親友と遊びの予定、特に何も決めていなかった午後をゲーセンで潰すことに。
そこであなたは、親友が実は女であるということを知ることに……

　（穏やかな男性寄りボイス）

わりぃな、昨日いきなり誘って映画に付き合わせて。
何かあれば僕も君の用事に付き合うよ。

ん、そんな気にするな？
そうか、君と僕の仲ってやつかい？
嬉しいこと言ってくれるじゃないか。
このこのっ。

　（女、男の肩を叩く）

い、痛い？
すまん。
つい、嬉しくて。

ああ、君は僕の一番大事な男だからな。
ほら、片方が親友と思っていても、もう片方はそうは思ってないってこと、あるだろ？
僕はそういうことあったから、気持ち通じてるのかってこと、結構気にするんだよ。

ん？　距離が近い？
えー、いいだろこれぐらい。
手ぇ繋ぐくらいでいちいち気にすんなって。

むー、けち。
何、これじゃ恋人みたいだって？
うーん……君がそう思うならやめとくよ。

それより、これからどうする？
僕ら、映画終わってからのこと何にも考えてなかったじゃん。
てか、これから予定ある？

ないならいいんだ。
時間気にせず遊べるわけだし。

まあ、今からどっか遠いとこ行くほど時間もないし、この辺でいいのあれば。
って、そういえばゲーセンが近くにあったよな？
なら、そうするか？

よし、遊ぶか。
まあまあ子供っぽいとか言わずに、たまには童心に帰るつもりで楽しもうぜ？
あ、あんまり来たことないから童心に帰っても仕方ない感じ？
そんなことはいいから、来て。

ほら、君が欲しがってるアニメキャラのぬいぐるみ。
クレーンゲームで取れるみたいだよ。

あ、結構食いつきがいい。
なんか、人参ぶら下げられた馬みたいだな。
でも、僕がいればその人参、食べさせてあげられると思うよ？
僕、こういうの得意だから。

そうだね、300円あれば十分ってところかな。
マジって、マジだよ。

僕のこと、信じてみるかい？
ああ。そう来なくっちゃ。

ってわけで、300円は頂くけども、もしそれでもぬいぐるみが取れなくてさらに挑戦ってなったら、その分は僕が取れるまで出すから。
とは言っても、そんなルール必要ないだろうけどな？

さ、とっとと片付けてしまおっか。
待ってろぬいぐるみ君よ、今そこからカッコいいお兄さんのもとへと救い出してやるからな。

って、なんだその冷めた目は。
君のためにぬいぐるみを取ってあげようっていうのに。
……いや、何が言いたいかはわかってる。
言わないでくれ、恥ずかしいから。

さて、集中し直して……

（景品、落ちる）

っしゃ。
ほらな、3回どころか、1回で十分だったぜ。
はい、ぬいぐるみと200円。

んへへ、凄いだろ？
人に見せるのはこれが初めてなんだ。
喜んでもらえるの、結構嬉しいものだね。

ただ、こうも瞬殺じゃ、全く時間潰しにはならないんだよなぁ。
君は、何か気になるものある？
あまり来たことないんだったら、折角だしいろいろ遊ぼうよ。

ん、あれ？
あれは、プリクラだね。
写真撮ってシールにするやつ。

知ってる？
プリクラって、プリント倶楽部の略らしいよ。
略称じゃ可愛いイメージなのに、案外渋いよな。

じゃあ、君も気になってるところで、二人で撮るか。
ほとんどない機会だし、君のこと沢山盛ってあげよう。

ん、どした？
ああ、男性のみ入場お断り？
そうだね、プリクラコーナーが男子禁制っていうのはよくあることだと思うよ。
多分、女性だけでほぼ密室みたいな筐体の中に入るわけだから、ろくでもない男がそういう隙を狙ったりした事例でも日本のどこかであったんじゃないかって僕は聞いたけど。
君みたいな男の子には関係ない話だけど、可能性は無くしておきたいってことでしょ。

あれ、どうしたの？
来ないの？

え、入っちゃダメ？

……君は何を言ってるんだい？
僕たちが男だから？

……ふーん。ずっと前から、妙だとは思ってたんだよな。

隠してたつもりはないんだけど、誤解されてるみたいだから言っておくね？
僕さ、女なんだよね。

んふふ、やっぱり男だと思われてたんだ。
確かに、顔も名前もはっきりとした感じじゃないし、自分のこと僕って呼んでるし。
あと、男の子目線だと、胸がないのも勘違いの原因かな？

べ、別に望んで平坦になったわけじゃねぇし！！

ただ、母さんはこの方がいいんだろうけどな。

僕、本当の父さんと、面識ないんだ。
浮気して家庭を捨てたらしいんだけど、母さん、すっごい愛してたらしくて、まだその父さんのこと想ってる。
それで僕がたまたま父親似で育ったばっかりに、幻影を求められてるんだよ。

仕草をいちいち男らしく矯正させてさ、幼い時からだったから、もうこれで慣れたまま。
でも僕はあくまで女なんだよ。
……僕、女なんだよな？

いや、流石にそれくらいはわかってる。
なんたって、男である君のこと、好きなんだからさ。
ちゃんと乙女心は持ってるんだ。

ビックリした？
それもそうだよな。
ついさっきまで男だと思われてた僕が君のこと好きだなんて。
でも別に、禁断でも何でもない男女なわけだし。

心配は、君が僕のことを愛せるか、かな。

いいよ、君は僕のこと無理に女だって思おうとしなくても。
そのまま僕から君に恋愛感情植え付けてあげるからさ。

むしろ、急に女だからって気を遣われる方が寂しいし。
仲良くしやすいなら男だと思ってくれ。
こっちも露骨に女らしくしようとか柄じゃないし。

そうだな、あんまりしつこいボディタッチはセクハラとして嫌いになるだろうね。
特に、胸とか、尻とか……僕のなんかじゃそそられないかもしれないけど。

……いや、君になら、いいや。
僕はそれ、女として好きって言ってもらえてるって受け取るから。

でも、君の場合は馬鹿正直に告白して、僕から誘ってキスが限度だろうね。
とはいえ、僕的にそういうのでいいんだけどな。
さすがに僕だって、スケベオヤジがするようなことされたいわけじゃないし。

……とにかく、君はこれからも何にも気にしないでいいんだよ。
もし好きになっちゃったら、その気持ちを教えて欲しいけど、友達でいてくれるだけで十分だし。

ただ、僕が女だってことは知っててくれないと、一緒にトイレとか誘われても困るからさ。
それだけはよろしく。

それじゃ、プリクラ、一緒に撮ろっか。

え、恋人みたい？
まったく、さっきまで何にも気にしてなかったくせに。
わかったよ、君は気にするから、強引に引きずり込んでやる。

いいよ、じゃあ今から恋人ごっこってことで、撮影中はこれでもかってぐらいくっついてあげるからな。
まあ、入れる文字は、ズッ友か、大好きか、君に選ばせてあげるよ。

・台本（ゆるボイ！）
男だと思ってた親友は女だったし僕に好意を抱いてました。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩