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恋を醒ませ、宵
written by 夜木嵩
  • 片思い
公開日2022年08月03日 18:27 更新日2022年08月03日 18:27
文字数
2234文字(約 7分27秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
大人っぽい失恋女性
視聴者役柄
恋する男性
場所
バー
あらすじ
仕事終わりに安らぎを求め、バーに通っているあなた。
あなたは、そこでよく見かける女性のことを密かに気にしていた。
いつも通りバーに訪れたある日、傷心気味の彼女がいることに気付く。
無視することは出来ずに話し掛けてみると、彼女は意外にもあなたにそのことを打ち明けた。
慰めたくなって、その先を期待してしまったあなたのお話。
本編
 (ドアベル)

はぁ……何度傷付けばわかるのかしらね。
期待したって、こうなるってこと。

あ、流石に今日は来ないと思ってた。
案外暇なのね。

……私がいると思って?
何、このお店ってより、私目当てで来てたの?
ふーん、嬉しいのは嬉しいけど……

まあいいわ。
丁度隣も空いてることだし、相手ぐらいしてあげる。
私もちょっと、このまま一人で飲んでたら沈みそうだったし。

え、私の話?
相談に乗ってあげるってこと?
なんか、ただプライベートな事情を聞きたいだけって感じがするんだけどなー?

……いいよ。
話した方が楽になれそうだし、聞きたいのなら教えてあげるわ。

私さ、失恋したの。
昨夜のことで、流石に傷は癒えてなくてね。

あ、恋人いたの知らなかった?
そりゃそうよね、言ってないんだもの。
知ってたらストーカーかって怖くなってたわ。

でさ、慰めて欲しいわけじゃなくて。
今日ここで吐き出すもの吐き出して、全部楽にさせて欲しいの。
ちょっと愚痴めいてて気を悪くさせるかもしれないけど、聞きたがったのは君だから、いいわよね。

きっかけはちょっとしたやり取りだったわ。
その時には、もう手遅れだったんだろうけど。

「会いたい」ってメッセージ送ったら、「ごめん」って返されたの。

最近、付き合いたての頃より冷たくなってるとは思ってはいたけれど、こんな仕打ちがあるとはね。
最初に見た時は、今までの自分を否定されたようで傷付いたわ。

ずっと、この人は無理して私と付き合ってたのかなとか、私の何がいけなかったんだろうって。
自分の居場所がポツリと消えてなくなってしまったようで、どうすればいいんだろうって呆然としてた。

それでも、まだどうにかなるかなって、期待して、どうにか予定の合う日を作ったの。
……だけど、その気持ちが今となっては盲目的だったんだなって思うのだけど。

会ってくれたところで、存在しない愛情で抱き締めてくるだけだから、何も癒されなくて。

……なんでだと思う?

典型的にも、浮気してたの。

会った時、彼のセンスらしくないカバンで来てたから、途中でそのカバンについて聞いてみたら、あからさまに反応がおかしくて。

そりゃ、冷たくなるのも当然かってね。
私のことを大事とか言ってはいたけど、ものにした途端興味がなくなるというか、付き合うことがゴールになってたのかしら。

結局、最後に別れを切り出して、すんなり。
引き留めもしないなんて、確実に私のことが面倒になってたんだって、気が重くなりながら昨日は帰ったの。

今日も、なんかぼんやりとした気分でね。
スパっと忘れるのは出来ないみたい。

彼のことは、なんかもうどうでもいいんだけどさ、これが初めてでもなくて。
甘い言葉に誘われて、結局捨てられる、みたいなのには懲りたはずなのに。
自分の学習能力のなさに、情けなくなってくるのよ。

きっかけは一度目の傷心に付け込まれたからで、優しさを素直に信じるのも、痛い目に遭うだけなんだなってよくわかったわ。
男なんて、やっぱり紳士を装った獣。
騙されたもの負けなのかしらね。

はぁ……言葉にすればするほど、自分がバカみたい。
だから、なんか、せめて今日だけは自分が自分であることを忘れたいって感じ?

こういう時に頼るのが酒っていうのも、だらしないよなとは思うのよ。
でも、他に私を消してくれるものなんてないでしょ?

お酒は永遠の友……なんて言ってたら、呆れられるのかもしれないけど、男よりは信用できるから。

ごめんね、慰めたいんなら、どんな言葉よりも奢ってくれる方が嬉しいかな。
今のところ、ロマンスには懲り懲りだから。

……なんて言ってるのに、いい感じの雰囲気がある出会いの場所の代表格みたいなバーにいるのもなんだかおかしな話かしら?

そんなこと言われても、私には安住の場所だから。
君みたいに、期待やら焦りやら、私に話す口実やら、心の中ぐるぐるさせてるわけじゃないの。

んふふっ、私、今日は特段と意地悪みたい。
片想い中の男の子ほど扱いやすいものはないから。

思い通りの反応してくれるのね。

あーあ、人間、皆君くらい単純ならいいのにな。
私も、私に声を掛けてくる王子様気取りの男たちも。

いつしか、世の中は幸せよりも充足を求めるようになり、プライドや快楽に人々は自ら溺れようとするようになってしまいました。
他人という存在は、共にあるものではなく、自らを満たす道具へと成り下がってしまったのです。

私も、そんな世界の住人。
男どもの快楽に身を費やす羽目になるのなら、私が使ってやるまでだなんて考えてるわ。

だけど、君はどうやらこちらの世界には無縁なようね。
見栄は張っても、純情は枯れていない。

羨ましい……。
私にはもう、ないんじゃないかしら。

これは、私の勝手な忠告だから、聞くか聞かないかは君の自由。

君の手を引こうとしてくる女の子の誘いは、どうか警戒してね。
多分、気持ちは君に向いてなんかないから。
恋がしたければ、君が手を引くんだよ。

……ありがとう。
今夜はいい憂さ晴らしになったわ。

どうせまた、ここには来るんだけどね。

君も、私に会いたいって言うんなら別に来ることを拒んだりはしないわ。
いつか、気の迷いで君のことを好きになるかもしれないし。

だけど、覚えておいてね?
君の恋心の最低でも半分は幻想だってこと。
私っていう人間がくだらないのは、君の思ってる私と比べたら自虐でもなんでもない事実。
だって、君が知ってるのは君がここで見ている私だけだから。

……それでも、君は私を追いかけるのかしら?

んふふっ、くれぐれも、自分の身は自分で守るのよ。

じゃあ、私はこれで。

 (ドアベル)
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
恋を醒ませ、宵
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夜木嵩
ライター情報
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