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地獄のヤンデレ様裁判
written by 夜木嵩
  • ヤンデレ
  • 地獄
公開日2022年03月23日 18:46 更新日2022年03月23日 18:46
文字数
2184文字(約 7分17秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
閻魔王の代わりに男を裁くヤンデレ
視聴者役柄
普通の人生を送った死者
場所
閻魔庁
あらすじ
死んだあなたは閻魔王の裁きを受けるはずが、閻魔王のいるべき場所にいたのは若い頃、あなたにつきまとっていた女性だった……
本編
次の者、来たまえ。

おお、そうか。
遂に君のことを裁く時が来たのか。
待っていたぞ。

どうした、何を驚いている?

ああ、私がここに居ることか。
本来ならここに居るのは閻魔王のはずだからな。

まあ、いない者のことを考えても仕方ないだろう?
君を裁くのは私なんだよ。

それが、嫌なのか?
嫌なら、阿鼻にでも叫喚にでも送ってやるが……

ふう、最初から大人しく裁きを受ければいいんだよ。
生前にやましいこともなければ何にも問題ないだろう?
それとも、何か?

まあいい、そのことに関しては今からじっくりと見ていくことにしよう。

さあ、それでは審理を始めようか。
使いの者、浄玻璃鏡じょうはりのかがみを用意してくれ。

鏡には君の生前のすべての行いが記されている。
たとえ君がどんな巧妙な嘘をついたところで、この鏡の前には無意味だということ、理解しておくように。

もし仮に嘘をつくようなら、その舌を抜くからな?

それに、私自身も君の行いはよーく覚えている。
鏡がいらないくらいにはこの頭の中にびっしりと。
だから、絶対に嘘なんてつくんじゃないぞ?

早速この鏡で君の行いを見ていくのだが、先に、君がした悪事に心当たりがあるかを聞いておこう。

……ふむふむ。
その辺の事項は反省しているようで何より。
生前に償いを済ませているようだし、問題はない。

では、君の自覚なき罪を見ることにするが……
まず、記録によると人間界の法には触れていないようだな。

墓はこまめに清掃され、供え物も多く、手厚い供養を受けている。
どうやら君は大切な人として、遺族も君を想う気持ちが強いようだ。
これは、罰の軽減材料として記録しておこう。

さて、では君の一番重要な罪について見ていこうではないか。
君はそう言われてこれといった記憶がないようだが。

それはな……
私への冷遇だよ。

君の人生を振り返ると、結婚は一度、別れることなく君が死ぬまでその関係は続いたようだ。
その女が羨ましい限りだな……

なあ、何で私のこと、愛してくれなかった?

ああ……重大な罪だよ。
それさえなければ君はすんなりと天国に行けたのに。

まさか、この罪の重さを理解できないとは。
ならば、鏡で鮮明に思い出してもらいながら教えてあげよう。

私は生前、君のことを心から愛していた。
きっかけは、当時抱えていた、友人関係や受験の悩みを、君がただ優しく聞いてくれたこと。

放課後の教室に呼び止めて、隣に寄り添うように座った君に、はっきりとしない弱い声で全てを吐き出した。
君は具体的な解決策を言ってくれたわけではないが、肩に手を添えて、私の悩み全てを優しさで包み込むように受け止めてくれた。

その安心感で思わず私が涙を流していたこと、思い出してくれたか……?

そこから私は君の安心感を求めるように何度も迫ったのだが……

まあ、その出来事の直後の、距離を詰めようとしたり、話しかけるようにした頃の私の好意に気付かなかったことを咎めるつもりはない。
君の鈍感ささえ魅力なんだから。

最初の罪は初めての告白の時。
校舎裏に呼び出して、私は君に気持ちを全部伝えた。
そのとき、君がどう答えたか覚えてるか?

……まあいい、覚えてなくともこの鏡にはその返事も映し出せる。

どうだ?
君、はっきりと「付き合えない」と言っているのだが。

これは、重罪ではないだろうか?
証拠も鮮明に残っていることだし、言い逃れは出来ないだろう?
君のことを愛してやまない私の告白を断って、その心を深く傷つけたという。

それに、この一度だけじゃない。
私が君にした告白は、確か705回。
その返事は全てノーだった。

間違ってないよな?
いくら鏡で全ての返事を確かめられるとはいえ、残りの704回全部を映すとなるといくら何でも骨が折れる。

まあ、君がそれでも嘘と言い張るなら、確かめてその偽証を証明した上で、その労力分も罰に加算するが。

 (男、認める)

そうか……認めてくれるなら何の問題もない。

これほどまでに告白を続ける、本気の恋心を一度たりとも受け入れることなく私を拒絶した。
これだけでも十分すぎるほど残虐な仕打ちなのだが、君はあろうことか、その罪を悔いることなく平然と他の女との愛を育み結婚。
そんな理解し難い二人の幸せを見せつけるなんて、君に真っ当な倫理観は存在しないのか?
これは人道から大きく逸脱する悪行だ、到底許すわけにはいかない。

さて、これまで話したことに事実と違うことはあるか?

何、もしや君、恋心を侮辱する行為の悪質性を理解していないのか?
これは、尚の事重い罰が必要なようだな……

行ったことに関して異議がないようならこれにて裁きを下そう。

君は、自分の行くべき場所はわかっているか?
私の話を聞いていれば、難しくないだろうが。

……地獄?

君は、そんな場所で受ける苦痛が君の罪の償いになると思っているのか?
君の苦しみも、苦しむ姿も、はっきり言って無意味だ。

被害者である私の心を満たさずして、どう罪を浄化しようというのか……
まったく、何もわかっていないようだな。

そうだ。
君はこれから、ずっと私と二人きり。
老いのないこの世界で、私の心が満ち足りるまで君を自由に愛すのだよ。

もちろん、そこから逃げることは許されない。
そのときは、獄卒総出で君のことを捕らえて私の元へと戻してもらうからな。

安心したまえ。
私を愛すことさえできれば、天国よりも天国な永遠が待ってる。
なんて君は幸せなのだろうか。

後の死者は閻魔に任せることにして……
君、奥の部屋へとついてこい。
そこでとびきり愛してやるからな。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
地獄のヤンデレ様裁判
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩
ライター情報
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