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病んでしまった僕の妹は、AIになることにした。
written by 灰塔アニヤ
  • シリアス
  • アンドロイド
公開日2021年06月21日 20:00 更新日2021年06月21日 16:53
文字数
2437文字(約 8分8秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
視聴者役柄
場所
指定なし
あらすじ
―とあるきっかけで妹が精神を病んでしまった。

それからは寝るとき以外は耳にワイヤレスイヤホンをつけて、自分の事をAIだと思い込むようになってしまった。兄をマスターだと思い込もうとし、兄から「指示」を出したときだけ今まで妹のような態度で接してくれる。

兄は、少しでも妹がよくなるよう買い物に連れ出したり、何とかコミュニケーションを図ろうとしていく。
本編
※作中表記についての説明

・―…状況、情景の説明(例:彼の部屋のソファに座りながら話している…等)
・()…心情(例:笑いながら…、泣きそうなのを堪えて…等)
・【】…SE、BGM(例:インターホンの鳴る音、雨音…等)
・{}…リップ音、吐息、溜息、喘ぎ声など

――――――――――――――――――――――――――――――
ー今日もAIのふりをする妹に、出掛けようと声を掛ける。

(事務的な口調で)マスター、お買いものですか?
私にもご同行をと?
はい、承知致しました。

え?

マスターが外出のご支度をする前にお願いが?
…はい、はい、なるほど。
指定の発言をした後、私は玄関で待機を、と。
はい、承知致しました。


ー先ほどと打って変わって、本来の妹の性格。感情豊かに。

…えー?なに、お兄ちゃんと買い物?
あたし、今、動画見てるんだけど。
てゆうかさ、いい歳して…妹しか買い物に付き合ってくれないとかヤバくない? 

一緒に出掛ける友だちとかさ…彼女とかさ…あ!ごっめーん!
(小馬鹿にしたように)この前、片思いしてた先輩にフラレちゃったんだっけ?告白も出来ずに爆死でしたっけ?

はぁ?
(やや逆ギレして)別に悪気があって言ったんじゃないし。
あたしは別に彼氏とかいいの。
てか推ししか勝たん。

で、買い物ってどこに行くの?
はぁ?商店街?すぐそこじゃん。

一人で行ってきなよ…
え⁉かき氷⁉タツミ屋の…?
ついて行ったら奢ってくれるの…?
じゃ、じゃあついて行ってあげてもいいかなー?

ほら!ぼさっとしてないで早く準備して!
もうそろそろ3時でしょ!

結構混むんだからっ!
あー、ちょっと!もう髪型!ちゃんとしてよ!
あとその部屋着みたいなよれよれのシャツもやめて!
そんな格好で隣、歩かれるとか無理なんですけど。

は?あたしのプレゼントだから気にいってる?

(動揺して)…そんな、別に安物だし。
…て、てゆうか、マジでシスコンじゃん、ヤバ。
友だちも彼女もいなくてシスコンて…あーあ、お兄ちゃんの未来が不安だ。
いや、未来、終わったね。

じゃあ、あたし、玄関で待ってるから。
さっさと準備してきてよね。

ーしばしの間。玄関へ行くと妹が待っている。

(再び事務的な口調で)お待ちしておりました。
先程の対応はいかがでしたでしょうか。
え?外出時は耳のイヤホンを外すように…?

(諭すように)マスター、何を仰っているのですか?
これは、私のバッテリーです。
イヤホンなどではありません。

第一ケーブルのないイヤホンなど、ある訳ないじゃないですか。

外に出る時は危ないから、やはり外せと?

申し訳ありませんが、マスターのご指示といえど承服し兼ねます。

(更に説得するように)私の役目はマスターの安全をお守りすることです。
このバッテリーを外してしまえば、私はAIとして機能できず、マスターのお役にも…(遂に兄が根負けし)やっと納得して頂けましたか?

ー扉を開け外へ出る。
【SE:扉を開閉する音】

はい?なんでしょうか?
「でも何かをあった時のために手を繋いで行こう?」

構いませんが…マスターは歩道の内側にいてくださいね。
マスターの安全が最優先です。

…私は何かあっても修理をすれば良いだけですから。

目的地は…先程、甘味店のタツミ屋と仰っていましたね。
他に立ち寄るところはございますか?
左様ですか、承知いたしました。

ー商店街へと向かう道すがら。
【SE:活気のある雑踏】
【SE:二人の足音】

ところで、ご指示頂いたマスターの妹君の仕草や口調は、ご満足頂けましたか?

しかし、とても疲弊する感情プログラムですね。
私ももっと人間の感情表現をインプットして行かないと…マスター?

何故、泣いているのですか?
何か至らぬ点でもございましたか?

…はい?
「今まで通りお兄ちゃんと呼んでほしい」?
しかし…先程はマスターからのご指示通り、妹君を演じていただけですから。

私にとってマスターはマスターです。
大変申し訳ございませんが、そちらは承服し兼ねます。

それでは、商店街へ引き続き向かいましょ…う…あ…ぁあ…

―人混みに近づくにつれて、妹の様子がおかしくなる。人の話し声や、人混みがつらそうである。

【SE:大きめな人の話し声や雑踏】

(今までよりやや人間味のある口調で)…なんで、心配するの…ですか。
「今日は、やっぱりやめよう?」

どうして?
だって、タツミ屋のかき氷を食べようって…言った、仰ったのは…お兄…マスター、でしょ?
さぁ、行きましょ…

ー徐々に人混みや物音にパニックを起こし始める。兄にしがみつきながら。

お兄ちゃん、やだ、ちがう、こわい、かえろう…
違う、違う、違う…!!

マスター、申し訳ありません。
わ、私の力不足で今日の…目的、の、タツミ屋へは行けそうにございません。
誠に申し訳ございません。

ー兄がもうAIのフリをするのはやめろ、と強めに叱責するが。

え?何を…おっしゃるのですか?
私はAIのフリなどしていません…!

ほら‼私以外にもいるではないですか!
あっちにも、あっちにも、あの男性も、あの少女も…‼

私と同じように耳にバッテリーをつけて…あれはイヤホン…?
AIのバッテリーだなんて言っているのはあたしの「設定」…?

(ヒステリックに)だから!
違うって言ってるでしょ!
どうして…分かって…ッ…、
…頂けないのですか。

え、涙…?何を仰っているのですか。
(泣き笑いのように)私は…AIですよ?

これは…そう、ただの冷却水です。
感情表現をアウトプットする際に、少し、熱暴走を起こしてしまったようですね…。

(冷静さを取り戻し)悲しくて涙を流すことや、怒りに任せて怒鳴ることなど…ありませんよ。
私はAIです。

まだまだ未熟で、マスターにご心配ばかりかけて申し訳ありません。
本当は、私がマスターをお守りする立場なのに…。

そんなことない…?
タツミ屋もまた今度行ければ良い、と…?

恐れ入ります。
AI風情にお心遣い頂き、私はあなたがマスターで大変嬉しく思います。

では…帰りましょう。
お買い物ではなく、短いお散歩になってしまいましたね。
(諭すように)…だからマスター、車道側をあなたが歩いては危ないと何度も…

はい?
今の私は熱暴走を起こしているから…もしもの時に誤作動を起こすかもしれないから、と?
左様ですか。
では、未熟で心苦しい限りですが、お言葉に甘えさせて頂きます。

(呟くように小さな声で)
…本当に優しいよね。
ありがとう、ごめんね。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
病んでしまった僕の妹は、AIになることにした。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
灰塔アニヤ
ライター情報
色々なシチュエーションを書きます。
男性演者向けのものが多いですが、一人称や部分的な変更で女性も演じられるかと思います。
R18シナリオでお探しの場合はpixivで公開しています。

ドーナツがすきです。
よく作中にも出てきます。
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