保健室の先生は、優しくて包容力のあるお姉さん、ではなく、めんどくさがりで気だるげな人だった…

※SEは必須ではありません。

[扉のノック音]

どうぞー。

[扉の開閉音(できれば引き戸)]

…はぁ。(ため息)
また来たの？

いや、振り返らなくても足音でわかるから。
それに、お昼前のこんな時間に、保健室の扉を勢いよく開けるのなんて、君くらいでしょ。


[イスの向きを変える音]

んーで？
一応聞くけど。

怪我ですかー病気ですかー。
サボりですかー。

あー、はいはい、サボりね。
ここ、屋上じゃなくて保健室だってわかってる？

ん？や、別に屋上ならサボっていいってわけじゃないけど。
でもなんかさ、サボりといえば屋上、みたいなイメージあるじゃん。

なんでこんなとこ気に入っちゃったかねぇ。

日当たり悪いし、薬品くさいし、健全な子が通う場所でもないでしょうに。


ま、適当に休んでてもいいけど、私書類仕事あるし相手できないから。
気が済んだら教室戻りなよー？


(少し間をあける)
いや、だる…
めっちゃ話しかけてくるじゃん。

仕事するって言ったの聞こえなかった？

いつも真面目に仕事してないのに、とか言わない。
これでもやるべきことは、ちゃんとやってんの。


で、なんだっけ？
最近幼馴染と距離ができた、だっけ？
そんなの私に言われてもなぁ…

仲が良かったのに、最近は避けられてて？
なんだか思い詰めてる？

思い詰めてる人見て、自分も思い詰めてたらキリなくない？

私さぁ、養護教諭(ようごきょうゆ)であってカウンセラーじゃないのよ。
そこのポスター見てみ？

カウンセラー来校日って書いてあるの、見える？
毎週木曜日に来てるから、そういうのはそこで相談しな。

人間関係のどうのこうのなんて、めんどくさくて聞いてらんないの。
こっちのHP(えいちぴー)が削られるだけなんだから。


…あーもう、そんな顔されたら罪悪感がやばいんですけど。
わかったわかった。

聞くだけ、ね。
アドバイスとかはほんと、できないから。
それでもいいなら、はい、どうぞー。


(少し間をあける)
(悩みを聞いているイメージで相槌を打ってもよい)

…えーと、ちょっと待った。
今、妹みたいに思ってる、って言った？

君の幼馴染、女の子だったの？

はい、じゃなくて。
初めて聞いたんだけど。

普通に男の子だと思って話聞いてたわ…

…となると、さすがに私でも理由がわかっちゃうな。
むしろなんで気づかないの？


んー…あー…いや、これは私の口から言っていいことじゃないから。

そのうちなんとかなるでしょ。
そ、時間が解決してくれる、ってやつ。

君が無理にどうにかしようとしても、多分どうにもなんないやつだから、それ。

様子見しな、様子見。


ぃ、ぁ、これはアドバイスとかじゃないし。
こら、嬉しそうな顔しない。

はぁー…もう、調子くるうんだよなぁ、君。


とーにーかーく！
約束通り、話は聞きました。
この話はこれで終わり。
おーけー？

ん、素直でよろしい。


それじゃ、そろそろ教室戻りな？
あんまりサボってばっかだと、マジでいつか後悔するよ。

ほら、立ち上がってまわれ右。
はーい、お疲れ様でしたぁ。
またのお越しをー。


[扉の開閉音(できれば引き戸)]
(以降、独り言)

あー…ほんっとだるいな…
幼馴染まで排除しなきゃいけないとか、聞いてないんですけど。

ちまちま手回すのもめんどくさくなってきたし、いい加減私に堕ちてくれればいいのに。

あとちょっと、って気はするんだけどなー…


ま、時間はまだまだあるし、焦らずゆっくりいくしかないか。

ふふっ、君の視界に私だけがうつる日が、待ち遠しくてたまんないよ…

・台本（ゆるボイ！）
めんどくさがりなはずの保健室の先生は何故か僕をめんどくさがらない
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ミフジ