ヤッホ、お兄さん。遊びに来たよ。

ん？難しい顔してるけど、どうしたの？

あ…もしかしてあれかな？好きな子ができたとか？

お兄さんもいい歳だしね。恋の一つや二つくらい……

え、違う？じゃあ何で悩んでるの？

今夜の晩御飯を鍋かシチュー、どっちにすればいいかって……

なんだ、くだらない。そんなことさっさと決めちゃいなよ。時間の無駄だよ？

ほら、そんなのコイントスで決めればいいじゃん。

表が出たら鍋、裏が出たらシチューってことでいいね？

そんなことで決められるかって、晩御飯なんてどっちでも変わらないよ。

二択で迷ってるならコイントスで決めるのが一番。

悩んでる時間って人生で一番無駄なんだよ。知ってた？

オケ。じゃあ…よっと！

さて、裏と表、どっちかな？

うん、裏だね。じゃ、今日のお兄さんの晩御飯はシチューってことで。

買い物、行くんでしょ？僕も付き合ってあげる。

うん、暇だよ。じゃなきゃ、付き合うなんて言い出さないし。

学校と塾の課題？あんなの、もう終わったよ。

時間をかけるほどの物でもないしね。

たしかに僕の通ってる学校は難関校って呼ばれてるし、塾のコースもハイレベルコースだけど…

拍子抜けだったよ。難しくもなんともないし、むしろ授業が退屈で仕方ない。

ま、そんなことはいいからさ。買い物行くんでしょ？

ほら、行こ。時間は有限なんだから、やることさっさとやらないともったいないよ？



結構買ったね。これだけあれば、一週間くらいは家に引きこもってても大丈夫じゃないかな？

ん？いや、礼には及ばないよ。僕が好きで手伝っただけだからね。

それにしても…お兄さんも買い物がだいぶ上手くなったじゃないか。

そう。安くて良いものを目利きできるようになったってこと。

まぁね。僕がお兄さんに色々教えてあげたからね。

例えば、人参は鮮やかな濃いオレンジ色をしていて、皮が滑らかでツヤがあるものを選べ、とかね。

この僕にそこまで教えられて、成長しない方がおかしいよ。

どこでそんなこと習ったんだって、何言ってるの？

僕は天才だからね。

その程度のことが分からなくてどうするのさ。

それより、買ったものは適当に仕分けしておこうか？

わかった。えっと、これは冷凍物だから冷凍庫にしまって、と……



お兄さん。買ったもの、全部しまっておいたけど……って何してるの？

あぁ、エクセルの操作方法がわからない？

なるほど。その部分をそう変えたいわけだ。

えっと、ここをこうして…はい完了。これでいいでしょ？

うん、どういたしまして。

まぁ僕にかかればこれくらい余裕だけどね。

あぁ、もちろん。今の仕事のデータでしょ？

企業秘密は守らないと、だね。

安心して。今のは何も見なかったことにするからさ。

じゃ、僕はそろそろ帰ろうかな。

親がそろそろうるさく言ってきそうだしね。

ふふ、ありがとう。

ならお言葉に甘えて送ってもらおうかな。



車道側を歩くなんてお兄さん、レディーと歩く時の心得をわかってるじゃないか。

ふふふ、わかってるよ。

お兄さんのことだから、意図的にやったわけじゃなくて、自然とやってたんでしょ？

僕、お兄さんのそういうところが好きだな。

人の助言は素直に聞いてくれるし、自然と気遣いもできるし。

僕みたいな年下の、しかも未成年の女子からの助言を聞いてくれる成人男性なんてそうそういないからね。

まぁなんていうか、男の人のちっぽけなプライドってやつだろうね。

助言されるのが負けたみたいに感じる人っているでしょ？

自分のやってることが正しいから口出しするなってタイプの人。

僕の実感では、いい歳した男の人に多いと思うんだよね。

お兄さんはそれとは真逆のタイプだから。

そう。さっきも言った通り、お兄さんは僕みたいな年下の言うことも素直に聞いてくれる。

お兄さんのそういう、我の少ないとこが僕はいいと思うな。

え？………な、何を言ってるのかな、お兄さんは？

こんな賢くて可愛い子に構ってもらえるなんて俺は幸せ者だなって…褒めても何も出ないよ。

もしかして口説いてるのかい？

まさかお兄さんが年下好きだなんて、知らなかったよ。

へ、へー………仮にも女の子である僕にむかって、そういうことを平気で口走るんだ、お兄さんって。

そーいうことばっか言ってるとさ…本気にしちゃう子も出てくるから気をつけようね………僕みたいに、さ。

(キス)

家もう近くだし、この辺でいいよ。

ありがとう、送ってくれて。

またね、お兄さん♪

・台本（ゆるボイ！）
天才肌のボクっ娘JKに色々手伝ってもらった挙句、好感度爆上がりした
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎