数年前、クリスマスデートで振られたあなた。またこの季節が近づいてきたと、嫌な記憶を思い出しながら帰宅したあなたを待っていたのは…

※SEは必須ではありません。

(平日の夕方、聞き手が帰宅する)
[玄関扉の開閉音]
[足音]

おかえりぃー。
あはは、予想通りのびっくりした顔ー。
久しぶりー、お邪魔してまーす。

あー、君のお姉ちゃん？
買い忘れたものがあるとか言って、さっき出て行ったけど。
ま、そのうち帰ってくるでしょ。

それにしても、ほんと久しぶりだね。
何年ぶり？
思い出せないレベルなんだけど。

え、てかさ、もう成人してるんだよね？
お酒も飲めるってこと？
うわー、時の流れを感じる、やば。

ね、じゃあ一緒に飲も！

チューハイとー…ビールとー…
おつまみもいっぱいあるよー、ふふ。

あ、お腹空いてる？
空いてるならお惣菜（そうざい）あっためるけど…

え？
いや、酔ってないって(笑)
もう大人だし、さすがにチューハイ１本じゃ酔わないよ。

仕事の付き合いで飲み会も多いし、かなり強くなったんじゃないかな。
そ、なんちゃって大人だったあの頃とは違いまーす。

ほら、手洗っておいで。
早くしないと２本目あけちゃうよー。

(少し間をあける)
[足音]
(洗面所から戻ってきて隣に座る)

ん、うがいもちゃんとした？
おっけー。

どれ飲む？
…これ？
はい、どーぞ。

よし、それじゃ…
[缶を開ける音]

かんぱーい。
[缶で乾杯する音]
[嚥下音]
っはぁー、うまー。

おー、いい飲みっぷり。
本当にお酒飲めるような年齢になったんだねー。

んや、なんか感慨深いなーって。
…ほんと、あの頃とは全然違うもんね。

背もすごい伸びたんじゃない？

うそ、そんなに大きくなったの？
ふふ、それは隣を歩いたら首が疲れちゃうやつだ。

顔つきも大人っぽくなって、もう男の子、なんて言えないね。

[嚥下音(お酒を飲む)]
…ん、そうだ、彼女は？できた？

え、こわ。
そんな睨（にら）まないでよ。

…あー、いや、ごめん、今のはあたしが悪い…ね。

(お酒をテーブルに置いて、向かい合う)
就職先、聞いたよ。
そう、君のお姉ちゃんが教えてくれてさ。

春から社会人だね。
おめでとう。

それでね、もしかしてって思い始めたら、どうしても気になっちゃって。
直接確かめるために帰省してきたの。

ふぅ…(ひと息つく)
いくつか質問してもいい？

まずは…そうだなぁ。
大学生活は楽しかった？

そっか。
学びたいことは学べた感じ？

…うん、頑張ったんだね。
ということは、仕事は…あ、やっぱり、その分野の企業なんだ。

じゃあ…さ。
就職先がここからすごく遠い、あたしの住む街（まち）なのはどうして？

…はは、いじわるな聞き方しちゃったかな。


(深呼吸)
…あのとき、逃げちゃってごめんね。
年齢を理由にして、逃げてごめん。

君の人生を背負う勇気がなくてごめん。

あたし、君のお姉ちゃんから、君の行きたい大学とかも聞いてたからさ。
急に就職するって言われて、テンパっちゃって。

あたしと一緒にいるために、君の将来が変わっちゃうのは間違ってる、って、そう…思って。

…うん、ちゃんと話せばよかったんだよね。

でもあのときは、余裕なんてなかったから。
ほんと、散々（さんざん）年上ぶってたくせにね…かっこわる。

あたしがいちゃダメだって一回思ったらもう、離れることしか考えられなかった。
君のせいみたいな言い方して、ずるかったよね、あたし。

君にとってクリスマスが、嫌な思い出のある日になっちゃったことも…聞いてる。

本当に、ごめんなさい。

…へへ、謝ってばっかだね。
もっともっと、謝らなきゃいけないこと、たくさんあるよ。

あの頃のあたしは、本当に自分勝手で、君のことも全然大事にできてなかったよね…


…ねぇ、それでも。
許して、くれる…のかな、君は。

…変わんないね、優しいとこ。


…あのね、あたし、仕事めちゃくちゃ頑張ったの。
もう、脇目（わきめ）もふらずに仕事一筋、ってくらい。

だから有給休暇がいーっぱい貯まっちゃって。
それ使って、年明けまでこっちにいられることになってるんだ。


だからまずは…
あのときと同じ、クリスマスデートから。

…やり直しても、いいですか？

・台本（ゆるボイ！）
お姉ちゃんの友達は、君とイチからやり直したい
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・台本制作者
ミフジ