすき。

んふふ。　急に近づかれて、ビックリした？
実はね。　キミの催眠術、私には効かないみたいなんだ。
そう、催眠術にかかったフリをしてたの。　嘘ついて、ごめんね？
だからお詫びにね？　私が、キミに催眠術、かけてあげる。

とは言っても、既に準備は終わってるの。ふふっ。
…あらら、急に頭抱えちゃって。大丈夫？
ほら、これ飲んで？　頭痛薬。

いらないの？
でもこのままだと、もっと頭痛、ひどくなるかもしれないよ？
ほら、ちゃんとお水もあるから。

うふふっ。
さぁ、早く手を出して？
はい、もう錠剤は手に置いたから、そのまま飲んでね。

飲みたくなさそうだね…。
でも、手は止まらないよね…？　少しずつ、少しずつ手が口元に…。
…あぁっ。　口の中に入っちゃった。　うふふっ。
さぁ、お水も飲んじゃおうね…？

飲んだかな？
じゃあ、少し横になろっか…。
膝枕、してあげるね？
夢だったでしょ…？　彼女に膝枕してもらうの。

瞼が重くなってきたかな…？　すごく眠そう。
体調が悪いときは、寝るのが一番だよね…。

身体が重い…？
それはね…、キミの脳と身体が、すこーしずつ分離していってるの。
身体が動かせなくなってきてるのは、その証拠…。
段々頭が、身体を動かすことを放棄してるの。

…大丈夫。少ーしずつ、一緒に壊れていこう？
ちゃんと私も、キミの後を追うから。
二人で壊れちゃえば、もう何も考えなくていいの。

うんうん、ちょっとずつ、頭も重くなってきたよね？
でも、私のことだけはハッキリわかる。
キミが私を大好きなこと、今にも好きで好きで、壊れちゃいそうなこと。

でも、止められない。
壊れたくないけど、壊れちゃう。
少しずつ、少しずつ。　頭のなかの記憶がパラパラと塵のように。
私の記憶以外が、綺麗に消えてっちゃうの。

あらら、そんなに叫んじゃって。
怖くなっちゃった？
大丈夫、だいじょうぶ。　ゆーっくり、じっくりと、今を受け入れて？
今のキミに必要なのは、私。
安心して。　私も、後でキミと一緒になるから。

-----（数時間後）

ふふっ。うふふふふっ。
あれからしばらく経ったけど、言葉もまともに出てこなくなっちゃったね。
やっぱりあのお薬の効果は抜群だなぁ。
「あー」「うー」しか言えなくなってる。　すごく可愛い…。　
部活で活躍するキミも、勉強を頑張るキミもかっこいいけど、
今のキミが、私は一番好きだなぁ。

じゃあ、私もこれ、飲むね？
飲んでしばらくしたら、私の頭も、キミの記憶だけになる。
キミがだーいすきで、キミのことしか考えられなくなる。

私も怖いよ。
これからはもう、キミに「好き」って、言葉で伝えられなくなるんだもの。
でも、私もキミと一緒になりたい。
言葉が出なくなっても、キミと一緒になれるなら。
一緒に壊れてしまえるなら。

んんっ…んくっ…。
あ、はは…。　あはははは…。
飲んじゃった…。　私も、飲んじゃった…。
これで、私も、キミと、同じ…。
ふふっ…。　うふふふふふふふふふふふふふっ。
（以下笑い声）

・台本（ゆるボイ！）
全ては、あなたと一緒に
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・台本制作者
のみやま