昨晩飲み会から泥酔状態で帰ってきた彼女は、二日酔いになりながらも君に伝えたいことがあるようで…

「あの子」は、彼女の妹か、友達か、後輩か。お好きなように解釈していただいて構いません。

※SEは必須ではありません。

[衣擦れの音]
…ん、んー？
ん゛ん゛…え、声やば。
てか頭いった…
水…

[嚥下音(水を飲む音)]
あー…生き返る。
…ん、おはよー。

ははっ、すごい、すごい呆れた顔してる。
いやー…昨日はご迷惑をおかけしました。

ん？
いや、お店出てからのことはなんも覚えてない。
でもここに帰ってきてるし、まぁ…あの子が送り届けてくれたんだろうなーってことくらいは、想像がつく、うん。

わかってるって。
ちゃんとお礼の連絡いれときますぅー。

もー、あんま一気にしゃべんないで。
頭に響く…

いやほんとにね…
なんであんなに飲み過ぎたんでしょうねー。
でもほら、一応、私が主役の飲み会だったからさ、つい…ね。
うー…独身最後の夜、はしゃぎすぎました…

うん、みんなめちゃくちゃお祝いしてくれた。
いい友達持ったわ、ほんと。


…ね、隣座っていい？
ん、ありがと。
[衣擦れ音(ソファーに座る)]

ついでに寄りかからせて。
あー…いいね。
頭痛がやわらぐ。

そうだよー？
君のぬくもりには鎮痛（ちんつう）作用がありまーす。
ふふ、私限定だけどね。


…ふぅ。
もっかい確認するんだけど、昨日さ、あの子が家まで運んでくれたんだよね？私のこと。

うん、そっか。
…え、君、寝てたの？
うわ、それはごめん、まじでごめん。

寝てるところ起こされた上に、帰ってきた彼女が泥酔（でいすい）とかやば…

ん、そうだね、これからは気をつける。
はぁー…君が優しすぎてダメ人間になりそ。

もっと怒ったりしていいよー？
君はなんでも受け入れてくれちゃうからさ。
こう…逆に不安になったり…は、別にしないか…
なんて言ったらいいのかな、怒られたいとかではないんだけど。

…いや、昨日みんなに言われたの。
わがまま言い過ぎて君を困らせないように、って。
まー確かに、君に甘え過ぎてた部分はあるかな、と、思いまして。

だって、君が怒ってるとことか見たことないし。
なんだかんだ全部許してくれるでしょ？

でもうちらもそれぞれ違う人間だからさ。
一度も嫌な思いをさせてないか、って言われたら、それは多分ノーなわけで。

これから先もずっと一緒にいるなら、なんでも遠慮なく言い合える関係でいたいな、ってね…思ったり。

あ、あー、いや、いきなり真面目な話しだして驚いたよね。

…あのさ、昨日あの子、何か言ってた？
言ってなかった？
そっか。

これをね、私から言うのは反則なのかもしれないけど。
あの子からはもう、絶対言わないと思うから。

あの子ね、君のことが好きだったんだって。
…ふふ、びっくりしてる。
まぁ…私も…うん、びっくりした。
全然気づかなかったし。

前に二人で観に行った映画でさ、あったじゃん。
「誰かの笑顔の裏には、誰かの涙がある」みたいなセリフ。
なんか、それを思い出しちゃって。

私たちが二人で過ごしてる時に、あの子はどうしてたのかな、とか。
…うん、わかってる。
君と結ばれることだけが、あの子にとってのしあわせだとは思ってないよ。
恋愛がすべて、って子じゃないし、ちゃんと自立してるしね。

それでも、今までずっと、自分の気持ちを押し殺して私たちを応援してくれてたんだなって。
「しあわせにならないと許さない」って言われちゃった。

私が罪悪感（ざいあくかん）を持つこと自体、あの子に失礼だと思うからさ。
「めちゃくちゃしあわせになってやるー！」って返したけどね(笑)

私たち、しあわせものだよね。
あんなにお祝いしてくれる友達がいて、支えてくれる家族もいて。
いろんな人たちの優しさがあって、今の私たちがいるって思ったらなんかさ…じーんときちゃった。


…ふぅ。(息をつく)
えーと…今日、私たちは夫婦になるわけですが…

ふふっ、ごめんごめん、なんかかしこまっちゃった。
…ん、今日からも、よろしくね。

あのね、
いっぱいいっぱい、君をしあわせにするので…
私を、世界で一番しあわせにしてください。

・台本（ゆるボイ！）
二日酔い彼女は君とのしあわせを噛み締める
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ミフジ