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駆け落ちの夜、私の決心
written by 夜木嵩
  • 恋人同士
  • 幼なじみ
  • 駆け落ち
公開日2022年01月29日 18:59 更新日2022年01月29日 18:59
文字数
2199文字(約 7分20秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
少女
視聴者役柄
少年
場所
電車内
あらすじ
あなたと彼女は今夜駆け落ちをする。
今、街を出る電車の中、実感の中湧く不安に揺られ、彼女の心はまだ迷っていた。
まだ、二人は引き返すことが出来るようだが……?
本編
 (電車・走行音)

……ねえ、これで、よかったのかな。

今更になってこんなこと言い出しても、無意味だってわかってるけど、勢いだけで駆け落ちなんてしちゃって、よかったのかな。

そっか、勢いじゃなきゃ私たちにこんな大胆な真似、出来ないよね。
君からその誘いをされた時だって、私は迷ってたわけだし……

君を選ぶ代償に、家族も地元も、これまで築き上げてきた自分の全てを捨てることになるのは、私には大きすぎるけれど、もう、決めたことだから。

ねえ。……もう、戻れないんだよね?

そう、次の駅で引き返せば、まだ、帰れるんだ。
それが、最後のチャンス、ね……

ごめんね。そんなこと、聞かなきゃよかった。
うん。ここまで来て、まだ私の心、はっきりしてないや。

勘違いはしないで欲しいんだけど、決して君と一緒に生きていこうっていう気持ちがないわけじゃないんだよ?
だけどね、まだ、私たち二人で生きていけるほど、大人じゃないから。

んふっ、そもそも“大人”だったらこんなことになってないか。

生きていこうって気持ちだけで生きられるわけじゃないのは、わかるでしょ?
君だって、具体的にこれからのことを語ってくれたけど、それでも大変なこともあるだろうから。

特に、私たちは過去の自分を捨てることになるわけだから、頼れる相手がいないってことが気がかりなんだ。
手持ちのお金もあてにできるほどないし。

もし、どうにもならないようだったら、君と心中ってこと?

君と生きたいとは思うけど、君と死にたいっていう願望はないな……
君とそんな悲しいことを考えたいって思えない。
君とは幸せでいたいから。

だから、迷ってるんだ。
私、目先の君との日々に目が眩んだだけじゃないのかって。

こうして駆け落ちしてしまうことだけが君と幸せになるルート、ってわけじゃないはずでしょ?
いくら私の両親が反対してるからといって、お互いに独り立ちしてから付き合いを重ねれば、私たちの勝手だって押し切れると思うの。

その年月を私たちは待てず、大事なものを捨てることになった。

この未熟さが一生に残る後悔にならなきゃいいんだけど。
その年月さえ待てたなら、君とずっと一緒にいられたはずだって思いたくはないの。

そんな見えない未来を想うこの夜が、期待に溢れている反面、怖くもあるんだよ。
君は、これからのこと、不安じゃないの?

そっか、「俺まで不安がってたら、お互い精神的にきつくなってやっていけないだろ」か。
カッコつけちゃって、本当にそう思ってるのか疑わしいな。

……でも、頼もしいこと言ってくれたかも。

きっと、私は君だから、こんなことしようって思えたんだろうね。
君だからこれだけ好きってだけじゃなくて、君の背中はなんとなく、頼れる気がする。

まったく心配しないのも痛い目を見るだけだけど、時にはどうにかなるぐらいの開き直った気持ちも大事なんだって、君が教えてくれてるように感じる。

ねえ、どうして君は、私のことを町から連れ出そうって思ったの?
娘の可愛さのあまり、並の学校じゃエリートはいないから同級生は駄目だとか、玉の輿みたいなものに固執する私の親のこと、説得しようとかって思わなかった?

出来なかったんだ。
……そうだよね。
簡単に折れるようだったら、私が言って聞く耳を持たないわけがないよ。

あと、君の場合は独占欲、でしょ?
君と私の密接な関係に、他の誰もを入れたくないっていう。

もー、どれだけ君と付き合ってきたと思ってるの?
君の嫉妬深さぐらい、嫌というほど感じてるんだから。

え、だったら私がなんで君の誘いに乗ったのか?

それは、単純に君のこと好きだから。
……それだけで説明、つかないんでしょ?
家族すらも天秤にかけて君を取るなんて、私だってどこか欠け落ちてるところ、あるんだよ。

そもそも、私は両親のこと、自己満足で娘のこともコントロールしようとしてる酷い人だとは思ってないし。

きっと、単純で馬鹿なだけ。
たった一人の娘が可愛くて可愛くて、幸せになってほしい気持ちに溢れてること、伝わらないわけないもの。

だけど、視野が狭いというか、丁度、私に稼げる人と結婚しろって言ってるところから感じるけど、お金イコール幸せってこと、信じて疑わないみたいに、柔軟性がないんだよね。

芯がブレないのはいいけど、時代遅れとも言った方がいいのかなって具合に、窮屈な考え方に染まっちゃってすっごい頑固なの。

だから、早くあの家を抜け出したいとまでは思ってなかったけど……つまらなかったのかも。

君の誘いは刺激的だったね。
私に足りない自由を君がくれるんじゃないかって思った。

……言葉にしてわかったよ。

君と心中するつもりはないとは言ったものの、自分で選んだ道の先がそうだとしたら、それもまたいいのかもしれないって。

私は、平穏を捨ててでも、自分の意思で生きたがってるんだ。
親から言われ続ける安全な日々に飽き飽きしていたんだって思う。

だけど、私たちが親になったら、こんなことしたからこそ、私の親の子を想う気持ちをわかるようになるのかも……。

私はあんまり、自分のエゴで子供の行く道を塞ぎたくないかな。
でも、駆け落ちはされたくないから、好きな人と、好きなことさせてあげたい。

好きな人との子供か……
そりゃ、愛おしくてたまらないんだろうね……

 (ひとりごと)
……ごめんね。
この罪の重さもよくわからないような子供で。

 (電車、停車)

着いたけど、どうする?
これが最後のチャンスだけど。

そうだよね。
私も、もう心は決まったから。

 (電車、発車)
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
駆け落ちの夜、私の決心
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩
ライター情報
ヤンデレとか書きます。

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