おー、おかえりー。

遅かったじゃん。どこで油売ってたの？

いや、関係あるし。幼馴染で彼女だから。

はぁ？あたしら、恋人じゃん。

どっかで頭打って、記憶リセットされた？

はぁ…まだ認めないんだ。

自分があたしの彼氏だってこと。

…なにそれ、ムカつく。

まだアイドルの追っかけやってんの？

いい加減、やめといたら？

いくらアンタが向こうを好きでも、向こうはアンタのこと、せいぜい一ファンくらいにしか思ってないよ？

そりゃ、スクールアイドルだし、同世代で若干身近に感じるのも分かるけどさ…

いや、布教すんな。鼻息荒いし、きもい。

あたし、アイドルとか興味ねーから。

いや、これは暇つぶしに読んでるだけ。

アンタ、こーいうの好きなんだーって思って。

はぁ…このドルオタが…

…あ、そうだ。いいこと思いついた。

あたし、もう帰るわ。そんじゃーね。

うん、ちょっと色々準備しなくちゃいけないから。




(インターホン)

開けてよ。いるんでしょ？

…開けなかったら、アンタの親に連絡するから。

あたしとおばさんの仲がいいこと、知ってるよね？

この状況まんま報告したら、おばさん、どっちの味方するだろーね？

(ドアが開く)

…ったく、最初から素直に開ければいいのに。

で、どう？この格好？

まんま、アンタの好きなスクールアイドルのみかにゃんでしょ？

ふふっ、偽者？まぁなんとでも言いなさい。

(咳払い)

いつも応援ありがとう！君、いつもライブで最前列にいてくれる子だよね？知ってる！

グッズも買ってくれてたよね？お礼に握手してあげる！

(握手)

…どう？完璧じゃない？

声も相当寄せて、アンタの大好きなアイドルになりきってあげたけど？

(咳払い)

ねぇ、家に上げて…？お願い…

あははっ！チョロっ！

あー、でもあたしのコス(※コスプレ)が完璧すぎるから仕方ないかぁ。

いーや♪ 出てってあげない♪

えー？推しのアイドルが家に上がりたいって言ってるのに、上げてくれないんだ〜…ぐすん。

ありがとー！好きになりそう！

じゃ、お邪魔しまーす♪



あー、今度から君ん家行く時はこの格好で行くかー。

え？いいじゃん、別に。女の子は見た目でしょ？

こっち、チラチラ見てんのバレバレだから。めっちゃ興味津々じゃん。

えー？どうやってって…まぁ色々工夫して？

アンタの部屋にある雑誌とかDVDとかちょろっと借りパクして、衣装やら仕草やら研究してた。

コスでなりきりって意外と大変だね。

もうちょっと早く来るつもりだったんだけど、声真似の練習までしてたら、思いのほか時間かかっちゃった。

ま、あたし何でもできるし？これくらい余裕だから。

本物には及ばない…たしかにね。

どんなに似せようが結局、あたしはあたしでしかないし。

でもどんな格好でもいいから、あたしはアンタと一緒にいたかった。

彼女だって、認めてほしかった。

アンタに好かれるためならあたし、どんな格好でもするし。

アンタはドルオタでもいいから…たまにはあたしのこと、ちゃんと見てよ…

……はい、隙あり。

(キス)

キス、しちゃったね。どうする？

ほら、顔そらすな。こっち見ろ。

あたしはアンタのこと、好きだよ。昔からずっと。

もっとアンタと触れ合いたいって、思うから…

(手錠セット)

ホントに隙だらけだね。余裕で手錠かけられたじゃん。

みかにゃんのコス、マジ最強。

君のこと、めっちゃ骨抜きにできるし。

おばさん帰ってくるまで、このままイチャイチャしてよっか。

君も大好きな「みかにゃん」がそばにいて幸せでしょ？

あはは、きょどりすぎ。

否定してるけど、口調めっちゃ弱ってるよ？

ほら、もっかいキス、しよ？

(キス)

今はあたしのこと、好きでなくてもいい。

でもいつかは絶対、振り向いてもらうから。

それこそ、アイドルなんて眼中になくなるくらい。

アンタのこと、これからじーっくり攻略してやるから、覚悟しなさい。

・台本（ゆるボイ！）
彼女を名乗る幼馴染が、俺の好きなスクールアイドルのコスプレをして家に乗り込んできた
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎