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「僕は君に嘘をつき続ける」/『私はあなたに騙され続ける』
written by
  • シリアス
  • 病院
  • 幼なじみ
  • 百合
  • 切ない
公開日2021年09月15日 22:34 更新日2022年01月09日 10:48
文字数
2269文字(約 7分34秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
「僕」と『私』一人二役
視聴者役柄
指定なし
場所
病室
あらすじ
ステージⅣの末期がん患者の「僕」は、毎日お見舞い来てくれる『私』に【嘘】をつき続けます。回復の見込みはなく、「僕」はそれを受け入れています。
『私』は「僕」の【嘘】を知りながら騙され続けます。二人の最後の時を惜しむように、静かに【嘘】の世界を彩るように話を続けます。

優しい嘘とはなんなのでしょうね…?


1人2役
「 」僕 20代女性(もしくは男性)
『 』私 「僕」の幼馴染で恋人
[ ]状況説明やSE

2021月9月15日改稿
本編
[ノックの音]
「やあ、今日も来てくれたの?」
『当然でしょ。あなたの顔を見ないと一日が終わらないんだから』
「毎日忙しいんだから、無理して来なくても良いんだよ?」
『気にしないでって言ってるじゃない。私が来たくて来てるんだから。
それより、今日の調子はどう?』

「今日?うん、すごく調子が良いんだ!
いつもよりご飯も食べられたし、散歩も行けたんだよ!顔色もずっといいでしょ?」
『本当ね、いつもよりずっと顔色が良いわ』
「へっへーん♬でしょう?
これなら退院も近いかもねー!

君は? 君はどんな一日だったの?」

『私のは大した事なかったわよ?
それでも知りたい?』
「もちろん知りたいよ!
だって大好きな君のことだもん。当たり前でしょ?
それに、外の世界の事は何でも知りたいよ。いつ退院しても良いようにしなきゃ。でしょ?」
『[笑い声]
そっか。いつ退院しても良いように、準備しなきゃいけないもんね』

「そうだよ!僕の退院準備なんだからね!」
『[からかうように]はいはい』
「もー!またそうやって子供扱いするー!」
『してないわよ[笑う]
んーー、そうねぇ、あ!今日は会社恒例の、月初めの全体朝礼があったの。
朝から社長の長い話があってうんざりしたわ。』
「会社に行っても長い朝礼話に付き合わなきゃいけないのマジ無理w」

『まあね。これでも社長は人情派だからまだマシなのよ?
こんな時代だからって、社員や社員の家族の健康まで心配してくれてるんだもの』
「へぇ!今どきドラマでもいないくらいの人なんだ…」

『そう。これで話がもうちょっと短いと嬉しいんだけどね』[笑う]
「あははっ……」[あくびをする]

『ねぇ、眠い?』
「うん?」
『眠そうな顔してる』
「うん…君が来るといつも眠くなっちゃうの。ごめんね」
『気にしないで寝て?』
「もっと君と話したいのに…」
『またいつでも話せるよ』
「うん…
ねぇ、手を握って…」
『良いよ…
わ!冷たいね!
仕方ないなー、ふふっ
あっためてあげるから、安心してねんねして?』
「子供扱いしないでよー
……でも、ありがと
安心する………」
[寝息の音]


[side『私』の独白]
[小声で]
ぉーぃ…寝ちゃったかな?

相変わらずあなたはウソが下手ね…
あなたが私に心配をかけたくないからってウソをついてるの知ってるって…きっとあなたも気付いてるよね?

いつから、嘘の話しかしなくなっちゃったんだろう

いつから、私たち…本音を見せなくなったんだろう…

ねぇ?
最初は本当のことを言ってたよね?

お互いを傷つけないように、優しい嘘が始まったのも分かってる

でも…それでも寂しくなるのはどうして?
私を想う気持ちがあるから嘘をついてるのは分かってる
それでも虚しくなるのはどうして?

こんなに虚しい気持ちになるなら、嘘なんてつかなきゃ良かった…

あなたの気持ちが見えないよ
今、どんな気持ちでいるの?
あなたのお母さんから聞いたよ
いつどうなってもおかしくないって…

それなのに…どうしてそんな顔で笑えるの?
私には言えないの?
「怖いよ」って…「死にたくない」って…私にこそ弱音を言って困らせて欲しいよ……

優しい嘘も、やっぱりウソだよ
あなたの手をこうして温めても、こんなにもあなたが遠くに感じる

無理に笑わなくて良いの
泣いて、怒って、八つ当たりして欲しいよ…

もっと本当のあなたを見せてよ…
私ってそんなに信用ない?

こんなにも大好きなのに…
大好きだから、騙され続けてあげるんだからね!



[side「僕」の独白]
[起きたばかり]
はぁー、やっぱり寝ちゃった…
毎日君が来てくれると、安心して眠くなっちゃうの、なんとかしたいなぁ
夜に眠れてないのバレちゃってるよね、きっと

あ、涙の跡…
最近は僕が寝た後に君が眠っちゃって、涙の跡が残ってる事が増えちゃった
心配かけちゃってるな…

僕のこと、どこまで知ってるんだろう…
もう、いつ死ぬか分からないから、できるだけそばにいたい
だから…君が毎日顔を見せてくれるの、本当はすごく嬉しいんだ

本当は僕のことなんか忘れてって言ってあげられたら良いのに、君を手放せない僕を許してね

せめて笑えるように、良い事を話そうとして嘘をついた
ちょっと体調が良くなったとか、リハビリがうまくいったとか…
君が喜んでくれる嘘をたくさん言った

いつからだろう…
君の笑顔が曇り始めたのは…

いつからだろう…
本当の気持ちを伝えられなくなったのは…

嘘に嘘を重ねてきた
今じゃどれが嘘で本当なのか分からないくらい、いっぱい嘘をついた

ねぇ…抗がん剤治療は苦しいよ
髪もみんな抜けちゃった…
あちこち手術して切り取ったけど、ちっとも良くならない

ねぇ…?
僕が死んだら君はどんな顔をするの?

死にたくないよ…
別れたくないよ…
痛いし苦しいし、少しごはんを食べただけで吐いてしまう、この弱い体が憎いよ!

君と一緒にいたいよ
これからもずっと一緒にいて、二人で生きていけるって思ってたのに…

せめて弱音を吐かない、強い僕を覚えていて欲しいな
僕が消えた後も…君の心に僕の記憶が残ってくれたらいい

だから、これからも騙され続けてよ
騙されてるフリをしてよ…

君の思い出に残る僕が、笑顔で笑ってる僕でいたいんだ…

酷いやつだよ…ほんとうに…


[ここから二人の会話に切り替わる]

「ねぇ…
ねぇ……ほら、起きてー!」
『んんー?あっ!私寝ちゃってた?』
「可愛い寝顔だったけど、もう面会時間が終わっちゃうよ」
『やっば!
起こしてくれてありがと!』
「疲れてるみたいだから、早く帰って寝てね」
『うん、そうする!
また明日ね!』
「うん!また明日ね!」



[side「私」の独白]
「明日」は来なかった

もっと、本当の事を話せば良かった
もっと…本音を言い合っていればよかった
もっといっぱい、いっぱい……

[嗚咽を漏らす]

ばか…
独りで逝かないでよ……ばか……
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
「僕は君に嘘をつき続ける」/『私はあなたに騙され続ける』
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者

ライター情報
シチュエーションボイスの台本、主に百合専で書いていますが、色んなジャンルに取り組んで参ります。
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