周りから羨ましがられるほどの理想的な彼女をもつあなた。けれど、二人っきりになると彼女の素顔が顕になるようで…

※SEは必須ではありません。

[雑踏の音]

あ、いたいたー！
遅くなっちゃってごめんね？

…えーと、お友達？
邪魔しちゃったかな？

ほんと？よかったぁ。

まだお話あるなら、どこかで時間つぶしてこよっか？
いいの？

ん、じゃあ帰ろ。
ふふ、デート楽しみっ。


(友達と別れて歩き始める)
んー？
なにー？

だって久しぶりのデートだよ？
テンションもあがっちゃうでしょー。


…しっ！
(小声)
もう普通に話していいよ、とか言わないの。

いくら２人きりでも、どこで誰が見てるかわかんないんだから。


(声の音量戻す)
ま、わかるよ？
久しぶりのデート、って言ってもおうちデートだし？
最近お出かけしてないもんね。


でもさ、今度の記念日に一緒に旅行行くための節約なんだし、我慢してくーださいっ。
ん、えらいえらーい。


はい、君のおうちに到着ぅ。
お邪魔しまーす。

[玄関扉の開閉音]


(ため息)
…つかれた。
ほっぺた筋肉痛になりそ。

んー？
服がシワになる？

…いい、別に。
どうせ洗濯するし。


君もここ、早く座って。

はぁー…落ち着く。
やっぱおうちがいちばーん…
大学からも近いし、君んちさいこーう…


…ね、さっきのなに、だれ。
知らない子いた。

ゼミの後輩？
へー…


んや、君の交友関係に口出しするつもりはないよ。
けど、私の知らないところで私の知らない子と仲良くなるのは、なんかやだ。
てか無理。

…だってなんか、キラキラしてた。
大学生活満喫（まんきつ）してます！みたいな。

私はこれからさ、就活（しゅうかつ）始まって、君と会える時間も減って。
たまに会えてもきっと、ストレスで当たっちゃうし。
不安しかないってのに。

あの子たちはその間（あいだ）、君と楽しい時間を共有できるわけでしょ。

いいなー。

…なんで私のほうが年上なんだろ。


ん？
別になんもないよ。
なんとなくそう思っただけ。


外では理想の彼女、完璧な恋人！みたいに言われてるけどさ。

裏ではこうやってウジウジしてる自分が、ちょっとダサいな、って。


…まぁ、私が自分からやり始めたことだけど。

それはほら、敵に付け入る隙（すき）を与えないためにさ…必要なんだもん。

敵だよ敵。
君に近づく女は全部敵。

なんなら男の子も敵。
距離が近い。
肩組んでるのとか見ると、ちょっとモヤモヤする…


でもそういうの見せないように、笑顔貼り付けてにこにこしてんの。
上手く説明できないけどさ、この笑顔は戦闘服（せんとうふく）と同じなわけ、私にとっては。

ほら、にこー。
ど？かわいい？


あー…いや、うん、ありがと。
ぼーっとしてる時の顔のほうがいいとか言うの、君くらいだよ。

そもそもそんな気の抜けた顔、君以外に見せたこともないけど。


…あーあ。
このままずっと、君と二人っきりならいいのに。
なーんにも頑張らないで、ありのままの私で。

あ゛ー…やだやだ。
本当にもう何もしたくない。

家でごろごろしてたい。
君の隣で、ただふやけてたい。


…ごめん。
さっきなんもないって言ったけど。
ほんとはちょっと滅入（めい）ってる。


なんかさー…まだ就活始めてもいないのに、教授も友達もみんな、「あなたならすぐ決まるでしょ」って。
わかんないじゃんそんなの。

初めてすることばっかで、上手くいくかどうかなんてわかんないし、こっちは不安だらけなのに。

なんでそんな無責任なこと言えるの、って思ったらさ、何もかも嫌になってきちゃった。


ダメだね、私。
余裕（よゆう）ゼロ。

…呆れた？


…は、今なんて？

ここに引っ越して来たら？って言った？

だ、え、だって…
学生のうちはしないって…前に言ってたじゃん。
いい、の…？

本気にするよ？
オフモードの私に冗談は通じないからね？


ん、うん、引っ越す…一緒に住む…


…ずるいなぁ君は。
たった一言で私のモチベーション爆上がり、いぇーい。


…ふふ、ありがと。

君のほうがずーっと理想の恋人だよね。
私、君のこともう手放せないや。


…だからね、君も。
私の手を絶対、離さないでほしい、な。

・台本（ゆるボイ！）
完璧彼女は君の前でだけだらけたい
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・台本制作者
ミフジ