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お姉さん山姥の耳かき
written by 松平蒼太郎
  • 耳かき
  • 人外 / モンスター
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年06月05日 18:00
文字数
2070文字(約 6分54秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
本編
おや、目が覚めたかい?

ここ?ここはあたしん家。

アンタが山ん中で倒れてたとこを拾ったんだよ。

あたし?あたしは山姥(やまんば)。こう見えて一応妖怪さ。

あー、もう!落ち着きなって!とって食いやしないから!

大体食うつもりで拾ったなら、目覚ますまで待たないだろう?

寝てる間にさっさとこの大釜にぶち込んでるよ。

ったく……まぁわかればいいけど。

それよりなんであんなとこで倒れてたんだい?

あぁ、野良妖怪に襲われたのか。

あんなとこ人間がうろついてたらそりゃ襲われるね。

そう、ここは妖怪の山。

ふもとに住む人間なら誰でも知ってて近づかないはずだよ。

なんだ、知ってて近づいたのかい。なんで?

行ったことなかったから一回遊んでみたかったって、命知らずだねぇ、アンタ。

大人から行くなって言われて、それでも黙ってここに来たってことか。

ったく、人間のガキは好奇心旺盛だねぇ。

それより、ほら。飯でも食うかい?うまいよ。

ゲテモノじゃないっての。失礼なガキだね。

妖怪はなんでもゲテモノを食うと思ったら大間違いだよ。

ふつうに人間が食べるものも食べるからね。

で、いるのかい?いらないのかい?

ほら、腹の虫は正直だ。食いな食いな。成長期のガキなら尚更だ。


ん?……(ゲンコツ) ずいぶん口の悪いガキだねぇ。誰がババァだって?

そりゃたしかに山姥はそういうイメージがあるかもしれないけど、本人を前にして堂々と口に出すかい、ふつう?

ていうか、この見た目はどう見てもお姉さんでしょうが。

アンタ目、腐ってんじゃないのかい?

はぁ…ったく、そんなんだから山で妖怪に襲われるんだよ。

命がいくつあっても足りないね、アンタ。早死にするタイプだ。

なんだ、食後だから眠くなってきたのかい?さっき気絶して散々寝ただろうに。

ん?アンタちょっと耳、見せてみ?

耳垢だらけじゃないか。なんでこんなになるまで掃除してないんだい?

耳掃除は痛いから嫌い?あぁ、どーりで…

じゃああたしが痛くないように耳掃除してやるって言ったらどうする?

このガキ…!言ってくれるじゃないか。誰が力を込めすぎて耳かき棒を折るって?

ええい、暴れんな!あたしの、膝の上に寝・こ・ろ・が・れ!

ったく、本当に手のかかる……あぁ、もう大丈夫だっつの!優しくしてやるから!

暴れると余計痛い思いすることになるけど、それでもいいかい⁉︎

ん、よろしい。それじゃ、耳かき棒突っ込むよ。

(耳かき)

本当に長いこと耳掃除してなかったんだねぇ…

親とか上のきょうだいにしてもらわなかったのかい?

あぁ、そう。毎回逃げ回ってるわけね。このヤンチャ坊主が…

もうちょっと奥までいれるよ。

そんな怖がんなくて大丈夫だから。動きさえしなければ痛い思いはしないよ。

ったく、生まれたての子鹿みたいに震えて…さっきまでのヤンチャぶりはどこいったんだい…

ほら、痛くないだろう?むしろ完全に身を任せたら気持ちいいはずだよ。

ほい、デカイの取れた。これがアンタの耳の中にあったもんだよ。

こら、耳くそ食おうとするやつがあるか!バカたれ!

あーもう…ほら、もう一回横になりな。梵天するから。

そ、この耳かき棒の反対側に付いてるフサフサのやつ。

これで細かい汚れを取り除いていくってわけさ。まぁ最後の仕上げみたいなもんだね。

棒よりは痛くなさそう?棒も別に奥に突っ込みすぎたり、力入れすぎたりしなきゃ痛くないんだけどね…始めるよ。

(梵天)

ん?アンタを助けた理由?まぁなんとなくだよ。

人間が山にいること自体が珍しかったからついお持ち帰りしてしまっただけさ。

はっ、自惚れんなっての。誰がアンタみたいな薄汚いガキを食べるかって。

ん?なに、今ババァって聞こえたような気がするんだけど?もう一回耳かき棒を奥まで突っ込んでやろうか?

っとに、このガキは……はい、梵天終わり。

ほら、反対向いて。逆の耳も始めるよ。

うるさい。あたしがやるっつったらやるんだよ。つべこべ言わない。

(耳かき、梵天)

はい、終わり……って、寝てるじゃないか。あんだけ文句言ってたくせに。

ふん…寝てる時は可愛い顔するじゃないか。起きてるときはあんなにクソ生意気だってのに。

ハァ…ま、しばらくは寝かせてやるか。

起きたらふもと近くまで送ろうかね。



おはよ。よく眠れたかい?

あっそ。まぁ眠いかもしれないけど、そろそろ帰らないと親御さんが心配するよ?

大丈夫だって。ふもと近くまでは送っていくから。

さすがにここから歩いて帰れとは言わないよ。

よし、それじゃあ行くよ。はぐれないようにあたしの手、しっかり握ってな。



ここまで来たらもう大丈夫だろ?帰り道、わかるかい?

ん、ならよし。それじゃあね。

なに?……バーカ、耳かきは親御さんにやってもらいな。

ここには二度と来るんじゃないよ。わかったね?

あぁ、もう。泣きそうな顔するんじゃないよ。男だろ?

まぁあたしもずっと山奥に引っ込んでるわけじゃないし。

たまに村近くに下りてくることもある。

あぁ、はいはい。運がよかったら会えるかもね。

わかったわかった。耳かき、会えたらしてやるよ。

けど次は耳くそ、あんなに溜め込むんじゃないよ?

あとあたしのことはババァじゃなくてお姉さんと呼ぶこと。わかったね?

ん。それじゃあ、またね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
お姉さん山姥の耳かき
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎
ライター情報
マツダイラソウタロウ
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