たばこを吸うあなたの隣で、静かに佇む彼女。
彼女にとってあなたの存在は…。

吸い終わった？
ん。　じゃあいつもの、お願いね。

…どうしたの？
早く、あなたが吸い終わるの待ってたんだから。

あっ。
…。

どうして火、消したの？
消しちゃったら意味がないのに。

え？　どうして、やめなきゃいけないの…？
あなたが私にくれる、愛の証なのに…。

「これ以上傷つけたくない」…？
どうしてそう思うの？
これは私を傷つける行為じゃないんだよ…？

寧ろ、これはあなたが私に刻んでくれる愛情。
ほら、ちゃんと見て…？

最初は右腕から始まって…。
次に左腕…。
時には脚にも…。

あぁ、そろそろ右腕の痕が消えちゃいそうね…。

こうやって今までもずっと、
あなたの火で、私の肌に愛を刻んできた。

どうして…？　どうして今更、そんなこと言うの…？
もしかして、もう私を好きじゃなくなったの…？

この行為が、私とあなたを繋ぎとめる唯一のものだったのに。

どうして断るの…？

「痛がるところをもう見たくない」…？
何を言ってるの？
この痛みが、苦しみが、私に生きる意味をくれるの。

あなたは私に生きる意味をくれる、神様なの。

神様に見捨てられるのは、嫌…。

お願い…、お願いだから…。
私に、生きる意味を教えて…？

…教えて、くれるの…？
…えへへ。　嬉しい…。

じゃあ、はい。　もう一本。
うん、ライター点けるね…。

どう？　美味しい？
そう、今日ちょうど切らしそうだったから。
コンビニに行って買ってきたの。

店員さん、ちょっと不思議そうな顔してたよ。
私って、たばこ吸うイメージないのかな？

吸い終わった？
うん、じゃあ今度こそ…。
さっき右腕の痕が薄くなってたから、上塗りしてくれる…？

うん、お願い…。

痛ッ…。
くぅっ…。

…。

…はぁ、はぁ…ッ。
……うん、ちゃんと、綺麗に痕できたよ。

今日もありがとう。
私、やっぱりあなたがいないとダメみたい。
これからも、ずっと私のこと愛してね…？

・台本（ゆるボイ！）
そのたばこの火で刻んで。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
のみやま