団長、失礼します。

はい。今度の遠征のメンバー表です。ご確認よろしくお願いします。

特に修正はございませんか？

かしこまりました。では、該当のメンバーにはわたしから通達を出しておきます。

それから今度の公式試合ですが…本当にわたしでよろしいのですか？

いえ、団長の決闘相手に選んでいただいたことは光栄に思っています。

ただ、ほかにふさわしい人がいるのではないかと…

…いえ。団長がそのように仰るのであれば、わたしも異論はありません。

団長と剣を交えるのはわたしも楽しみです。

はい。当日はよろしくお願いします。

それはそうと…団長。最近はお疲れですか？

いえ、どことなく疲れているように見受けられたので…

そう、ですか…あまりご無理はなさらず。

貴方は騎士団のトップなんですから。万が一、倒れられたら国の一大事です。

はい…差し出がましいことを言って申し訳ございません。

では、わたしはこれにて下がらせていただきます。お疲れ様でした。




団長、いよいよですね。

はい。わたしもこの日を楽しみにしておりました。

団長と剣を交わすのは久しぶりです。

わたしが入団したときの腕試し以来でしょうか？

そうですね。それくらいの期間は空いてしまいましたね。

改めて本日はよろしくお願いします。

はい。お互いの力を全力でぶつけ合いましょう。

それではわたしはここで一旦失礼します。

次は会場でお会いしましょう。





団長…気が付かれましたか？

はい。わたしとの試合の後に気絶してしまって、こうして医務室に運ばれた次第です。

お身体に支障はありませんか？どこか痛むところとか…

そうですか…ならよいのですが…

団長…つかぬことをお伺いしますが、今日は本調子ではありませんでしたか？

はい。最近の疲労した様子といい、どことなくお身体の調子がよくなさそうに見えたので。

…妙ですね。いつもはモノをはっきりと仰る団長が、そのように誤魔化すような言い方をするなど…

何かやましいことを隠していませんか？

いえ。人間誰しも言いたくないことがあるのは分かります。

しかし、それが実務に影響を及ぼしてしまうというのなら話は別です。

実務への支障の原因は取り除かねばなりません。違いますか？

なら仰ってください。ここにはわたし以外誰もおりませんので。

…どうしても仰ってはくれないのですね。わかりました。

ならば、わたしの口から申し上げます。

団長。貴方は複数の女性と肉体関係を持っていますね？

それも団長の本意ではない、肉体関係を。

誰と関係を持ったか、おおよその目星はついております。

団長とわたしとの勝負を台無しにしてくれたツケは、彼女たちにしっかり払ってもらいます。

しかし、それだけではまだ足りません。

今後、同じことが起きないようにするためにはどうすればいいと思いますか？

正解を申し上げます。結婚して身を固めればいいのです。

はい。正妻をもって、自分は誰のモノか明確にすればよろしいかと。

ご心配なく。恐れながら、わたしが貴方の正妻になりますので。

いえ。おかしなことではございません。

わたしも異性として貴方を好いておりますし。

何よりわたしは剣聖です。わたしの実力をもってすれば、御身を守ることも可能です。

本日の試合でそれは実感していただけたでしょう？

仮に万全の状態であったとしても、貴方はわたしに勝てなかったでしょう。

いえ、わたしは事実を申し上げているだけです。

団長とて薄々お分かりのはずです。

軍団を指揮する能力と剣を振るう能力は別物だと。

前者は貴方の方が格段に優れていますが、後者ではわたしに軍配が上がります。

ですので、これからはわたしが妻となって、貴方をお守り致します。どうかご安心を。

言っておきますが、団長に拒否権はありませんよ。

えぇ。敗者は勝者の言うことを聞く。当然のことでしょう？

その証を今、お見せします。失礼しますね…

(キス)

わたしの気持ち、お分かりいただけましたか？

貴方に近づく不埒な輩はわたしが斬って捨てます。たとえ、それが同じ騎士団の仲間だったとしても。

不束者ですが、これからよろしくお願いします。旦那さま。

・台本（ゆるボイ！）
クールで生真面目な部下の剣聖に試合でボロ負けしたら、結婚を約束させられた
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎