彼女にフラれて失意の帰り道、突如あなたに話しかけたギャルは、きっかけはナンパだったものの、あなたのことを優しく慰めてくれた。
けれども、あなたの体を狙っていることには変わりなかった。

やっほー。
お兄さん、今時間ある？

って、なんかそれどころじゃない表情だね。
カッコいい顔が台無しだよ？
何か辛いことでもあったんだ。
お話、アタシでよかったら聞こうか？

いいじゃんいいじゃん、知り合いには話しづらいことでも、アタシには話せるっしょ？

じゃあわかった。
お兄さんの辛さのわけ、教えてくれるまでアタシ、お兄さんのこと抱きついて離さないから！

　（お兄さん、拒む）

んっ、何なの、その腕は！
ちょっと、嫌がらないでよー。
アタシみたいな可愛い女の子に抱きつかれて喜ばない男なんていないんだし、遠慮しないでいいんだよ？

えへへー。
こうして間近で眺めてると、やっぱりお兄さんカッコいいわ。
オシャレしないとその良質な素材が台無しだよー？
アタシが男のオシャレのいろは、叩き込んであげよっか。
もちろん、お兄さんのお話を聞いた後でね。

ねえ、アタシにお兄さんのこと、教えて欲しいな。
お兄さんのためでもあるんだからね？

　（誘惑のように）
そーゆーつらいことはぁ、すぐに出して、楽になった方がいいんだよ？
んふふっ。

あはは、このノリもまだダメなぐらい落ち込んでるわ……
こういう時は、優しく寄り添ってあげた方が響くかな？

　（ここから甘やかし）

よしよし。
アタシはお兄さんの味方になってあげます。
どんなに辛いことがあっても、苦しくても、アタシがお兄さんをいつでも抱き締めてあげます。

あ、嫌がったりしないんですね。
さっきは腕で払い除けようとしたのに。

寒くなったからですか？
いや、人肌恋しくなっちゃったんですね。
お兄さん、今、本当は人の体温を欲してること隠せてませんよ。

大体わかりました。
お兄さん……失恋、したんですね。

わかりますよ。
長い間想い合って関係を深めていた、お兄さんにとって必要不可欠な存在になっていた彼女が、さよならのたった一言で、胸の大きな空洞に変わってしまった絶望感。

今、何をする気力にもならないんでしょ？
もしかすると、つまらないことでも考えていたり……

衝動で取り返しのつかないことしちゃうなんて、もったいないんだから。

　（ここから軽いトーンで）

少なくともアタシが悲しんじゃう。
だから、まだお兄さんのこと離さない。
そうだなー、お兄さんがそのことをまるで忘れちゃうまで、とか。

んふふ、最悪一生だね。

アタシはお兄さんに一目惚れしちゃったからいいとして、お兄さんはアタシとずっと一緒なんてちょっと嫌かな？

……って、そこは秒で否定するとこ！
もー、お兄さん、気分暗すぎてレディーへの気遣いがなってないぞー？

……すみませんって、まったく、お兄さんも真面目な人なんだから。
そんなんだから、アタシみたいなのに捕まっちゃうんだぞっ。

　（母性的に）
でも、ラッキーだったね。
アタシでよかったら、お兄さんの心の空洞、いつだって埋めてあげたいって思ってるよ。

　（ここから軽く）

なんか、アタシにないはずの一面をお兄さんに引き出されちゃったって感じ。
ちょっとアタシには、こんなアタシ、違和感あるわ。

大丈夫だよ、お兄さんのこと癒してあげたい気持ちは誰にも負けないから。
なでなで。
今日からアタシがお兄さんのママでちゅよー♡……なんてね。

んっ、笑うのはやめてよ。
ついノリで言っちゃったのに、尚更恥ずかしくなるじゃん。

もー、ママのこと笑った罰として、えいっ。

　（ここから甘く）

どうかな……？
胸の中、落ち着く？

あ、違う意味で落ち着かない？
さすがは男だね。本能には逆らえない。

　（ここから軽く）

よし、これで満足かな？
欲しくなったらいつでもしてあげる。
ただし、エッチな目的はお断り。

なんだか、声掛けた時よりだいぶ表情が良くなってる。
えへへ、アタシ、凄いっしょ？

こういう時は、甘えるのが一番なんだってさ。
ぶっちゃけ、やり方よくわかんなかったけど上手くいってよかった。

じゃあ、これでお兄さんも気分は晴れたかな？
よかったよかった。

男の人は、過去のこと引き摺るから、完全に忘れるっていうのは簡単じゃないだろうけど、アタシでよかったら、お兄さんの人生、彩らせてよ。
アタシにお兄さんのこと、もっと教えて。

うーん、あんまり、過去のこととか言って、お兄さんに蒸し返させるのもよくないんだね。

ほら、元気出して。
お兄さんはとっても素敵な男だよ！
アタシが証明してあげる。

だからさ、お兄さんもアタシのこと、遠慮なく求めてよ。
好きなだけ甘えていいんだから。

だって、アタシはお兄さんのママだもーん♡

ふふっ、お兄さんがママって呼びたかったら呼んでもいいよ。

いや、馬鹿になんかしてないから！
だってお兄さん、これで笑ってくれるじゃん。
笑顔、カッコいいし……

自信持って。
アタシはお兄さんのこと、好きだから。

はい決定。
今からお兄さんはアタシの恋人でーす。
これでお兄さん、寂しくないでしょ？

おっかしーな……お兄さんとこうなるつもりで話しかけたんじゃないのに……
ま、これもお兄さんの魅力ってことで、いっか。

まずさ、連絡先、交換しよ……って、あれ？

　（雨・降り出す）

んっ、雨……？
あ、そういえば予報じゃ夜から雨降るって言ってたような……

お兄さん、この際だから場所を選ばずとにかく雨宿りしよ！
ついてきて！

　（走る、屋内へ）

ふう、そこまで濡れずに済んだね……

ん、ここ？
そんなの、わかるでしょ？

ホテルだよ、ホ・テ・ル。
雨宿りの意味も知らないとは、お兄さんは健全だねぇ。
想像通りで安心した。

雨、しばらく止みそうにないし、ここにいるしかないじゃん？
これはもう、泊まるしかないでしょ。

どうかした？
そういう目で見てたのか、って？

あははっ、お兄さん、何にも気付いてないんだ！
そもそも最初からナンパのつもりで話しかけてたのに、ちょっと優しさ見せたらすぐ信じちゃって、真面目で鈍感で、逆に褒めたいくらいだよ。

出会い求めてるだけのアタシに邪心がないわけないっつーの。
完璧に騙されちゃったね。
お兄さん。

でも、そんな純粋すぎるお兄さんのこと、今日は心惹かれるくらい欲してるんだ。
いいじゃん、丁度お兄さんだってフリーなんだから、ちょっと使わせてよ。
いや、ちょっとじゃ済まないと思うけど。

どうしたの？
その怖がるような目で見るお兄さん、可愛くてもっと欲しくなっちゃうよ？

まあ、いいじゃん。
この方がアタシはお兄さんの傷心上塗りできると思うし。

はい、お兄さんに拒否権はありませーん！
安心して、痛くはしないから。
お兄さんのこと、大事にするから。

だからさ、せめて今夜だけはお兄さんのこと、アタシ色に染めさせてもらうね？

・台本（ゆるボイ！）
失恋したあなたをナンパして慰めてくれたギャルはやっぱり体目的だった
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩