// 目元を隠す

えへへ、だーれだ？

// 即答される程度の間を開けて

……せーかい。
むー、悩むふりくらいしてくれてもいいじゃん！
あーあ、今まで住んでた人はみんな腰抜かして慌てふためいてたのに。
真顔で即答されたらつまんないよー。

まぁ、即答されても仕方ないかな。
この部屋にはお兄さんの他には誰も住んでないし。

え？私？
わたしは……まぁ、居候みたいなもの、だし？

それに、どーせお兄さんの部屋になんて誰も来ないもんね。
だーれだ？なんてするような候補なんて私をおいて他にいる訳ないか。

あっ……ごめんね？
別にお兄さんがモテないだとか友達がいないだとか誰も会いたいと思ってくれないとか言いたい訳じゃなくて。

// 落ち込み気味で
と言うより、全部私のせい……だよね。
お兄さんが言いたいことはわかってる。

私がこの部屋に居座ってる幽霊だから……でしょ？
お兄さん以外には姿を視認してもらえないから、まるでポルターガイストみたいに見えるし、お兄さんは虚空に話しかける頭のおかしな人に見えちゃう。

……ポルターガイストは間違ってないけど。
もっと言えば幽霊と平然と会話してるお兄さんは頭のおかしな人に見えても仕方ない気がするけど。

あれ？ひょっとして私、悪くない？

……あっ！待って！
この部屋から退去するなんて言わないで！
冗談でも悲しくなっちゃう。

みんな私のことを怖がって、入居してもすぐに居なくなって。それの繰り返しで。その間私はずっとひとりぼっちで。

私を見つけて、存在を認めてくれる人にようやく巡り会えたのに、お兄さんがいなくなったら私はまたひとりぼっちになっちゃう。
もうひとりぼっちは嫌。
// 懇願するように
だから、これからもずーっと一緒にいてね？

ほんと？いつまでも一緒にいてくれる？
えへへ、嬉しい。
でも私は幽霊だから、こんな時でもお兄さんになでなでして貰えないのがもどかしいよ。

私はお兄さんにたくさん甘えたいのにぃー。
どうしてもお兄さんとか他の生きてる人とは違うって感じちゃう。

生きてればたくさんなでてもらえるし、膝の上で丸くなって寝れるし、でっかい抱き枕にもできたのになぁ。

ねぇ、もしお兄ちゃんが寿命を全うしてここで死ぬことがあったらさ、たっくさん甘えていい？

撫でてもらったり、抱きついたり、膝枕してもらったり。
そのあと、ひとしきり甘えたら私の手を引いてあの世まで連れてってよ。

約束、しよ。

……ありがと。これでこれからも楽しく生きていけそう。
ま、もう死んでるけど！えへへ。

・台本（ゆるボイ！）
事故物件に住み着く幽霊ちゃんは甘えたがりで寂しがりや
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
えとのわーる(Stella)