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孤高の住処にて、土蜘蛛は蝶を癒す
written by 暇崎ルア
  • 耳かき
  • 睡眠導入
  • ホラー
  • シリアス
  • 寝かしつけ
  • 切ない
  • ヤンデレ
  • 人外 / モンスター
  • 土蜘蛛
公開日2026年01月11日 17:23 更新日2026年01月11日 17:23
文字数
2450文字(約 8分10秒)
推奨音声形式
バイノーラル
推奨演者性別
男性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
とある村で崇められている土蜘蛛
視聴者役柄
土蜘蛛の生贄にされた村娘
場所
深い森の奥のあばら家
あらすじ
あらすじ
遥か昔、都から隔絶された地にあった一つの村。
村人たちは、村はずれの森に住むと言われるヌシ「ツチグモサマ」を恐れ、数年に一度生贄の娘を差し出す儀式を行っていた。
その村で十六歳を迎えた主人公も、生贄に選ばれ村を出された娘の一人。
村に戻れば、大人たちに追い返されるだけの宿命。帰る場所もなく、森の奥へ向かい……。
これはその一年後の話。
本編
()内 SE、ト書き

注:作中に登場する耳かき棒は、竹製のものを想定。

シーン 森の中の小屋
(SE:強い風の音)
(SE:風で木々が揺らされる音)
(SE:小走りに走る足音が少し続いたあと、止まる)
(SE:小屋の入口であるすだれを捲る音)
(安心したように)帰ってきたか。おかえり
いつもより遅かったから、心配したぞ
寒かっただろ? こっちにきて温まれ
(SE:囲炉裏の火が爆ぜる音)
今回の供え物は、そいつらだな。どれどれ……
(SE:たくさんの物を置く音)
野菜、果物、米……。おう、新しい着物まで
(微笑んで)可愛い絵柄で気に入ったのか。良かったな
ああ、後で着てみせてくれ。お前なら何を着ても似合うと思うがな
(不満そうに)お世辞なんかじゃねえよ。事実を言ってるだけだ
お前は大層別嬪だからなあ
(にやにやしながら)何だ、照れたのか? 頬が林檎のようだぜ
(呆れたように)……わかったよ。わかったから、そう怒るなって
ったく、そんなに興奮したら寝られなくなるぞ
そうだ、お前はもう寝ろ
まあ、俺はもう少し起きてるが
(SE:布団に横たわる音)
おう、おやすみ
……ああ? 眠れなさそう? 
(ため息をついて)だから、言っただろうに
しょうがねえな。いつものあれ、やるか
ちょっとまってろ、準備するから
(SE:糸を出す、シュルシュルという音)
ああ、俺の糸を固めて作る耳かき棒さ
本当は竹製の棒だといいんだがな
まっ、そんな洒落たものは持ってねえから……よしっ、できた
ほらよ、どちらか耳向けろ
(SE:寝返りを打つ音)
よし、いくぞ
(左、耳かき開始)

へえ、お前がここにきて一年も経つのか
律儀に数えてやがったとは、大したもんだ
(感慨深そうに)……そうか、一年か
こんなに長い間、俺のところにいた娘はお前が初めてだ
(左、耳かき継続)

ああ、今までに何人か来たよ。これまでの生贄の娘がな
ここで暮らさせたことなんか、何度もあったが
(悲しそうに)化け物の俺と人間が暮らすのは、難しいことなんだ
どんなに隠したところで、一つ屋根の下にいれば
いつかは、俺の本来の姿を見られちまうんだよ
俺が指から糸を出す姿、とかな
そんなところ見た暁にゃあ、全員もれなく逃げて行ったさ
追いかけようにも、「化け物!」と叫ばれてますます俺から遠ざかるだけ
……さあ、その娘たちはどうなったやら
(重い声で)気の毒だが、考えたくもねえな……
だからお前に俺の本当の姿を見られたときも、終わりだと思ったよ
しかし、お前はちょっと驚いただけで逃げやしなかった
(苦笑して)おまけに「足がたくさんあって便利そう!」とか、ほざきやがって
変な娘だなと思ったよ
そうだな、お前は少し変わってるかもしれねえ。だが、それでいい
(嬉しそうに)その方がこっちだって退屈しないで済むってもんさ
……と、無駄話してたらあっという間だな
ああ? 梵天もやるのか? ……わかった、ちょっと待ってろ
(SE:糸を出す、シュルシュルという音)
もう少し待て。長めの糸を丸めた方が気持ちいい手入れができるんだよ
まったく、俺にこんな糸の使い方をさせられるのはお前ぐらいだ
……よし、できた
ほら、お待ちかねの梵天だぞ
(左、梵天開始)

ほらな、言ったろ? こうした方が肌当たりが良いって
(得意げに)ちゃあんと時間かけた方がいいんだよ
あ? なんで、こういうの得意なのかって?
……何でだろうなあ、年の功ってやつかね
お前とは比べものにならないぐらい長く生きてるからなあ、俺は
子供扱いすんな、って。お前は十分子供だろうよ
今年で十七? はっ、まだまだ赤ん坊じゃねえか
俺にこうやって寝かしつけられてるうちは、赤ん坊だよ
(左、梵天継続)

こんなもんで、いいか
おう、反対な。やってやるから、そう急かすな
(SE:寝返りを打つ音)
じっとしてろよ
(右、耳かき開始)

……そうだな
いつからだったかな。あの村が生贄をささげるようになったのは
お前が生まれるずっと前からなのは確かさ
……俺は別に、求めちゃいなかったんだ
どこのどいつが唆したのか知らねえが、勝手に始まってやがった
俺が人間の姿で「生贄はいらないからやめろ」と言いに行ったこともある
だが、「お許しください」と喚くばかりで話なんか聞いちゃくれねえ
……まったく、勝手な奴らだと思ったよ
……なあ、聞いていいか
もう少し経てば、またお前への供え物を取りに行くんだろう?
森の入口、村の近くにさ
嫌にならないのか? 自分を追い出した奴らの近くに行くのは
……そうか、そんな風には思わないのか
(優しい声で)優しいな、お前は
(言いづらそうに)ならやはり、村に戻りたいと思うこともある、のか?
……ははっ、そうだろうな
いいんだ、謝るな。そう思うに決まってる
……湿っぽい話になっちまったな
(右、耳かき継続)
こっちもそろそろ仕上げるか
(右、梵天開始)

んん? 何だ?
……それは、本当か?
俺とここで暮らすのが幸せだ、って
本当に、それがお前の本心なのか?
(涙ぐんで)——そうか、そうなのか
……ははっ、わかってるよ。お前が嘘をついてるようには見えねえ
(誤魔化すように)そもそも、世辞を言えるような器用なやつじゃねえしな
(右、梵天継続)

(右、梵天終了)
……ふう、ようやく眠ったな
すやすや、気持ちよさそうに寝やがって……
(以下の台詞、右耳に囁くように)
……さっきのお前の言葉、信じるよ
俺と一緒にいるのが幸せだって
(ほの暗く)嘘だとしたっていいさ、関係ねえ
……俺はもう、お前をここから放してやることなんてできねえんだからな
お前は、まだ化け物蜘蛛の巣にかかっただけの蝶々さ。今はまだ、な
(無感情に)だがよ、今からでも逃げようもんなら
……俺の糸で雁字搦めにしてやる
絶対にどこにも飛び立たせはしねえ
それこそ身動き取れねえようにしてやるぜ……ははっ!
(悲しそうに)はあ……
許せ、しょうがねえんだ……
もう俺はお前なしで生きられねえ……
お前の温かさを知っちまったからな…
そうさ、自由にしてやれない代わりに、何でもする
お前が望むなら、あの村を消してやったっていい
(吐き捨てるように)あんな矮小な村、俺なら簡単に滅ぼしてやるからさ
……お前は良くできた娘だから、そんなこと望みやしねえだろうけど
とにかく、ずっとここにいろ……
お前が死ぬまで、愛で続けてやるから……

クレジット
・台本(ゆるボイ!)
孤高の住処にて、土蜘蛛は蝶を癒す
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
暇崎ルア
ライター情報
小説執筆の傍ら、「安心して眠りたい」と言う欲望から主に睡眠導入シチュエーションボイスのフリー台本を書いている台本師です。
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