バレンタイン、毎年妹が作って学校で配る義理チョコ。
持って帰った余りを兄妹で食べるのが習慣でした。
でも、今年はそれだけではないようで…。

（扉を閉じる音）

ふぃー。 やっと帰ってこれたぁ。
ん、お兄帰ってたんだ。 ただいま。

そうそう、部活の片付けに時間かかっちゃってさ〜。
ちょっと疲れちゃった。

あっ、そうだ。 お兄さぁ、
今年も配った義理チョコ余っちゃったんだけど、食べる？

ん。 じゃあ先リビング行ってて。
あたし着替えてくるから。

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お待たせ〜。
今カバンから出すから、ちょっと待ってね。

ん…しょ。
そう、結構余っちゃったんだ〜。

「持ってくるな」って止められたわけじゃないんだけど、
最近は学校がそういうの色々言われるから、って空気がね。

他の子も去年ほど数作んなくなってたし、
あたしも作んのやめちゃおっかなって。

お菓子作るのは好きだし、
準備して配るのも嫌いじゃないんだけどさ。
なんかイベントが1個無くなった感じがして、ちょっと寂しいよね。

そうだね…。 持って帰って、お兄に食べてもらうのも今年が最後かな。
…ふふっ、そうやって残念がってくれるの、お兄くらいだよ。

えーっと、お皿、お皿…これでいっか。
…よし、これで持って帰ったの全部かな。

そういえばお兄は？ 誰かからもらったりしたの？
へぇ…じゃあいつも通り、
ほかの子が配ってる義理チョコもらっただけ、か。

別にお兄、モテないタイプじゃないと思うけどなー。
…ってか、お兄はバレンタインごときで一喜一憂しすぎ。

さ、溶けないうちに早く食べちゃって。
…どう？ 美味しいっしょ？

義理とはいえ、味と見た目はこだわって作ってるもん。
さて、あたしも食べよっと。

そうそう。 今回のはちょっとだけビターなの。
お兄、結構甘党だけど平気？
…ならよかった。 好きなだけ食べちゃっていいからね。

あと、その…
もう一個、お兄に渡したいものがあるんだ。

（冷蔵庫の扉を閉める音）

はい、これ開けてみて。
…そう。 これもあたしが作ったチョコレート。

違うよ。
好きな人なんていないし、渡し損ねたわけでもないから。

これは、お兄のために作ったの。
…来年からは、お兄にだけ作ろうと思って。

お兄、毎年あたしのチョコ「美味しい」って食べてくれるし。
学校に持ってって配るのは楽しいけど、
食べて喜んでくれる人のために作りたいな、って。

…あはは。 勢いで言っちゃったけど、
結構恥ずかしいや…。

…そうかな？
他の兄妹は知らないけど、あたしはお兄のこと好きだし、
嫌だったらそもそもお兄だけのために作ったりしないよ。

えへへ…わかった。
じゃあ来年から、楽しみにしててね？

…うんっ、食べてみて。
そっちはちゃんと、お兄が好きな甘いのにしたんだ。
美味しい？ よかったぁ。

あっそうだ、紅茶淹れよっか。
準備するからちょっと待ってて。

…ん？
…ううん、どういたしまして。
今年もお兄が喜んでくれてよかった。

じゃあ、今年のホワイトデーは期待していいんだよね…？

・台本（ゆるボイ！）
バレンタインはまだ
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・台本制作者
のみやま