彼女とのデートの約束で、駅前に向かった貴方だったが、なぜか周りには全く人がいなくて…？

おーい…何ボーッとしてんの？人の話聞いてる？

(ため息)

やっぱ聞いてなかった…彼女の話くらい聞けっつの。

明日のデートのこと。ちゃんとお金用意しといてねって話。

そ。最低5〜6万は用意しといてよ。色々買うんだから。

待ち合わせは…駅前に9時集合で。

1分でも遅れたら承知しないから。それじゃあね。






君、どーしたの？こんなところでウロウロして？

へっ？何言ってるの？ていうか、急にどうかした？

ふーん…周りに人が全くいないの、気になる？

うんうん…なるほどね。あたしとのデートの待ち合わせ場所に向かって、気がついたら周りに人がいなくなってたと。

たしかに。ここ駅前だし、人が全くいないってのもおかしいよね。

でもね…この世界ではこれが普通なの。人なんて滅多に見つからない。

キスしてくれたら、教えてあげる。ここがどこなのか…

怒んないでよ。あたし、全然ふざけてないから。

ほら…ここのこと、知りたいんでしょ？それともあたし以外の人に聞く？

(キスされる)

…よくできました。さすが彼氏くん。

ここはね、彼氏くんの住んでる世界の反対側にある世界。

まぁ要するに、彼氏くんが普段過ごしてる世界を表世界だとすれば、ここは裏世界ってところかな？

そして見ての通り、この裏世界には人はほとんど存在しない。

いることはいるよ。会いに行くことはオススメしないけど。

あたしみたいに人畜無害な人ばかりじゃないからねー。

ん？知りたい？君がここに迷い込んだ理由。

知らない方がいいと思うけどなー…君にとってはすご〜く不都合な真実だし。

もぅ…仕方ないなぁ。じゃあ君の匂い、クンカクンカさせて？

(抱きついて匂いを嗅ぐ)

はー…いい匂い。彼氏くんはやっぱり彼氏くんだぁ…

ふふっ…君がここにいるのはあたしのせい。あたしがこの世界に君を呼んだんだよ。

ふふっ…本当に戻りたい？表世界のあたしが浮気をしてるとしても？

本当だよ…ほら、あたしのスマホ。その動画、再生してみて？

…ね？他の男と仲睦まじそうにしてる。手まで握ってさぁ…

あっ、そっちの動画は開かない方が…！

あーあ…見ちゃった。浮気相手との濃厚なイチャラブシーン。

全部嘘っぱちだって思う？最近の彼女の言動に不審なところはなかった？

ね？思い当たることはいくつもあるでしょ？

この動画サイトね、表世界に住む人間の映像を配信してるんだよ。すごいでしょ？

あたしの名前を検索したら…ほら。こんなにたくさん出てくる。

浮気映像だけじゃなくて、私生活とか交友関係とか、たくさん出てくるよ。

ま、見なくていいよね、こんなの。

だってこれから君はここでずっと暮らすんだから。

うん。表の世界には返してあげないって言ってるの。

(掴みかかられる)

ねぇ…本当に表の世界に帰りたい？

帰っても君は表のあたしには愛されないよ？

だって表のあたしは君のことを都合のいいコマとしか思ってないから。

ほら…この動画でも言ってる。

「あいつはあたし専用のATMだ」って。

今までのデート代、全部君持ちだったでしょ？

君は薄々気づいてたんだよ。気づいてないフリをしてただけで。

でもだからこそ、この世界であたしが生まれた。

彼女に愛されたいっていう、君の願望が具現化したのが、このあたし。

この裏世界ね、表世界では決して実現されない人の願いを具現化させるところみたい。

だから、あんな化け物だって普通に徘徊してるよ。

ほら、隠れて。見つかったら襲われちゃうよ。

そう。あれも表世界の誰かの願望が具現化したもの。なんでもありだよね、この世界。

まぁ全部が全部反映されるみたいじゃないみたいだけど。

ここにいるあたしだって、たまたま生まれたみたいなもんだし。

ふふっ、やっと分かった？あたしは文字通り、君を愛するために生まれたんだよ。

(再び抱きしめる)

好き…君のこと、愛してる。

表のあたしには決してできなかったこと、やらせてあげる。

…ここであたしを襲ってみる？

いいよ…君になら何されても。

あたしは君を愛するための存在だから…何されても嫌いにはならない。

だから…現実なんて捨てて、あたしと一生ここで暮らそ？

ここなら衣食住も自由に確保できるし、働かなくても生きていける。

人は少ないし、変な化け物も徘徊してるけど…大丈夫、あたしがそばにいるから。

もうデートでわざわざ待ち合わせする必要もない。でしょ？

うん…いいよ。もう一回キス、しようか…

(キス)

愛してる…ずっと、ずーっと好きでいてあげるから…ね？

・台本（ゆるボイ！）
裏世界で出会った彼女は、俺の理想を全て体現していた
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎