とある一国の領主に仕えていた忍びの男は、極秘の書状を領主からこっそり奪ったクノイチを追いかける。彼女と戦闘になり、あと一歩まで追い詰めるものの、最終的には取り逃がしてしまう。その際に彼女はいつか男を迎えに行くと言い残して去っていった。数年後、真夜中に男の枕元に例の彼女が現れ、男を自分の旦那にすると言い出して…？

あら…お侍様。わたくしに
何か御用で？


書状…？一体何のことを
おっしゃられているのですか？


いえいえ、そんな…
わたくし、見ての通り
一介の旅芸人、女役者にございます。


領主様の、しかも他国とのやりとりを記した
書状など奪ってわたくしめに何の得が
ありましょう？


(手裏剣を投げつけられる)


あら…いきなりそのような
物騒な物を投げつけるのは
いささか無礼だと思いますよ？


ふふふ…まぁでもバレてしまっては
仕方ありませんね。


はい。いかにもわたくし、
隣国の間者にございます。


先ほどの宴では、わたくしがお酒をお注ぎして領主様にしこたま飲んでいただきました。


はい。その隙に領主様の懐に入っていたこれ、
こっそり頂戴いたしました。


領主様ったら、わたくしの注いだ冷えたお酒が
よっぽどお気に召されたようで…少々酔いつぶれておいででしたね。ふふふ…


そんな邪険になさらず。
そのようにおっしゃる貴方様も侍ではなく、
わたくしと同じ忍びでしょう？


類は友を呼ぶといいますか…
やはりお互い同業者であることは
身のこなしを見ていれば分かる、
ということですね。


いえいえ。この書状は
御館様に渡さねばなりませんので。
貴方様に返すわけには参りません。


ここで見て見ぬふりを
していただければ、
わたくしも無闇に
貴方様を傷つけずに
済むのですが…


左様でございますか。
では、致し方ありませんね。


貴方様を退けてから
この書状をお館様へ
渡すと致しましょう。
どうかお覚悟を。


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はぁはぁ…
ふふっ、あはっ、あはは…！


ここまで真剣に命のやり取りを
したのは久しぶりですね…


貴方様の忍びとしての技量、
感服致しました。


そしてわたくし相手に一歩も
引かないその胆力…とても
男らしゅうございます。


この場は一旦退かせていただきます。


ですが…覚えておいてください。
わたくし、いつか必ず貴方様を
迎えに参りますので。


それではごきげんよう。
わたくしが会いに伺うまで
お身体、大事にしてくださいね。


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こんばんは…お久しゅうございますね。


シーっ…今は草木も眠る丑三つ時ですよ？
大声を出すものではありません。


前に言ったでしょう？
いつか必ず貴方様を
お迎えに参りますと。


さぁ、わたくしと共に
来てください。そして
わたくしの旦那様と
なってください。


ふふっ、そのようなこと
関係ございません。


わたくしが貴方様を夫と
見定めたのです。


つまりこれはわたくしから
貴方様に対する愛情表現というわけです。


貴方様にはそれを受け取って
いただきます。何が何でも。


無駄ですよ…もう貴方様は
身体を自由に動かすことはできません。


はい。お身体、とっても冷えてるでしょう？


貴方様の四肢はすでに氷漬け…
これが何を意味するか、お分かりになります？


えぇ、その通り。
わたくしは物の怪、雪女にございます。


この浮世にて、忍びとして
密かに活動しておりましたのは
貴方様のような優れた殿方を見出すため。


山に籠っていても出会いは
ございませんので…下山して
人としての生を謳歌しておりました。


ですがあの日、貴方様という
優れた殿方に出会えた。これを
運命と呼ばずしてなんと呼びましょう？


これから貴方様を故郷の山に
お持ち帰りいたしますが…よろしいですね？


あぁ、このままただ
一方的にお持ち帰りされるのは
本意ではありませんか？


では、夜が明ける前に
わたくしと夜戦いたしましょうか。


はい。無論、男女が共に交わる
という意味での夜戦にございます。


わたくしの女としての魅力を
そのお身体で知っていただければ
貴方様も納得してくれるでしょう？


冷えた身体ではございますが…
なにとぞよろしゅうお願いします。
旦那様？ふふふっ♪

・台本（ゆるボイ！）
クノイチに身をやつしていた雪女に夜戦を持ちかけられる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎