こら、起きなさい

まったく……休み明けから私の授業で居眠りなんていい度胸してるわね

後で生徒指導室に来なさい
そのボケた頭をシャキッとさせてあげるわ

(生徒指導室)

あぁ、君か……

一応、閉めといてくれ
君が叱られている姿を同級生に見られても良いなら別だが

さてと……

君、生活リズムが乱れてるな……
休み中は何時ごろ寝ていたんだ？

9時？ずいぶん早寝じゃないか、それなら……
朝のって…はぁ……呆れた

つまり今までだったら、授業中がちょうど眠る時間だったってことか……

そんなに夜更かしして、何してたんだ？

友だちとゲームね……
もしかして、隣のクラスのあのアホ3人か？

どうして分かったか？
あいつらも君と同じく、授業中に居眠りをして絶賛説教中だ

あのゴリ…学年主任に説教されているのを見かけてな
まぁ君は、私が指導だから当たりを引いたな

しかし、そんな夜中までゲームといのも味気無いだろう
もうすこし、高校生らしい夏休みを送らなかったのか？

どこかに行って交友関係を広げたり、異性の友だちと恋愛したり……

ないのか、つまらない夏休みだったな

私の？
あのな、教師の夏休みってのは、なんだかんだ仕事だったりするんだよ
とりわけ独身だからって、他の先生の仕事を代わってやったり……(ブツブツ)

つまらないですねって、君と一緒にするな

まぁ、学生時代を振り返っても、そんな大それた事をしてないのに、
何故か色鮮やかに思い出されるんだよな

はぁ……戻りたいな

なんだ？
君も後悔してきたか？

仕方ない……

今日の夜、学校の校庭に来い
校門は開けておいてやる
花火くらいなら用意してやるから、私とで良ければ一緒に夏休みをおかわりしようか

あぁ待っているぞ

あ、それと
他のみんなには内緒だからな

(夜：校庭)

おぉ来たか

あぁ、ちょうど売れ残りの花火があってな

あ、そうだ
分かっていると思うが、あまり騒ぎすぎない事、終った花火はこの水入りバケツにいれること
そして、今日を夏休み最後の思い出にすること、ちゃんと守れるよな？

よし、それじゃ何からやろうか

長いヤツから？
そうだな、私はこの王道なヤツから

(花火に点火)

お、ついた
はぁ、綺麗だな……手持ち花火なんて何年ぶりだろう

君もなのか？
あぁ一緒だな

あ……終わってしまったか
まだまだあるぞ

二刀流って、おい、振り回すな、危ないだろって……あははは、何してるんだ君は

(しばらく花火を楽しんで)

残すは、線香花火だけだな
これが終われば、今日はお開きだな

さて、どっちが長持ちするか勝負するか

私が勝ったら、そうだな……君だけ明日の宿題増やそうか（笑）

君が勝ったらどうしたい？
来年も私と……ふふ、そうだな、勝ったらな

それじゃせーの

(点火)

といっても、のんびり待つだけだな

そうだな、折角だ
人生の先輩から、アドバイスでもしよう

夏休みというのは、無限にあると思うだろ？
でもな、大人になると、二度と味わえないんだ

どんなに魅力的な会社に勤めて、夏休みというものがあったとしても、
君が今体感している夏休みと、大人になった時の夏休みというのは、全くの別物だ

だから、今君が味わえる夏休みというのを精一杯楽しんでほしい

まだ休みがあるからなんて思っても、気づいたら後悔しても手に入らない、大切な時間に感じてしまうんだ

これが、後悔している私からのアドバイスだよ

……ふ、私の勝ちだな
花火、消えているぞ

それじゃ、今日はおしまいだな
私は明日、君に渡す分の宿題を作成するから、君は気を付けて帰りなさい

ん？どうした？

(校庭の奥へ走る)

おい、そんな暗い方へ行ったら危ないぞ

(先生のところへ戻る)

いったい何をしていたんだ？
ほら、もう遅いから――

パァン‼
(打ち上げ花火が上がる)

え、どうして？

君が持ってきたのか？

でも…どうして……？

先生に後悔してほしくないから
今日の思い出を色鮮やかに思い出せるようにって……

……後悔しているというのは、言い訳だったな、
ありがとう、気づかせてくれて

……この勝負は君の勝ちだな
あぁ、だって君の花火は消えていなかったからな

それじゃ、私とで良ければ来年も色鮮やかな思い出を作ろうか

あぁ、約束だ

そのついでに約束だ
明日からは元の生活リズムに戻すように

え～、じゃない！

ちゃんと守れたら、来年と言わずまた思い出をつくろうじゃないか

何ニヤニヤしているんだ
それじゃ、私は後片付けをするから、君はもう帰りなさい

あぁ、また明日、学校で

・台本（ゆるボイ！）
先生との、おかわり夏休み～2人っきりの花火大会～
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
こん