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愛憎一重
written by 水谷 翡翠
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  • 切ない
  • ひすいの台本
  • 和風
公開日2022年12月25日 11:56 更新日2023年01月09日 23:14
文字数
629文字(約 2分6秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
2 人
演者役柄
殿様と女中
視聴者役柄
指定なし
場所
江戸時代の城の縁側
あらすじ
心中できない男と女だけが逝ってしまう心中ごっこ話。
拙作の【沈丁花】が前日譚になっていますが、知らなくても演じることができます。


・黄水仙の花言葉「報われぬ恋」「貴方を待つ」
・心中する時に赤い紐で双方を結ぶ。首→身分違いの本気の恋が多い。手首→郭の女が苦界から脱するための心中が多い。
・贈られた綿衣は正室予定の姫からの贈り物。それまでは女中が縫っていた。
・「三千世界の鴉を殺して、主と朝寝がしてみたい」身分の違いで朝寝はしたことがない。夜が明ける前に女中が床を抜け出していた。

☆殿→近いうちに政略結婚で正室をとるため立場上心中できない。それでも本気で女を愛して正室をとるつもりはなかった。女を介錯するつもりだった。

★女中→側室に入り他の女と結ばれる男を見たくない。本気になられるくらいなら遊び女のように扱って欲しいと思っていた。影腹(切腹しているのを勘付かれないよう晒しで傷口を抑える)を切っていた。
本編
★庭に咲く黄水仙(きずいせん)を見ればそういえばアレにも毒があったなどと…今更か。
布で繋がれた右手の先、貴方様の貌(ぼう)が白く見えるのは、月明かりが明るすぎるからでしょうか。


★「手を、握ってくださいますか」
☆「勿論(もちろん)」

★緋色(ひいろ)で結わえた左手を包むように握ってくれた武骨(ぶこつな右手はやはり燃えるように熱い。

☆「お前の掌(てのひら)は冷たすぎる」
★「左様(さよう)で」


☆つれなく聞こえる音ごとぐいと抱き寄せた痩身(そうしん)は寒さ以外で震えていた。

☆「共にいれば寒くない」
★「…それでは暫(しば)し殿を凍(こご)えさせることになります」
☆「……そうだな。酷い女だ…」


★どちらが酷(ひど)いものか。こんな私を欲深い生き物に変えたのは貴方様なのに。


☆「…なにか欲しいものはないのか?」
★「……なにも。殿のぬくもりだけで私は果報者(かほうもの)にございます故(ゆえ)」
☆「…っ!…欲のない奴だ」


☆いつだってなにも強請(ねだ)りはしないお前に甘えている。夜明(よあ)けは遠い。
それまで冷(ひ)えるなら室に入ってしまおうかと腕の中を覗(のぞ)けば……


☆「………本当に、酷(ひど)い女だ…」
☆日が出づる頃に俺の手で送るはずだった腕の中の命は、既(すで)に冷たくなっていた。
いつもより緋(あか)い帯はお前の血を吸って重くなっているだろう。それでも抱けばいつもより軽く感じる身。嗚呼、そうか。三千世界の鴉(からす)を殺してもお前のぬくもりは戻ってこないのかと。

☆この想い以外、何も遺さないのか。

☆「……彼岸(ひがん)の際(きわ)で待っていてくれとは言わない。いつでも某を呪い殺せ…」
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
愛憎一重
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
水谷 翡翠
ライター情報
和物を書くことが好きです。
もともとはnanaで書いていましたが、他媒体でも読んでもらえるように一部をこちらに掲載いたします。主に90秒前後で読める台本や台詞が多いです。
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・各台本の一人称の変更はお好きにしていただいて構いません。
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