見習いバーテンダーの彼女にお酒の豆知識を語ってもらいながらカクテルを振る舞ってもらうお話。

あっ、おかえり～待ってたよ～
もう酔ってるって？えへへ～きみが帰ってくるまで自分で作って飲んでた。

ほとんどが失敗作だったけどね～。
うまく色が混ざらなくて汚い色になったり、ステアリングに時間かけすぎて炭酸が完全に抜けちゃったり…
まだまだ一人前のバーテンダーには程遠いな～。

ね、また練習台になってよ。私はもうお腹がたぷたぷで飲めないからさ。
いいの？よっしゃ、なんでもかかってこいや～。

マタドール？最初っからテキーラ選ぶなんてチャレンジャーだねぇ。
おっけ。じゃあ作るね？
えっと、テキーラが2…パイナップルジュースが3…ライムジュースが1の割合で…

(カラカラと氷が鳴る音)

ほい！マタドール一丁！
居酒屋みたいに言うな？いいじゃん家なんだし、堅っ苦しいこと言わずにさぁ。

えーここでマタドールについての豆知識を一つ。
マタドールというのはスペイン語で闘牛士を表す言葉なのは知ってる人も多いと思います。
ただ闘牛士の中でもマタドールと呼ばれるのは正闘牛士という全体の一割にも満たない選ばれた者らしいです。
ちなみに闘牛の時に赤い布で牛を興奮させるイメージがありますが、牛は赤色に反応するわけでなくひらひらした動きに興奮するらしいです。

さて、そんな闘牛士の名前を冠したこのカクテル、発祥はどこでしょう？
もちろんスペイン？ちっちっち、正解はメキシコです！
当時メキシコはスペインに統治されていて、そこでも闘牛が愛されていたそうですね。

ちなみに使われているテキーラの発祥もメキシコ付近で、リュウゼツランという植物からつくられます。
別名アガベともいわれるものですね。樹液ははちみつよりも甘いらしくて、最近ではアガベシロップとして流行ってますね。

ふぅ、ちゃんと説明できた～。ん？そう、マスターから教えてもらったの。
あの渋い声からこんな話聞けたら酔いも早く回っちゃうよね～。
ああいう風になりたいな～って思って私も勉強頑張ってるの。
そんなうんちくより技術磨けって話だけど…

ん？おかわり？いいよ！次は何にする？
ピニャコラーダ…？え…えっとなんだっけそれ…
ちょ、ちょっと待ってて！調べるから！
ぴにゃこらーだ…ぴにゃこらーだ…
あっ、あった！え～っと…
ホワイトラムとココナッツミルクが30mlずつ、パイナップルジュース80ml…
君パイナップルジュース好きだね(笑)
よし、これと氷をシェイカーに入れて…

(シェイカーを振るカチャカチャ音)

よし！あとはこれを砕いた氷を入れたグラスに注いで…うん！うまくできた！
はい！こちらピニャコラーダになります。

え？豆知識？知らないよそんなの～。
何でもいいから。って…
う～ん、じゃあラム酒の豆知識を…

え～ラム酒と聞いて海賊のイメージを持たれる方は多いのではないでしょうか。
なぜそんなイメージがあるのかといいますと、まず海の上では飲み水が傷みやすいということが関わってきます。
そのため海賊たちは傷みにくい酒を船に積んで、傷んだ水に混ぜて飲んで味をごまかしていたそうです。
しかし当時割って飲むような強い酒、蒸留酒はとても高価な物でした。ウォッカやジン、ウイスキーなどですね。
そんな中海賊が目を付けたのが安いラム酒だったわけです。

では同じ蒸留酒であるはずのラム酒が安く手に入ったのかというと、その原料です。
ラム酒の原料はサトウキビ。当時は砂糖をヨーロッパに輸出するために奴隷労働で大量生産されていました。
そのサトウキビから黒糖を作ったあとの搾りかすである糖蜜と呼ばれるものから作られます。
まぁもともとは廃棄物として捨てていた糖蜜から作るので当然安く作れます。
まぁ安い分適当に作っていたので品質は悪く、味としてはひどいものだったそうですが。
それをごまかすためにさまざまなカクテルが生まれたともいわれています。

さて、このラム酒、見つかった島ではキルデビルとも呼ばれていました。
日本風に言うと悪魔ころしですね。おにころしという日本酒もありますし。
そう呼ばれるほどまぁ悪酔いするお酒なわけでして、その宴会はそれはもうひどいものだったそうです。
それをみた西洋人はある地域で「大暴れ」を意味する「Rumbllion」(ランブリオン)の頭を取ってラムと呼ぶようになりました。
まぁこれはあくまで諸説あるうちの一つなんですけどね。

え～そんな悪いイメージが由来になっていますが、今は品質も良くなって、風味もよくておいしいラム酒が飲めるようになりました、という話。

こんなものかな？ふふん、どうだ～すごいだろ～！自分なりに色々調べたんだよ～？
え？途中なんどもメモ帳をチラチラしてた？
あ、あはは、バレてたか～。だってしょうがないじゃん！覚えること山積みで大変なんだから～
ちょっとくらい甘く見てよ～。
バーのお客さんにもそうするのか。って？うっ、そうですね。もっと精進します。

ところで、次は何にする？え？もういい？
そっか、眠くなっちゃったか。もう遅いもんね。
私の練習に付き合わせちゃってごめんね？
うん。じゃあ先に寝てて？わたしはお酒片づけとくから。

あ、待って。その前におやすみのチュー、させて？
ちゅうううう…
ふふ、カクテルの味がする…よかった、美味しく作れたみたいで。
ん。もう行っていいよ。私も洗い物したらすぐ行くから。
は～い、おやすみ～。

・台本（ゆるボイ！）
見習いバーテンダー彼女は習ったばかりのお酒の知識を語りながら僕を練習台にする。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ろべ