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たとえ、今は忘れていたとしても
written by 夜木嵩
  • 恋人同士
  • 記憶喪失
公開日2022年02月20日 18:35 更新日2022年02月20日 18:35
文字数
2263文字(約 7分33秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
事故に遭った彼女
視聴者役柄
心配する彼氏
場所
病室
あらすじ
彼女が事故に遭ったとの連絡を受け、あなたは彼女の病室に。
怪我は深刻ではないものの、記憶喪失になっていて、あなたのことも思い出せない。
本編
 (男、病室のドアを開ける)

こ、こんにちは……
失礼かとは思いますが、あの……どちら様でしょう?

気を悪くされたでしょうか?
私、記憶喪失になってるらしくて、自分の名前も、事故のことも、全部、主治医から聞いていることしかまだわからないんです。
家族の顔も名前も思い出せなかったぐらいですし……
ですので、名前と私との関係を教えていただけないでしょうか?

ふむ、私の……彼氏、なんですね。
……ここは、夢、なんですか?

いえ、あなたのことを信じていないわけではないんです。
ですが、あなたのような素敵な方が私と交際しているだなんて、ちょっと、想像がつかないものでして。

写真、ですか?
是非、見せてください。
その方が、何か記憶を取り戻すきっかけにもなると思いますし。

……あ、待ち受けが既に私たちなんですね。
凄く幸せそう。

こんなことにならなければ、今日だってこんな感じに笑い合えたのでしょうか……
すみません。
私が、事故に遭ったばかりに……。

すみません……。

ら、らしくないってどういうことですか。
えぇっ!?
普段の私なら轢いた運転手のこと一発殴ってやるって言ってるはず!?

ど、どれだけ物騒な思考してるんですか!?
血の気が多いというか、可愛らしさの欠片もない!
で、でも、そういうところがあなたは、好きだったり……?

は、はぁ……
一緒にいて、自分まで元気になれる、ですか……。
なんか、元気通り越してバカっぽく感じますけど。

じゃ、じゃあ、あなたの前では、なるべく、元気に振る舞った方がいいですか?

え、自然でいい?
こんなしおらしい私なんてもう二度と見られないだろうから?

なんか、聞いて損しました。
意地でもすぐに記憶取り戻して普段通りの私になりたい気分です。

ですが、先程見舞いに来た家族からは気を遣われてばっかりでしたので、ちょっと、ありがたいとも思うんです。
流石は私の惚れた彼氏さん、ってことなんですかね?
記憶がないにもかかわらず、心が温かくなります。

きっと、記憶では忘れていても、私の頭の奥深くに、あなたへの気持ちは深く刻み込まれているのでしょうね。
そんな愛を交わせる相手がいて、私は幸せ者です。

あなたも、幸せ?
その言葉がもう、私にとっても幸せです。
自惚れかもしれませんが、と言っても、その自分が今は他人のようなものですが、私はあなたを満たせていたのでしょう。

そういうことで、合ってますか?

ふふっ、よかったです。

あの、手、握ってくれませんか?
いえ、ちょっと痛むとはいえ、折れてませんし、自由に動かせますよ?

なんとなく、あなたとの恋人らしい感覚があれば、思い出せそうな気がしまして。

 (男、手を握る)

……温かいです。
やはり、しっくり来るというか、この感覚に慣れているのでしょうね。

ちなみに、私たちって、キス、とかはしたんですか?

あ、そうなんですか。
さっき見せてもらった写真や、あなたからの話を聞くに、私たち、かなり深い関係なのかと思っていたのですが、意外とまだなんですね。

お互いに緊張してしまう、ですか。
元気な癖して、彼氏とキスも出来ないんですね、私。

さすがに今してしまうのは、本来の私に申し訳ないですけど、発破をかけられるものなら掛けたいものです。

え、あなたのせい?
そればかりは、今の私にはわからないので何とも言えません。
ただ、男なんだからリードするべきとも思いませんし、ロマンチックなシチュエーションに惹かれて大事な時まで取っておくという考え方も可愛くて好きです。

……なんて、今の私が言っても仕方ないことですかね。
ですが、もしこれから元に戻った私がしたそうにしていたら、あなたから奪ってあげてください。
きっと、その一回で私も素直になれると思いますから。

ふふっ、頑張る、ですか。
期待、してますね。

これは、本来の私もすぐに戻りたくなるか、緊張して戻れなくなっちゃうか、わかりませんね。

どうやら、記憶が戻ることは些細なきっかけだったり、突然だったりするみたいです。
だから、24時間必死に記憶を取り戻そうとすることはないと言われました。
今もきっかけが掴めそうで掴めないもので、この瞬間に降ってきてもおかしくありませんし、何年とかかるかもわかりません。

もし、私がこのままあなたとの日々を思い出せないままだとしても、好きでいてくれますか?

そう、ですか。
むしろ、その場合は今の私があなたのことをどれほど愛せるかを心配した方がよさそうですね。
恋人のまま接してくれるあなたの優しさと、私に残っていた気持ちで一緒にいられる心地よさは感じますが、まだ他人は他人なんです。

ですので、あんまり酷いことすると、嫌いになりますからね?
普段通りの接し方をしていただけるのがありがたいですが、そこだけは注意してください。

あとは、いろいろと頼むのも申し訳ないですし、あなたは私に無理しないでいいと言うかもしれませんが、そういう人こそ無理しがちですので、私を気に掛けるのと同じくらい、自分のことも大事にしてください。

今日は、ありがとうございました。
短い時間でしたけど、楽しかったです。

あ、最後に一つだけ、いいですか?
きっと、普段の私に戻ってしまえば二度と言えないと思うので、言わせてください。

この私という人間を、これからもずっと、大切にしていただけませんか?

もちろん、対価と言っては変かもしれませんが、私もあなたのことを大切にしますので。

そこにあるものはこれまでと変わらない日々なのかもしれませんが、それでも、その変わらない日々こそが何よりも大切なんだと思います。

変わらない愛情を、どうか私に注いでやってください。

これからはきっと、忘れないと思いますから。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
たとえ、今は忘れていたとしても
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩
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