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僕たちは今日、失恋する
written by さごし
  • 学校/学園
  • 純愛
  • 片思い
  • 先輩
  • ダウナー
  • 美術部
  • 失恋
公開日2022年03月09日 00:04 更新日2022年03月09日 00:07
文字数
2070文字(約 6分54秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
卒業式の日の、美術部の男女の失恋を描いたシチュエーションボイスフリー台本です。

【あらすじ】
卒業式の後、3年生の元部長に、2年生の先輩が告白しているところを見てしまった。
先輩のことが好きだった僕はひとしきりショックを受けた後、傷心を慰めるために部室へと向かった。
誰もいないはずの部室には人影があった。先程、元部長に告白をしていた先輩だった。ドアのガラス越しに見えた背中は、どこか浮かない様子だった。気まずさを押し殺し、ドアを開ける。先輩は、いつものように「ああ、アンタか」と言った。そう。いつものように。そう、言い聞かせた。

卒業シーズンなので、気持ちに区切りをつけられないふたりの話を書きました。
誰一人として矢印の先がお互いを指していません。救いもありません。

男性向けとしておりますが、性別の変更は自由です。
百合にでもBLにでもお好きにどうぞ。
本編
ああ、アンタか
卒業式だってのに部室に来るとか、相変わらずだね
……って、端(はた)から見れば、私も一緒か

とりあえず座んなよ

なんか描きたい気分だから来たんじゃないの?

分かるよ
そういう顔、してる

ははっ
何? 意外?
1年一緒にやってるんだから、それくらい分かるよ

ずっとキャンバスばっかり見てたわけじゃないの
これでも一応、もう部長なんだからね
ちゃんと見てるんだよ
みんなのことも

私?
ああ……私もまあ、アンタと似たような感じだよ
うん


そうだ
アンタのことさ、描いてもいい?
ちょうど、何描こうか迷ってたところなんだよね

いいじゃん別に
卒業式だから卒業生のポートレート、って言うのも、あまりにもベタでしょ?
こういうのの方がさ、私達らしくて良いんじゃないかって
ね?

何?
緊張してるの?
モデルなんてみんな一回はやってるんだから、今更そんな固くなんなくてもいいのに

ほら、楽にしてて
なんなら、私のこと、描いててもいいからさ
好きにやってて


じゃあ、よろしく


……どした?
筆、止まってるよ?

なんか、あった?

部長?
え、何? 私がどうかした?

ああ……私じゃなくて、先輩のことね
……それで? 先輩がどうかしたの?

ああ……そう……なんだ
そっか
見られてたか

まあ、あんなところでしてたら、そりゃ誰かに見られててもおかしくないよね
そうだよね

結果?
そんなの聞かなくても分かるでしょ
デリカシーないなあ

まあ、別に良いけどね
私も玉砕覚悟で挑んだ結果だし

はあーあ
もっとアプローチしてた方が良かったのかなー
なーんて

先輩、秘密主義だったし、どんな子が好きかなんて分かんないし、何より絵しか見てないような人だったから、どうしようもなかったんだけどね
まあ、そんな先輩のこと好きになっちゃった私が悪いって言うかさ
はは……

言い訳?
はは……
まあ……確かにそうかもね
そんなにすぐに諦められるもんじゃないからさ

こないだまで描いてた絵?
ああ、そっか
やっぱりバレてたか

今は……いいの
ちょっと、違うの描きたい気分だから
多分、また描きたくなるときが来るからさ、それまで取っとこうと思って

うん、そんな感じ
ずっと描いてたから、途中で放り出しちゃうのは勿体無いしね

そんな顔しないで
別に気にしてないから

私の力不足っていうか、魅力が足んなかったっていうかさ
私の問題だから、これは

ほら、続き、描くから

うん
アンタも好きに描いてて


……ごめん
私、ズルいよね
分かってる
アンタが嫌って言わないの分かってて、アンタに甘えてこんなことしてる私は、ホントにズルいやつだって

……気付いてたよ
知らないフリしてて、ごめん
アンタが私のことよく見てるのも、それが私を描いてるからだってのも、知ってた
ああ、コイツもあたしと同じなんだ、って
だから、すぐに分かった
でも……私は先輩のことが好きだから……アンタの気持ちには応えられないから……
だから……

……ごめん
わざわざ自分から言うことでもないし、でも変に期待させるのもアレだし、だからって急に態度変えるのもおかしいから、だから、知らないフリするしかなかった

……もしかしたら、先輩も同じだったのかもね
ああ見えて、先輩も、私たちのこと、ちゃんと見てくれてたから
多分、絵のついでだろうけど


知らないフリ、するしかなかったのかな
先輩が見てる先には、ホントは私はどこにもいなくて、他の子も、みんないなくて
先輩の目はずっと絵を見てて……
なのに私は……

どうしようも……なかったのかな……

正直さ、部室のドアが開いたとき、先輩だったらよかったのになって、思っちゃったんだよね
先輩、優しいから、気が変わって、私のこと追いかけてきてくれたんじゃないかって、そんな期待、しちゃってた
よくよく考えたら、先輩、そんなことする人じゃないから、すぐに分かりそうなことなのにね
でも、どうしても、自分の気持ちに蓋はできなかった

振られちゃったけどさ、それでも、やっぱり諦め切れないんだよ
私、思ったよりも未練がましいみたいでさ
自分でもびっくりしてる

こんなヤツ、嫌になっちゃわない?

……って、アンタに聞くのもおかしいか

ああ、でもさ、アンタも私と同じに、無理に諦めなくてもいいんだよ
いつか、もしかしたら振り向いてくれる日が来るかもしれないから
そういう気持ちに、嘘はつきたくないからさ

……こんな無責任なこと言っちゃダメか

ごめん、今のは忘れて
ただの……そう、独り言みたいなものだから

ホント、ごめんね
アンタにこんなこと言っちゃって
自分のことなのに、他人事みたいにさ

でも、アンタだったら、応援してくれるんじゃないかって、期待しちゃうんだよね
アンタ、優しいからさ

好きって気持ちに漬け込むみたいでズルいのは分かってる
でも、アンタのこと、信頼してるんだよ
私たち、似たもの同士でしょ?
だからさ……

いや……さすがに虫が良すぎるよね
ごめん……

今の話は、二人だけの秘密にしよう
誰にも言わないで、大事にしまっとこう

それが良いよ……
きっと……
うん……

……ごめん
私、もう行くね
ああ、絵はまた今度、ちゃんと描きあげるから、安心して
私、途中で投げ出したりしないから

うん
アンタなら、知ってるって、言うと思ってた

それじゃあ、また明日、ここで

言っとくけど、サボったら怒るからね

あ、あと、もう一個
鍵、終わったら職員室に返しといてね

うん
それじゃあ
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
僕たちは今日、失恋する
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
さごし
ライター情報
 皆様おはこんばんちは!!
 さごしです! 
 さごしは性癖の幅広さがウリ!
 甘々、癒し、ママ、年上、年下、おねショタ、ツンデレ、クーデレ、ヤンデレ、ストーカー、罵倒、睡眠導入……とにかく何でもござれ! 
 さごしは『何でも書く!』がモットーです!
 どんなものにもこだわりを!
 そんな思いで執筆しております! 
 甘々系や添い寝、女性優位なシチュエーション、少し影のあるもの、狂気を含んだストーリーが好きです! 
 中でも静かな内なる狂気を描いたシナリオは高評価をいただくことが多いです!
 バイノーラル指示つきの台本も書けます!
 いろんなシチュエーションやキャラ属性にどんどん挑戦していきたいと思っておりますので、目に留めていただけると嬉しいです!
 日夜邁進するさごしを、どうぞよろしくお願い致します!
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