貴方には好きな年下後輩の女の子がおり、登下校の際に毎日アタックしていた。彼女はツンケンした性格で、会うたびに話しかけてくる貴方をウザがっている様子だったが、なんだかんだ話に付き合ってはくれていた。そんな彼女を可愛く思う貴方だったが、同時に彼女が抱える闇にもそれとなく気付いていて…？

【前編】〜登校〜


あ、どうも…おはようございます、先輩…


あー、はい…なんでしょう、先輩？


え？いえ、あたしはいつも通りですけど…それが何か？


いえ…元気がない状態がデフォなんで。あたし。


いや、だって…生きてて元気出ることってあんま無くないですか？


はい。友達とお喋りとか勉強とか部活とか、特に楽しいこともないですし。


んー…ない、ですね〜。人生の楽しみとか全然思いつかないですよ。


そーいう先輩はなんかあるんですか？楽しいこと…


…ッ、何ですか、それ…


もしかしてあたしのこと、口説いてます？


いや、だって、あたしと話すのが楽しいとか言うから…


こんな根暗インキャと話すのの何が楽しいんだか…


…先輩。ナンパなら、その辺にたくさんいる可愛い子にやってください。あたしにダル絡みしてくるの、やめてもらえます？


ふぅん…先輩、意外と女の子ウケいいんだ。それはよかったですね。


…話してて一番しっくりくる？あたしが？


先輩、冗談は顔だけにしてくださいよ…


あたしと話してしっくりくるとか、どういう感性してんですか…


いえ、それは先輩を追っ払う労力使うのが無駄かなって思ってるだけです。


別に楽しいからとか、そんなんじゃありませんから。勘違いしないでくださいね？


うわ、何ですか、そのニヤケ面…ぶっちゃけちょっとキモいです…


ツンデレ？今のどこにデレ要素あったんですか…先輩、頭大丈夫ですか？


あ〜、はいはい。もうこれ以上はオッケーでーす。あたし、先に行きますんで。それじゃ。


〜以下、先輩から離れて独り言〜


なんなんだろ、あの人…あたしなんかに無駄に構ってきて…


こっちが逆に勘違いしそうになるっての。あー、やだやだ。


勘違いしたら、どう責任取ってくれんだろ…はぁ…


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【中編】〜下校〜


あ、先輩…どうも。今帰りですか？


ふーん…これから塾ですか。


意外と忙しいんですね、先輩も。


あー、受験で…ちなみに志望校とか決まってます？


ふーん…ま、何でもいいですけど。せいぜい頑張ってくださいね。


…やっぱ先輩のニヤケ面ってキショいですね。普通にドン引きします…


いや、意味わかりませんから。ドン引きされて喜ぶとかマゾですか？あたしの半径一メートル以内に入らないでもらえます？マゾが移るんで。


ちょ！逆に寄って来ないでくださいよ！キショいですから！


あっ…冗談、ですか…そうですか…


いえ、別に…残念そうな顔なんてしてません。


自意識過剰も大概にしてください。引っ叩きますよ？


あ、今の嘘です。マゾを引っ叩いたら、逆に喜びますもんね。今のやっぱ無しで。


え？あ、あぁ、そうですね…


先輩が卒業したら、このめんどくさい日常から解放されるってわけですね。せいせいします。


面倒くさいですよ…毎日ウザ絡みされて、登下校中ずっと一緒で…


それが無くなるって思ったら、気分楽になるじゃないですか。


いえ、迷惑とまでは言いませんけど…面倒くさいなーって、ただそれだけです、はい。


あ、もう塾の近くなんですね。じゃああたしはこれで…


…あ、あの！先輩…その、じゅ、受験勉強、頑張ってくださいね…？


べ、別に他意はありません！それじゃ、今度こそ失礼します！


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【後編】〜夜の邂逅〜


…あ、先輩。何でここに…


あ〜、塾の帰りなんですね。


こんな遅くまでお疲れ様です。


あたし？あたしは〜…夜の散歩です、はい…


な、泣いてませんよ…！勘違いしないでもらえます⁉︎


こ、これは…！ゴ、ゴミが目に入っただけですから！それで涙の跡が残っただけです！


……先輩。あたし、前に言いましたよね？生きてても楽しいことなんか全然ないって…


はい…本気で無いと思ってます。


だってあたし、家ではそれこそゴミみたいな存在ですから。


親は二人とも妹にだけ期待かけて…あたしには何一つ、これっぽっちも期待してないって…


ホント、ゴミですよね、あたしって。


学校でも友達一人もいませんし…なんなら、たまに上位カーストの奴らに目の敵にされますし。


生きてても楽しいことなんて一つもありませんよ…つらくてしんどいことばっかりです。


先輩はいいですよね…明るくて友達もたくさんいて…あたしとは真逆の存在じゃないですか。


それこそ、彼女だっているんじゃないですか？


あ、そう…彼女はいないんですね。まぁ、どうでもいいですけど。


はい…改まってなんですか？


……あの、先輩。疲れてるなら早く帰って寝たほうがいいですよ？勉強のしすぎで頭おじゃんになってんじゃないですか？


(肩を掴まれる)


ひゃっ…！せ、先輩…？急にどうして…？


あ、あっ！わかりました！友達との罰ゲームってやつでしょう⁉︎


ゲームに負けた罰として、根暗インキャの女に告ってこいみたいなそういう…！


いや、無理ですよ…信じられませんって、そんなの…


だって…あたし、人は信用しないって決めてますから。


あたしに言い寄ってくる奴なんて、それこそからかい目的でしかない。そうでしょう？


そういう星の下に生まれたんですよ、あたしは。


誰からも好かれない惨めな存在なんです…


だからもうあたしのことなんてほっといてください…お願いですから…


(抱きしめられる)


…ッ！ちょ、先輩、いきなり何の真似ですか…⁉︎


メロドラマごっこなら、あたし以外の女使って、その辺で勝手にやっててくださいよ！


あたしにこれ以上、惨めな思いさせないでください！


…ッ、なんでそこまでして…先輩、本気で頭おかしいですよ…


無理ですって…今さら人を信じるなんてできません…


信じたとしても裏切られるのがオチですから…


昔、友達だと思ってた子がそうでしたから…


簡単に言わないでくださいよ…先輩が裏切らない保証なんてどこにもないでしょう？


えっ…？先輩、これは…？


ちょ、こんな大事なモノ預かれませんって！あたしには無理ですから！


うぅ…責任重大じゃないですか…なんでこんなことに…


(ため息)


わかりました…わたしの負けです。


はい…いいですよ？先輩と付き合っても…


いえ…ここまでグイグイ押されたのは初めてですし…今までも一応親切に話しかけてもらったし…


それに何より先輩から大事なモノを預かっちゃいましたから。


はい。先輩の気持ちが本物だってことは伝わりました。


他の誰かじゃなくて…先輩のことなら信じてみようと思います。


その代わり…裏切ったらタダじゃおきませんので、そのつもりで。


わかりました。今日は大人しく家に帰ります。


あ……手、繋いでくれるんですね。ありがとうございます。


ま、まぁ、そうですよね。恋人なら当然ですよね…


あ、あの、先輩…あたしも先輩のこと、少しは好き…ですからね？

・台本（ゆるボイ！）
無気力系後輩女子を愛してやれるのは俺だけ
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎