魔王城への道中、耳が敏感になる呪いをかけられてしまった勇者。
そんな勇者が魔王城の結界を解くためのオーブを求めて洞窟に向かうと
そこに待ち受けていたのは強大なドラゴン娘だった！
ほかほかの吐息と巧みな耳かきに、果たして勇者は打ち勝つことができるのか！？

ふふ、よく来たな勇者よ。
言わずともわかるぞ。魔王城の結界を解くため、この洞窟にあるオーブを求めに来たのだろう？
だが守護者たる私がいる限り、このオーブには指一本……
……ってあれ……？ない……？オーブがない……

……ん？おい、勇者、まさかその手に持っているのは……私のオーブ！いつの間に！
あ、待て勇者！卑怯者！正々堂々戦え！
……え？本当に帰るのか？
待て、待ってくれ！耳かき！耳かき用意してるからー！
……あ、良かった。

……コホン、気を取り直して……勇者よ、オーブをかけて正々堂々勝負といこうではないか。
しかし単純な戦いでは力の差は歴然。人の子が私に叶うはずもない。
そこでだ、私は考えた。対等な勝負の場として耳かきを……

……って、なんでもう寝転がっているんだ！？
……人間はみんなそんな感じなのか？少し自由すぎないか……？

な、なんというか……調子が狂うな……まあ良い、では勇者よ、失礼するぞ。
(勇者に添い寝する形で横になる)
耳かきは準備運動とやらが大事らしいからな。
まずは吐息とマッサージで耳をほぐしていくぞ。
では……始めよう。

(片耳を指で撫でながら、もう片耳に息を吹きかける)
ふー……ふー……
なあ、勇者、その……上手くできてるだろうか？
……めちゃくちゃ気持ちいい？そ、そうか。それは良かった。
魔王様に言われたのだ。「お前の武器はその暖かい吐息なのだから、耳ふーで勇者をとろとろにしてやれ」と。

ふー……ふー……
ふふ、なんだかこうしていると、幸せだな。私までポカポカしてくるようだ。
私の吐息で、目の前の人間が気持ち良くなってくれていると思うと……嬉しい……というか。
うむ、魔王様はとても良いものを教えてくださったな。

……そろそろ十分に温まっただろうか。
では、耳かき棒を入れるぞ……痛かったらすぐ言ってくれ。

(耳かき開始)
カリカリ……カリカリ……
どうだ、気持ちいいか、勇者よ。
……ふふ、そうかそうか。

これも魔王様に教えてもらったのだ。
魔王様はとても偉大なお方だ。耳かきのことはなんでも知っている。
時々ここに来て練習に付き合ってくれるしな……

……ん？そうだぞ？
魔王様と私は、時々力比べとしてお互いに耳かきをしあうのだ。
まあ、未だに一度も勝てたことはないがな。

(唐突な耳ふー)
ふー……ふふ、お前は本当に吐息が好きだな。
そんなに良い反応をされると、こちらも嬉しくなってしまうぞ。
ふー……ふー……

さて、名残惜しいようだが、こちらの耳はそろそろ終わりにしよう。
では反対側もやっていくぞ。
こちらもまずは準備運動から……

(片耳を指で撫でながら、もう片耳に息を吹きかける)
ふー……ふー……
しかし、さっきは本当に焦ったぞ。
魔王様以外の客人はなかなか来ないから、私も楽しみにしてたというのに……
お前というやつは、すぐに帰ろうとするのだから……まったく……

だが、こうなったからにはもう逃がさんぞ？
私の吐息と耳かきで、とろとろに溶かし尽くしてやるから、覚悟しておくんだな。

ふ、こちらも十分ほぐれただろう。
では耳掃除をしていくぞ。

(耳掃除開始)
カリカリ……カリカリ……
ふふ、気持ちいいだろう？
そうだろうそうだろう。

私は魔族のナンバー2だからな。魔王様の次に耳かきが上手いのは当然のことだ。
……決して暇で暇で練習以外することがなかったとか……そういうわけではないぞ。

……え、魔王様の耳かき？
それが……よく覚えていないのだ。
とても心地よかったということだけは分かるのだが……何をされたのかさっぱり……
気が付いたら負けているというか……なんだか、不思議な耳かきだった。

まあ魔王城に向かうのなら、いずれ体験することになるだろう。
せいぜいその時を楽しみにしておけ。

(唐突な耳ふー)
ふー……
ふふ、そんなに私の吐息が好きか？
そうかそうか……こうして見ると人間というのも可愛いものだな。
ふー……ふー……

よし、こっちの耳も綺麗になったし、このくらいにしておくか。
さて、これで耳かき勝負は終わったわけだが。
結果は……引き分けだな。
うむ、どちらも全く屈していない。まごうことなき引き分けだ。
勝負の続きは明日に持ち越しだな。

というわけで……
(抱き締める)
今夜は逃げられないように、一晩中抱き締めておいてやる。
どうだ私の身体、温かいだろう？折角来たのだし、心行くまでゆっくりしていけ。

・台本（ゆるボイ！）
強気ドラゴン娘の『ほかほか吐息耳かき』から 勇者は逃げられない！
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
あまに