クリスマスイブの夜。
近所のケーキ屋さんのお兄さんが突然訪ねてきた。

お兄さん曰く、クリスマスケーキのキャンセルが多くて、
このままじゃ廃棄になってしまうケーキを配って歩いていると言う。

○～～～～　→時間帯と場所
(　)　→読み方の指示やSE、補足など




○マンションの部屋の前（夜）

（SE：チャイム音→玄関を開ける音）

――あっ、クリスマスの夜にすみません。
近くでケーキを売ってる者なんですけど。

えぇ、そう、そこの路地の店です。

実は、今日予約のケーキ、キャンセルが多くて。
このままじゃ廃棄になっちゃうので、ご近所さんを回ってるんです。お姉さんのところで最後なんですよ。

あっ！　お代は頂きません！　
どうせ持って帰っても廃棄にするしかないので、チョコでもチーズでも、お好きなのを差し上げるので受け取ってもらえるとありがたいです。

あ、でも、お姉さんはパーティとかでケーキいっぱい食べちゃいましたよね？
え？　パーティなんて行っていない……けど、ケーキは自分用で２ホール買った……？

ふっ、ふふ……いえいえ！　食いしん坊だと笑ったんじゃないです。
（小声→）よかった、男と食べたんじゃないんだ。

あっ、いえ、なんでもないです。いっぱい食べれる女性って素敵だなあって噛みしめてただけですよ。

……でも２ホール食べたんじゃ、どっちにしろ食べられないですよね。
いえ、しょうがないです。気にしないでください。

え、「お兄さんは食べないの」？
あはは、さすがに３ホールは食べきれないですかね……。

すみません、このまま持ち帰り……え？　引き取る？　全部？　本当に？
賞味期限は本日中ですが、冷蔵庫に入れておけば２日ぐらいは大丈夫だと思いますが、ホールで３箱ですよ？

えっ！？　「よかったら、お兄さんも一緒に？」？

おっ、お姉さんのお部屋にお邪魔する、ってことですよね？　（小声→）同意の元……。

えっ、えっ？　本当に？
じゃ、じゃあ、お店の片付けしたら戻ってくるので、こちらのケーキ先に渡しときますね！

なんで笑ってるんですか？
やっぱり一人だと寂しかったから、う……嬉しい！？　
ぼ、僕も嬉しいです！　え？　僕に彼女？　いないですいないです！　まだ！

ま、まだです！　すぐにできる予定なので！
からかわないでください！　もうっ、じゃあ僕お店戻りますっ、また後程！

（SE：扉閉める音→歩き出す）

……ふぅ。
ふ……ふふふっ。

まさかお姉さんから、おうちデートに誘ってくれるなんて！
甘いもの好きなのは知ってたけど、まさか1人で２ホール食べるなんて……。
やっぱり直接話さないと、知れない情報ってあるよね。

でもお姉さんから家入れてくれそうでよかったあ。
ダメそうならこっちの睡眠薬入りのケーキを試食してもらわなきゃだったし。

よし！　早くお店片付けなきゃ！　
今夜はお姉さんが恋人になる、特別な日なんだから、ね。

・台本（ゆるボイ！）
クリスマスイブに、ケーキ屋さんのお兄さんが廃棄のケーキを配りに来た。
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
塩水アサリ