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“人間くさい”物語②
公開日2025年08月14日 20:15 更新日2025年08月14日 20:16
文字数
580文字(約 1分56秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
本編
高橋から久しぶりに連絡がきた。「今夜、空いてる?」
たったそれだけの文に、心がざわついた。

大学時代の同期。今は起業して、成功して、SNSでは豪華な寿司や女優みたいな彼女が並ぶ男。
対して俺は、営業職で毎日怒鳴られながら働く、三十路の凡人だ。

待ち合わせは池袋のガード下の焼き鳥屋。意外だった。もっと洒落た店かと思ったのに。

「久しぶり」
高橋は笑った。時計も靴も高そうだったけど、笑い方は昔のままだ。

カシラとレバーを頼みながら、他愛のない話をする。
正直、うまく笑えてなかった。

「お前、作家目指してたよな」
急にそう言われた。

「……まあ、昔はな」
「今は?」
「書いてないよ」

ほんとは書いてる。誰にも見られてないnoteで、夜な夜なちまちまと。
でも言えなかった。見栄とか、虚勢とか、そんなつまらないもののせいで。

しばらくして、高橋がつぶやいた。
「なんか、分かんなくなるんだよな。これが本当に俺の人生なのかって」
「は?」
「成功して、周りに期待されて。でも、それって“本当の俺”なのかなって思うと、空っぽになる」

不思議だった。うらやんでいた相手が、そんなことを思っていたなんて。

俺は少し笑って、「まだ間に合うよ」と言った。
「人間って、たぶん、立ち止まるだけでけっこう取り戻せるからさ」

帰り際、高橋が言った。
「今日は奢らせて。久々に“人間”に戻れた気がしたから」

焼き鳥の煙が、目にしみた。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
“人間くさい”物語②
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
エンタメビジネス編集者ツッツー
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