とある名家のお嬢様であるアナタ、明日は名家の御曹司と結婚。従者として仕えていた幼なじみとは好き同士だが身分の違いにより恋仲にはなれず…の話。
読み手は男女どちらでも構いません。

ー

(SE:扉をノックする音)

お嬢様、失礼致します
そろそろ就寝のお時間でございますので、ベッドへお入りになってください
もう少し…？
いけません、お嬢様
明日は大事な挙式が控えているではありませんか
それにこの寒空、そんなに窓をお開けになられては風邪を引いてしまいますよ？

(SE:窓を閉める音)

さ、ベッドへ行きましょう
お嬢様…？
…まだ寝たくない、ですか？
はぁ…仕方ないですね
それじゃあ少しお茶でもお入れしますから、お待ちください

(SE:ティーセットのカチャカチャ音)

…寝る前ですから、お砂糖は入れませんからね？
まぁハーブティーですので、あまりお砂糖は合わないかもしれませんが
…はい？なんでしょうか？
違うものが飲みたい、ですか…
あまりカフェインが含まれたものはオススメできませんので、種類は限られてしまいますが…いかがいたしましょう？

昔、私と一緒に飲んでたものが飲みたい…？
…もしかして、ホットミルクのことですか？

かしこまりました
では、少々お待ち下さい
今お作りして参りますので

(SE:扉を閉める音)
(SE:扉のノック音)

お嬢様、失礼致します
ホットミルク、出来上がりましたよ
…はいどうぞ
お熱くなってますので、気を付けてくださいね

おいしいですか？
よかったです

…なんだか、昔を思い出しますね
お嬢様がまだ小さい頃は、私もご学友として仲良くさせて頂いていたものです
あの頃はまだ、こうした関係ではありませんでしたから…
でも、こうして従者としてお嬢様にお仕えすることができて…私は幸せですよ
…まぁ、その
明日はこうしてゆっくりお話できる機会もないと思いますので…先に言わせてください

…ご結婚、おめでとうございます

お嬢様のドレス姿、きっとさぞお綺麗でしょう
お相手の方も名家のご子息ですし、文武両道、性格もとてもお優しく…お嬢様のことを大切に思われてるようで、なによりでございます

あの、先程から黙ったままですが…
なにか私、お気に障るようなことを仰ってしまいましたでしょうか？
…違う？
あぁ…明日の挙式、緊張なさってるんですよね
気が回らず…申し訳ありませんでした
私はそろそろ失礼致しますね…
それではお嬢様
飲んだカップは後ほど回収致しますので、飲み終わりましたらそのまま置いておいて結構ですから
…おやすみなさいませ

…お嬢様？
裾を掴まれますと、その…
お部屋から出られないのですが…

…えっ、あの
今、なんて…？

私が、好き…ですか
いけませんお嬢様…お戯れが過ぎます
間違っても私のようなものにそんなお言葉…
誰かに聞かれでもしたら…もうお傍にはいられないかもしれないんですよ？

…以前、私がお嬢様に言ったことがある…？
あっ、それはあの…
確かに言いましたけど…
まだ幼い頃の話ではありませんか
覚えてますよ、だって私は…
あ、いえ…なんでもありません

とにかく、私とお嬢様では身分が違います
それに明日の挙式はお嬢様だけの問題ではないんですよ？
お相手の父君がご主人様のご友人である以上…簡単に破談にすることはできません
ご理解ください…お嬢様

私は、それでいいのか？ですか…

…私だって、本当は嫌ですよ
嫌に決まってるじゃないですか
初めて好きになった方が…好きでもない御相手と…

…約束、したのに
大きくなったら、結婚しようって
私だって、ずっとアナタが好きでしたよ
こんなこと、思っちゃいけないはずなのに…
こんな関係じゃなかったら…今すぐにでも連れ出したい
でも…すみません
私には、出来ないんです

その変わり、といってはなんですが…
アナタのお傍に、ずっとお仕えすることはできます
例えアナタがまた別の方と結ばれたとしても
私は、ずっとお傍で支えたいです
アナタと生涯共に…
形は違えど、私はアナタをずっと想っていますから
…どうか、これからもお傍に置いてください

…条件、ですか
なんでしょう？
あまり無理なお願いはご遠慮したいのですが…

2つ条件…？
2人のときは敬語禁止…
まぁ、それくらいでしたらなんとか…
あと1つは…

…えっ？
申し訳ありません…聞き間違えていたらアレなんですけど…
キス、と仰いました…？
い、いけませんそのような行為！

あ、すみませんつい声が…
とにかくダメです…！
嫌なわけじゃないですけど…もしバレたら…
…え？
条件を呑まなければ…クビ？
えぇ…そんな無茶苦茶な…

はぁ…分かった、分かりましたよ
ただし、本当に2人っきりのときだけですからね？

…はい？
え？い、今ですか？
確かに今は2人きりですが…
いきなりは、その…心の準備が…
申し訳ありません
…今日のところは、ハグで…お許しください

あ、敬語…忘れてた
…うん、ごめん
じゃあもう寝る時間だから、おやすみのハグね

はい、ぎゅー…
…どう、かな？
そりゃ…ドキドキするに決まってるじゃん
ずっと好きだった人と…こうしてハグしてるなんて
なんか夢、見てるみたい
絶対こういうことできないって、思ってたから…
凄い嬉しい…ありがとう

…はい、おしまい
これ以上はちょっと、色々ヤバいから…ごめん
じゃあまた、明日
綺麗なドレス姿が見れるの、楽しみにしてるよ

…うん、私も
誰よりも、アナタを愛しています

良い夢が見られますように
おやすみなさいませ



fin

・台本（ゆるボイ！）
お嬢様と幼なじみの従者
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
レオン