妖怪の住む山で厳しい修行をしていた男は、連日、鴉天狗の少女に付きまとわれていた。男はうっとおしく思いながらも、適当に彼女をあしらっていたが、その日はなぜか神通力勝負を持ち掛けられてしまって…？

お兄さ〜ん、いる〜？いるなら、返事して〜？


あ、いた。お兄さん、ヤッホー。今日も遊びに来てあげたよ♪


ぶー、酷いなぁ。いいじゃん、せっかく可愛い女の子が遊びに来てあげたんだから、かまってよ。そんな滝に打たれてないでさぁ…


むー…相変わらず、無愛想。もうちょっと愛想良くしてもいいんじゃな〜い？けちんぼ。


あ、もう終わるの？滝修行。じゃあ、あたしが身体拭いたげる！ほら、拭くモノ持ってきたし♪


そーそー♪ そうやって素直にするのが一番だよ♪ ほら、こっちこっち〜♪ くふふっ♪


(鼻歌を歌いながら、男の上半身を拭く)


〜〜♪いや〜、お兄さん、身体ゴツゴツしてるねぇ♪ もっと触らせて♪


あっ、や〜ん♡ お兄さんのいけず〜♡ もぅ、照れ屋なんだからっ♡ このこのっ♪


…んへ？本当の目的って言われても…お兄さんに会いに来ただけなんだけどな〜？


へへ、バレた？さっすがぁ。お兄さん、鋭いね。あたし、見ての通り、鴉天狗だからさっ。山の主に命じられて、お兄さんが悪さしないか見張ってるんだよね〜。主さん、ちょっと疑り深い性格だからっ。あんまり気を悪くしないでね？


今のところは？ん〜…全然悪い人には見えないし、むしろ個人的には面白い人だって思ってるよ。まぁ、悪さしたら、その場でお仕置きだけど☆


へ〜…？神通力？お兄さんも使えるんだ？だったら、勝負する？アタシ、一応天狗だし、神通力には自信あるよ？


よーし…それじゃあ、アタシの手ェ握って？握手を通して、お互いの力をお互いの身体に流し込むの。それで神通力勝負ってことで♪ ぶっ倒れた方の負けね♪


うん…じゃ早速、ギュッてして〜……あばばっ⁉︎


(力を身体内部に流し込まれ、悶絶する)


ぐ、おぉ…！ちょ、お兄さん、ヤバ〜…！マジ、ぱない…！


ハァ…でも、鴉天狗的に、人間くんに負けるわけにはいかないんだよねっ…！ふんっ…！


(男の膝をつかせる)


にへへ〜♪ 勝った勝った〜♪はい、お兄さんの負け～♪ 修行の成果、出せなくて残念だったね♡ くふふっ♪


ねぇねぇ、どう？非力そうな女の子に負けた気・持・ち♡ アタシに聞かせてよ～。


へぇ～…？まだ負けん気あるんだ？でもむーだ♡ ここまできたら、勝敗は覆せないよ♡ うりゃうりゃ～♪


(断続的に力を流し続ける)


あははっ♪ お兄さんってば、もう限界～？やっぱり人間って、そんなに丈夫じゃないんだ。それなら、仕方ないねっ♪


そういえば～…さっきの滝に打たれる修行って何か意味あったの？まさか耐久力あげる感じのやつ？でも、アタシの神通力に全然耐えられてないじゃん。やっぱりあんまり意味のない修行だったんだね☆


ん～…でも、普通の人間と比べたら、頑丈は頑丈だろうし…決めた！今からお兄さんのこと、お持ち帰りしちゃう♡ 主さんにも挨拶してぇ、アタシとずっとこの山で暮らすんだ♡ いい考えでしょ？


え？お持ち帰りしたら？そりゃ勿論、アタシのおもちゃになるの。


うん、最近ちょうど退屈してたからさ～、良い感じのおもちゃが欲しいと思ってたんだよね～。でもすぐ壊れちゃ意味ないでしょ？やっぱり、アタシとしては丈夫なおもちゃの方が良いなって。あ、もちろん、大切に扱うつもりではあるけど、万が一のこともあるし。ね？


ふふっ…そんなに嫌なら、こんなとこで修行しなきゃよかったのに…アタシみたいな悪～い妖怪に目を付けられるようなことするお兄さんが悪いんだよ？お持ち帰りされるのも、仕方ないよね？


きひひっ♪ そんなに修行したいなら、アタシが稽古つけてあげるよ～？厳しくも、甘くて優しいお稽古を、ね？

・台本（ゆるボイ！）
【逆わからせ】無邪気な鴉天狗の少女はまごうことなき上位存在
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎