(ＳＥ : ドアが開いて閉まる)

お兄ちゃーん！ただいまー！

お兄ちゃん、頭なでなでしてー。

えへへ。

お兄ちゃんの頭なでなですきー。

あのね！あのね！

今日の晩ごはんはね！

お兄ちゃんの好きなハンバーグだよ！

お兄ちゃんは昔から好きだよね。

あれ？

お兄ちゃん、どうしたの？

急に黙っちゃって。

(兄に軽く突き飛ばされる)
きゃっ！

いった！

急に何するのお兄ちゃん！

芝居はやめろって……

何言ってるのかさっぱりだよ！

それより謝ってよ！

いくらお兄ちゃんでも許さないよ！

えっ？

香水？

な、何の事……？

さっきから何言ってるの？

妹は香水なんて付けない？

………………。

ヒヒヒヒ……。

わたしの匂いが移っちゃったのかなぁ～。

この身体に香水なんて付けてないのに。

まあいいや。

せ～いか～い。

わたしはキミの妹ちゃんではありませ～ん。

愛しの幼なじみちゃんで～す。

香水の匂いでバレるとか予想外。

しかも、抱きついてすぐに。

キミってもしかしてぇ～。

相当なシスコン？

声も姿も喋り方も完璧だったはずなのに。

匂いでバレるなんて思わなかったよ。

ん？

妹ちゃん？

ここに居るじゃない。

わたしが妹ちゃんだよ。

ヒヒヒ……。

妹ちゃんの全部……わたしが貰っちゃった。

キミとの素敵な思い出ばかりで、妹ちゃんが羨ましいよぉ～。

えっ？

何でこんな事するのかって？

わたしだって、妹ちゃんになろうなんて思ってなかったよ。

どこから話せばいいかな～。

えっと～。

キミはわたしの告白を断ったよね。

わたしには、キミが全てだった。

告白を断られた瞬間、わたしの人生は終わったの。

もう、どうなってもいいやって思った。

その日、わたしは学校の屋上から飛び降りたの。

だって、キミと一緒に居られない人生なんて要らないもの。

でも、わたしのキミへの想いは相当強かったみたい。

キミの大切な存在になりたいって強く願ったら、気付けばこの身体になってた。

何故こうなったかなんて理由はどうだっていい。

キミの近くに居られる。

キミに触れられる。

キミと同じ血が身体に流れてる。

そう考えただけで、興奮で気が狂いそうだったよ。

わたしは、キミと居られるならそれでいい。

血が繋がっているなら尚更ね。

もう、わたしが誰なのか。

どんな姿だったのか。

名前や姿は思い出せないけど、他の記憶はあるし、わたしはキミが狂おしいほど好き。

名前や姿なんてどうでもいい。

キミへの想いさえ残っていれば、わたしはそれでいい。

(少しあけて)
はぁ～？

妹を返せ？

気付いたらこうなってたんだから、返し方なんて分からないよ～。

あれれ？

どうしたの？

頭なんか押さえて。

頭痛にでも襲われた？

はっ……！

もしかして……キミの記憶も変化してる？

あっはは！

さいっこうじゃん！

なにこれなにこれなにこれ！！

わたしがキミの妹になれるの？

まさか世界がわたしに合わせてくれるなんて！

わたしが自分の名前や姿を思い出せないのも、存在自体が消えているから？

私の存在が、キミの妹として上書きされてるのかな？

それとも、妹ちゃんと同化してる？

でも、わたしとしての記憶はある。

思い出せないのは名前と姿だけ……。

あっはははははははは！！

まあ、そんな事はどうでもいっかぁ～！

ヒヒヒ……

やったぁ！！

キミの大切な存在になれるんだ！

キミはわたしのお兄ちゃんになるんだね！

お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん！

良い響き……。

蕩(とろ)けちゃいそう……。

あっはは！

これからはずぅ～っと一緒に居られるね！

(少しあけて。妹に戻して)
お兄ちゃん、急に頭押さえてどうしたの？

大丈夫？

何か変な夢を見たって？

お兄ちゃんの幼なじみが、わたしになってた？

そんな事ある訳ないじゃん。

ホントに変な夢だね。

お兄ちゃんに幼なじみなんて居ないじゃん。

もしかしてぇ～、幼なじみが欲しくて、そんな夢見たんじゃないの？

こんな可愛い妹が居るのに～。

えへへ～。

あっ！

ママが呼んでるよ！

晩ごはん出来たって！

早くいこ！

お兄ちゃん！

(幼なじみに戻して)
これからは、わたしがキミの妹だからね……。

大好きだよ……おに～ちゃん……。

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレな幼なじみになった妹
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
如月英梨