ある日、気づいたら知らない場所にいたあなた。
周りを見渡せば、見慣れない景色、見慣れない服を着た人たち。どうやってここに来たのか、昨晩、眠りについた後の記憶がない。思い出そうとすると激しい頭痛に襲われた。思わず蹲った時、声をかけられた。無表情に、けれど少しだけ心配そうにこちらを見る女の子に案内され、彼女の家に招き入れられた。

※SEは必須ではありません。


(家に入る)
[足音]
そこに横になってください。
何をするつもりだ、って…そんなに警戒しなくても。



…はぁ。(ため息)
あなたがあまりにもつらそうなので、少しでも楽にしてさしあげようとしているのです。



頭が痛いのでしょう？

そのままでいても良くはならないので、早くそこに仰向けになってください。




[横になる音]
ふぅ、それでは、始めます。
まずはこの、軽く濡らした布で…

[タオルが耳に触れる音]


あら、冷たかったでしょうか？
そうですね…少し、お待ちを。


…これなら、どうでしょう。
あったかいですか？
[タオルで耳を拭く音]


今のは何か、ですか？
ええ、魔法です。

魔法で少しだけ、温めました。




ふむ、やはりあなたは、こことは違う世界、それも…魔法のない世界から迷い込んだ方のようですね。

ええ、聞いたことがあります。
ある日突然、こちらの世界に連れて来られてしまう人がいる、と。

実際にお会いしたのは、初めてですが。



見慣れない服装に珍しい髪色、もしかしてと思いお連れしましたが、間違いではなかったようですね。






ん、少しほぐれたようですので…次は布ではなく、手を使いますね。



これは、私の故郷で作られている薬です。
薬といっても、ほんの少し、マナの流れを整える効能があるだけですが。


[オイルを手に馴染ませる音]
こちらの世界で、子供がマナ暴走を引き起こした時などに使うものですよ。





それでは、触りますね。
少しずつ、頭痛がやわらいでいくと思いますので、じっとしていてください。


(オイルマッサージ開始)
ゆーっくり、馴染ませるように…




マナ、ですか？
そうですね…詳しく説明しても、魔法の概念のない世界にいたあなたには難しいと思いますが…
この世界に溢れている不可視の力…といいますか。


簡単に言うと、魔法を使うために必要な力、ですね。
この世界では、魔力の源と言われています。



私たちは、生まれた時からマナを充分に含んだ空気を吸い、水を飲み、食物を摂取して育ちます。

けれどあなたの世界にはそれがない。



あなたの痛みの原因は、今まで体に触れることのなかったマナが、急激に体に取り込まれたことによるものです。





こうして、耳の周りを…上から下に流すように揉むと…
気持ちいい、ですか？

痛みが少し薄れてきたようですね。




まだ不自然なマナの流れを感じますので、もう少し念入りに…


この、耳の下側のやわらかい部分を、揉みほぐすと……
ふむ、よどみがなくなりましたね。




痛みはどうですか？

だいぶ楽になった？
それはよかった。


それでは薬を拭き取りますので、もう少しそのままでいてください。

[オイルを拭き取る音]


ん…よし、っと。
これでしばらくは大丈夫だと思います。
(マッサージ終了)



もう、体を起こしてもいいですよ？
[起き上がる音]




さて、あなたのこれからのことですが……これも何かの縁ですし、しばらくはこの家で過ごしてください。

少しずつ体がこの世界に馴染んでくると思いますので、それまでは私が面倒を見ましょう。



…不安そうな顔をしていますね。
気持ちはわかりますが、必要以上に心が不安定になると、マナが乱れる原因になります。

私が、あなたが元いた世界に戻る方法を調べてみますから。





方法が見つかるまで、あなたはここで私の作る食事を食べ、私の言う通りに生活をすれば良いのです。

え？
もちろん、あなたを元の世界に帰すつもりはありますよ？



けれどもし、あなたがこの世界に残りたいと思った時は……
ふふ、どうでしょう。


それはその時に…ね？

・台本（ゆるボイ！）
異世界で出会った女の子に耳マッサージをしてもらった
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ミフジ