あら、ご機嫌よう。この河原でよく会うけど、もしかしてここ君の散歩コース？

あぁそうなの。たしかに見晴らし良いものね、ここ。

人もあまり通らないし、散歩にはうってつけだものね。

お姉さんはここで風景画を描くのって、そうね…そうしようと思ってたんだけど、なんだか筆がのらなくてね。今はなんだか描く気になれないの。

ふふっ、おかしいでしょ。本格的なスケッチブックまで持ってきておいて、描く気がないなんてね。

え？じゃあ僕を描いてみませんかって、君は画力がどんなものかもわからない人間に描くのを頼むの？

お姉さんの絵に興味があります、か。わかった、いいわよ。君の絵を描いてあげる。

じゃあそこに座って。自分のやりやすい姿勢でいいからね。

それでいいの？じゃ、その姿勢から動いちゃダメよ。今から描くからね。

ジッとしてるの結構つらいでしょう？顔が引きつってるわよ。

あはは、その笑顔もちょっと強張ってる。まぁみじろぎするくらいなら構わないけど。

もう少しでできるわ。ええ、自分で言うのもなんだけど、かなり上手く描けてると思う。

この絵が完成するの君も待ち遠しいでしょう？

ん、できたわ。もう動いていいわよって、動けるはずないか。

フフフッ、だってもう、君は私の絵の中にいるんだもの。

やっと君を私のモノにできた。君のその可愛げのある顔がすき。

男の子なのに華奢な腕や脚もすき。そしてパッチリ開いたお目目…

初めて見た時からずっと、君のすべてのパーツを私のモノにしたかった。

ねぇ、絵の中に閉じ込められた気分はどう？

僕をここから出して？ダーメ。君は今日から私のコレクション。

これからこうして動かない君を毎日愛でるの。

お姉さんのコレクションになったこと、誇りに思いなさい。

さて、そろそろ帰りましょうか。外で絵に話しかけてるなんて不審者そのものだし。

帰ったらいっぱいいっぱい、可愛がってあげる…

・台本（ゆるボイ！）
お絵描きお姉さんとの日常
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎