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寂しがり屋の少女は虚影の魔女となって大切な人を影の中に閉じ込める
written by 松平蒼太郎
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公開日2022年04月20日 13:34 更新日2022年04月20日 13:34
文字数
1919文字(約 6分24秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
少女→魔女
視聴者役柄
魔法研究者
場所
研究者の家
あらすじ
両親を失い、魔法の研究をしている男に拾われた少女の物語。
少女は研究に没頭する男に愛想が尽きたのか、男の元を出て行ったかに思われたが…
本編
あ、お兄さん…た、ただいま…

(抱きしめられる)

ひゃっ!お、お兄さん、苦しいよ…

ご、ごめんね、心配かけて…

大丈夫、だよ…わたし、元気だから…

うん…怪我も病気もしてない。全然平気…

むしろお兄さんの方が顔色悪いよ…

やっぱりまだ魔法の研究続けてたんだ…

魔法の研究がすべて…そっか、お兄さんは相変わらずだ。

(肩を掴まれる)

へっ?な、なに?

あ……バレちゃった?

そう…わたし、魔女になった。

でもね、聞いて?わたし、何の考えもなしに魔女になったんじゃないの。

…お兄さんを助けるため、だよ。

お兄さんはいつも魔法の研究ばかりしてて…自分の疲労なんて省みずに、ずっと…

お兄さんの言う「魔法が世界の真理を解き明かす」っていうのはよく分からないけど…

でもその魔法のせいでお兄さん、こんなに痩せ細ってる。

食べるのも寝るのもおろそかにして、ずっと研究に打ち込んでて…

本当に死ぬまでやめないんだって、分かったから。

でもわたしはお兄さんに死んでほしくない。

ずっと生きててほしいって、思ったから…!

だから、わたしも魔法を使えるようになって、お兄さんを止めようと思った。

そう…家を出て行ったのはそのため。

お兄さんのこと、嫌いになって家出したんじゃないよ…

お兄さんの読んでる書物は難し過ぎて、分かんなかったから…

誰かすごい魔法使いに弟子入りして、魔法を教えてもらおうって考えてた。

うん…会えたよ。すごい魔法使いに。

ううん、魔法使いっていうか…あの人は魔女。

その人に全部話したの。わたしの目的、お兄さんのこと。

ううん、弟子入りはさせてもらえなかった。

その代わり、添い寝してもらった。

あの人の身体…すごくあったかかった。

抱きしめてもらいながら寝て…起きたら魔女になってた。

その人はもう隣にいなかったんだけどね…

でもわたしの全部を受け止めてくれて、力まで与えてくれて…ホントに感謝してる。

ねぇ、お兄さん…魔法の研究なんてもうやめて?

そんな辛いことやめて、のんびり暮らそうよ。ね?

(頭を撫でられる)

謝らないでよ…謝るくらいならやめてってば…!

日に日にやつれていくお兄さんなんて、これ以上見たくない…!わたしの気持ちも少しは考えてよ…!

…無駄だよ。お兄さんの魔法は、わたしには通用しない。

優しいね、お兄さんは。眠りの魔法でそっと眠らせようとしてくるなんて。

でもわたしは魔女だから…そんな初心者向けの魔法、昔みたいに通じないんだよ?

もっと強力な魔法でわたしの動きを封じていればよかったのに…バカなお兄さん。

次はわたしの番…絶対、逃がさないから。





気がついた?お兄さん…

ここは影の中。わたしが魔法で作り出した、特別な空間。

そう、真っ暗。完全な暗闇。これが魔女としての、わたしの力。

ターゲットをなんでも自分の影の中に取り込むことができる…らしい。

うん…帰ってくる前にいっぱい試した。

人も動物も町も、なんでも取り込める。すごいでしょ?

取り込んだものは…ごめん、元には戻せないみたい。だからそのまま。

そう、だよ…わたし、世界で一番怖い魔女になっちゃった。

でも魔法を使うのはお兄さんで最後。

だって…死にそうなお兄さんを止めるために、魔法を手に入れたんだから。

起き上がらないで。わたしの膝でずっと寝てればいい。

…無理だよ。ここで魔法は使えない。

あと、この空間は時間の流れも存在しない。あるのは暗闇だけ。

ここにいれば、お兄さんもわたしも一生歳をとらない。疲れもしない。

そう。光なんて一切入ってこない、ただの暗闇だから。

わたしとお兄さんだけの、特別な空間…

お兄さん…わたしとずっとここで暮らそ?

何もしなくていい。わたしがずっとそばにいてあげる。

お兄さんはわたしだけを見て、わたしのことだけ考えて。

もう無理しなくていい。癒してほしいなら、わたしが癒してあげる。

(頭を撫でる)

よしよし…お兄さんは偉い。とっても頑張った。凄い。

そうだ…お兄さんに教えてあげる。魔法がどうしてこの世に存在してるのか…

魔法はね…大好きな人の力になるために存在してるんだよ。

わたしに魔法をくれた魔女も言ってた。

「大好きな人を救いたかったから、魔女になったんだ」って。

多分それがすべてなんだよ、きっと…

わたしも同じ。魔女になるべくしてなったんだと思う。

わたしね、お兄さんのこと好きだよ。

うん。わたしを拾ってくれて、大切に育ててくれたお兄さんのことが大好き。

パパもママも死んで、一人になったわたしに温もりを与えてくれたから…

わたし、もう一人になりたくない。寂しいのは嫌だよ…

ごめんね、わがまま言って。お兄さんが死んでもやり遂げたかったことがあるの、分かってたのに…

うん…それでもお兄さんに生きてて欲しかった。

わたしと一緒にずっといて欲しかった。

だから、だからね…わたしのために生きて。お兄さん。

わたしもお兄さんのために生きるから…

うん…ずっと二人きり。この影の中でずっと…ね?
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
寂しがり屋の少女は虚影の魔女となって大切な人を影の中に閉じ込める
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎
ライター情報
マツダイラソウタロウ
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